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第9章
闇の知将④
しおりを挟む寝室の明かりを消して、私はそっとふてくされた王を置いて部屋を後にした。
この間も蜘蛛の糸玉からデブラブ達の様子を逐一伺っていたが、先程の会話以上のものは聞こえてこなかった。
私は別口から情報を集める為に、使用人の休憩所を訪れた。
厨房の右隣にある食物庫の脇に仕切りが立られてるだけの簡素なものだ。
使用人達はここを、入れ違いに交代しながら休憩を取っている。
おしゃべりとくれば、女性の使用人の方がいいのだが。
「おや、貴方様は先程指示を的確に下さった、助言師殿。
何か、お茶でもお出ししましょうかな?」
覗いた休憩所には使用人ではなく、コック長が食材のチェック表をメモしながら、お茶を飲んでいた。
「結構です。
ちょっと寄ってみただけですので。
そこに座らせて頂いてもよろしいですか?」
「ええ、ええどうぞ。
丸椅子しかありませんが。」
休憩所に入ると、私はコック長の前に丸椅子を移動させてから座った。
「実は以前、デブラブ様が高級食材を使うように指示が出ていたのですが、高級食材の殆どが鮮度が命なんです。
ですから、浪費の額も半端なくて。
ですが、私どものまかないに、その高級食材の残りを使ってしまうと、その、舌がその味に慣れてしまって、今まで食していた物を不味く感じる者も出てきてしまい、私生活が荒れる者が何人も出まして。
アルバック王がそれをどこで知ったのか、食事はここの部屋で必要な分のみ作る様にと。
気を遣って頂いていまして。」
ああ、そうか。
アルはちゃんと知っていたのだな。
使用人達の苦悩を。
だから、書斎で簡単な食事を。
「そうでしたか。
しかしながら、それでは折角のコック長の腕も使わずに、鈍ってしまう。
宝の持ち腐れというやつでしょう。
今後は高級食材でなくとも構いませんので、アイディアで勝負して頂きたい。」
「ええ、もちろんですとも。
実は女官どもにも、この提案は評判が良いのですよ。
掃除婦からも、家で作れるようにレシピを教えてくれとせがまれまして。
私も創作意欲がどんどん湧いてきまして。
こうして材料チェックをしながら、明日の料理を考えておりました。」
「そうですか。
それは楽しみですね。
身の丈にあった物を食すのが、1番ですよ。
身体の細胞も、決して高級食材を食べる想定ではない。
ごく普通の食材こそ、先人の知恵の結集なのです。
ところで、私はここへ来ていく日も経っていません。
この城の実情を全くと言っていいほど、知らないのです。
どうか、色々と教えて頂けないでしょうか。」
私はコック長にゆっくりと頭を下げて頼み込んだ。
「ああ、そんな。
頭を上げて下さい。
なんと謙虚な。
私でよければ、話せる範囲の事は全てお話ししますよ。」
「では、ダック内務大臣についてお聞きしたいのですが、彼はこの城内で生活を?」
「いえいえ、この城の裏手にある別棟が、彼の住まいです。
年頃の娘さんもいるんです。
奥さんを昨年初めに亡くされてまして、とても可愛がっているようです。」
「娘さんに会った事はないんですか?」
「ええ、ダック大臣の娘の可愛がり方は、少し常軌を逸していまして。
男の目には触れさせない事を徹底しているんですよ。」
「母親を早くに亡くした娘を、愛するが故の行動なんですね。
なんと愛情深い。」
というか、自己満足の延長だよなぁそれ。
娘本人にしたら、父親に人生握られてる感じだよ。
心理的虐待だよ。
気が付けクソ親父!
「えっと、あと財務大臣ですが、影が薄いというか。」
「モップ財務大臣ですか。
彼はソロバン弾きは得意なのですが、対人が苦手とか。
ダック大臣の腰巾着みたいに、いつもついて回ってますね。
でも、優しくていい人ですよ。
庭の花壇の花の世話も、趣味だと言ってやってくれたり。
ただ…。」
「ただ?
ただ何です?」
「デブラブ殿の押しの強さに負けてしまうのですよ。
元々自己主張の弱い方ですから。
今の財政を1番に危惧しているのはモップ大臣なんですが。」
やはり、読み通りだったか。
押せばどうにかなるタイプだ。
というか、ダック大臣といい、モップ大臣といい、アルに至ってまでこの国の奴らはどうしてこうも騙されスキル高いんだよ。
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