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第8章
2人の助言師⓷
しおりを挟む「干ばつで苦しんでいた…?
過去形ですね、ナナシ殿。
何かよい展望でもありましたかな?
井戸の工事も取り掛かったばかり。
大雨や嵐、台風などが起こらぬ限り良い展望を望む事は難しいのではありませんか?」
丁寧かつ、冷静にまた相手を試す様な、いやらしい口調でデブラブは私に問いかけた。
「いいえ、状況は一夜にして一変したのですよデブラブ殿。
天からではなく、地下深くから恵みの大雨が噴き上がって来たのです。」
「抽象的すぎてわかりませんね。
一体、一夜にして何が変わったと言うのです?
地下深くからとは…?」
デブラブと内務大臣は顔を見合わせ、財務大臣は訳がわからぬという感じで首を斜めに捻った。
「温泉が噴き出ました。
間欠泉ですよ。
日照りにより、地割れがより深く達したのでしょうね。
間欠泉口を刺激した為に、勢いよく吹き上がり、大地を潤したのです。」
「魔法使いでもお雇いになりましたか?
さぞや大金を請求されているでしょう。
この国は財政が逼迫しているというのに。
これだから、よそ者は困ります。
必要なお金の使い方を知らぬとは嘆かわしい。」
デブラブは、その大きなお腹を揺さぶりながら立ち上がり、ミュージカル俳優のように両手を広げて、周りに疑わしい事をアピールし始めた。
詐欺師の技か。
周りを誘導するパフォーマンスは折り紙付きという訳だ。
て、いうかお前らがソレを言うか?
呆れたものだよ、いや逆にそこまで自己愛が強いなんて羨ましいというところかな。
自己中この上ないだろう。
「そう、そうですぞアルバック王よ。
財政支出に関しては我々が適切かつ吟味して…。」
「ダック内務大臣。
安心して頂きたい。
私達は魔法使いなど雇い入れてはいません。」
私は内務大臣の言葉をすかさず遮った。
さて、パフォーマンス対決と行こうじゃないか?
このデブラブボール!
「ああ!この世の神はなんと慈悲深いことか。
魔王討伐の勇者に1番貧しい国を与えた人間とは大違い!
心清き者に、救いの手を差し伸べて下された。
これは天からの、いや大地からの神の贈り物なのです!
そして、これは村だけが潤うのではなく国中が潤う恵です!」
デブラブの上を行く大袈裟な身振り手振りで、私は大口を叩いた。
「なんなら、お前達も村に出向くとよいぞ。
ナナシの言う事が狂言かどうか一目瞭然。」
「なんと、アルバック王!
では本当なんですね。
我が国にそんな、宝が眠っているとは。
財政も上向くかもしれませんね。」
今まで存在感ゼロの財務大臣がアルの言葉に身を乗り出して来た。
「待たれよ。
温泉一つで、まさかこの国の財政を潤せるとお思いなら、片腹痛いですなナナシ殿。
小さな国とはいえ、冷静に考えてもそこまでは。」
さすがに、デブラブも私のパフォーマンスに黙っていられなくなったようだ。
財務大臣を押し退ける形でグイグイ言葉を食い込ませてくる。
とはいえ、そんな当たり前のことを、いいツッコミした様な顔で言われても痛くも痒くもない。
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