しあわせの魔王〜ポンコツ勇者と天才魔王のふしぎな建国記録〜  アルバ国攻略編

平塚冴子

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第8章

2人の助言師①

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 城に着いた頃には日が暮れていた。
 私はアルと共に足速に場内へと入り、玉の間にてデブラブを率いた内務大臣、および存在感の薄い、幽霊のような財務大臣を呼び、干ばつの村の状況と工事の変更、温泉地開発の運営、それに伴う財政支出について話し合いをする為に、急いで正装に着替えを始めた。

「ナナシはそのまんまだか?」
「えっ?
 ああ、確かに。
 この前のように突然なら仕方ないが、今日も黒尽くめの旅人服では、さすがにですね。
 洗濯もしたいですし、かといって私の持ち歩きはこの他に村人服2着ほど。
 どれも正装とはいきませんね。」
「何をおっしゃるウサギさん、そんなら私と駆け比べってもんだべ?」
「はあ?何言って…!げっ!」
「ここは王様の城だべ。
 正装ならたんとあるべよ。
 しかも、オラほとんど袖を通してないべ。」
「いやいや!幅は大丈夫でも高さが!
 私の方がどう見ても頭1つ出てるでしょう!無理!無理!」

 嫌だよ!
 何が嫌だって白タイツだよ!
 何が悲しくてあんなの履かなきゃならんのだ!
 
「あ、まさかナナシは大臣達やデブラブみたいな格好を心配してるだか?
 まぁ、オラは前の政権下から続く国王の衣装だから仕方ねぇけんど、そんな服ばっかじゃねぇべ。」

 アルはそう言うと寝室奥の衣装部屋らしきドアを開けた。

「これは、何ですか?
 衣装の量が半端ないじゃないですか?
 しかも、どれも新しい感じですね。
 ただ、センスはどうもバラバラで…!
 まさか、これもデブラブに買わされたんですか?」
「多分だべ。
 着ないから、返品してぇって言ったら、『国王が返品なんて出来ません!』って。
 国王ってのは何でもかんでもプライドってのが高すぎるだべ。」
「見栄を張らなきゃいけない部分はありますが、それも程度問題。
 かと言って、そもそも国民が見かけでしか判断出来ない状況ってのも問題なのでしょうけど。
 デブラブが目を付けているのはその部分でしょうし。
 んん。」

 私が物思いにふけ入りそうになったところ、アルが私をグイグイと衣装部屋へ引き摺り込んだ。

「オラにはセンスってもんがねぇべ。
 デルアが全て決めてくれてたけんど、そん時、色のイメージを合わせるとええって教えられたべ。
 ナナシは、黒とか濃い紫だべ。
 赤はちょっと違うべ。
 ドSカラーだべ。」
「アル、アル私にも選択肢を!」

 ってドSカラーってなんだよ。
 何のデータから取った基準なんだよ。
 まぁ、アルにしては私の好みを察知してるとは思うが。

「って!それはやめて下さい!
 スケスケのシースルーじゃないですか!
 乳首見えるし、ベスト上から着なきゃならないでしょう。
 どっかのお子様貴族の服装になるじゃないですか!
 わかりました、もう自分で選びます!
 ちゃんと正装しますから。
 ちょっと、部屋の外で待っていて下さい!」
「やっぱり、オラには難しいべ。
 早めに支度してくれな。」

 私はアルを部屋から追い出し、ドアを閉めた。

 さて、この趣味の悪い衣装の中に、私に着られる物があるかどうか。
 派手な金ばかりかけた衣装。
 わざと散財してるのは否めない。
 出来るなら、飾りはほぼなく上質な布地で丈夫な物が良いが。
 時間もない事だ。
 ここは、やはり使うしかあるまい。

 私は部屋のランプを全部吹き消した。

『闇の覇王に相応しき衣よ、前へ出でよ!』

 黄金の瞳に一組の衣装が、浮かび上がった。

 藍染のシルクの様な光沢のあるアンダーにベビーモスの革の素材で出来たパンツと黒革のブーツ。
 そして、黒い表地に裏地が紫色のマント。
 大袈裟な装飾はないものの、職人の手の込んだ仕上げが美しい、シンプルなデザイン。
 袖丈が短いが、黒手袋をすれば格好がつく。
 おそらく狩猟専用の衣装だろう。
 
「よし!これだな。」

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