【暗殺貴族】短編集

八重

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短編

飛び級な告白(ラリウス・現代パロ・クリスマス)

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~♪~♪~♪

Silent night, Holy night,
All is calm, All is bright,
'Round yon Virgin Mother and Child,
Holy infant so tender and mild,

~♪~♪~♪



街はすっかりクリスマスムードで、あちらこちらからクリスマスソングが聞こえてくる。


心なしか街ゆく人達も何だか楽しそうでソワソワしている。
が、あいにく今私の周りの空気は重く張り詰めている。

賑やかなクリスマスムードとの温度差もあってか、かなり険悪な雰囲気を感じる。

チラリと横目で隣を見れば、ラリウスさんがにこやかな笑顔を貼り付けたまま黙々と歩いている。
一見機嫌が良さそうに見える素敵スマイルだが、私にはわかる。


彼は怒っているのだと。


そして原因もわかっている。
そう。それはさっきの宝飾店での事だった―…


*******


「うわぁ…綺麗……」


ラリウスさんにティーナさん達のクリスマスプレゼント選びに付き合って欲しいと言われ、連れてこられた高級ブランド店。

あまり高級ブランドや宝飾品に馴染みのない私は、普段見たこともないようなジュエリーの数々にただただ感嘆の声を漏らしていた。

そして値段を見てギョッとする。


(0が2つ程多い気が…)
「何かいいものありましたか?」
「あっいえっ…! 私にはレベルが高すぎて…何がいいのか……」


はっきり言って人選ミスだと思う。こんな桁違いのもの一般人の私には全くわからない。

「別に難しく考えないで直感でいいんですよ」
「直感と言われましても…」
「クリスマスプレゼントをお探しですか?」

困っているとタイミング良く店員の人が話かけてきてくれた。

助かった。私なんかより店員さんの方がよっぽどわかるってものだ。

「はい」
「だいたいどのようなものがいいかお決まりですか?」
「いえ…それが全然わからなくて…」
「そうなんですね。…そうですね…こちらのデザインのリングなどとても人気がありますよ」

そう言って店員さんがショーケースから取り出したのはペアリング。

あ、これ絶対勘違いされてる。

「あとはこちらのデザインのリングもー…」

他のペアリングをショーケースから出そうとする店員さんに慌てて制止をかけた。

「あ、あのっ私たち恋人とかじゃありませんから!」

私がラリウスさんの彼女なんておこがましいにも程がある。

と言うかラリウスさんに対して失礼とさえ思う。

「ただの知り合いですっ! 知り合い!!」

私の必死な否定に店員さんもちょっと引き気味に失礼しました。と謝った。

そこからだった。

ラリウスさんがあの恐ろしい完璧スマイルを顔に貼りつけたのは。




(あんな否定の仕方じゃ、まるで私がラリウスさんを嫌がってるみたいだったよね……)

ラリウスさんはずっと笑顔だけどその背景には

【何で私があなた如きに必死に恋人じゃないと否定されなければいけないんですか。おこがましいにも程がありますね】

と言う文字が見える気がする。

(はぁ…何であんな言い方しちゃったんだろ…)
「……今日は買い物に付き合っていただきありがとうございました」
「あっ、いえ。このくらい気にしないで下さいっ!」

ずっと黙っていたラリウスさんが口を開いてくれて私は一瞬安堵した。

のもつかの間。ラリウスさんはそれはそれは素晴らしい笑顔を作って口を開いた。

「いえ…ただの"知り合い"にこんなにも付き合って下さったんですから感謝しないと」
(めちゃくちゃ怒ってるよぉっ!!!)

"知り合い"の所が強調されていたのも気のせいではないだろう。

「いやっ…! それは、そのっ私の言い方が悪いって言うか、私なんかがラリウスさんと恋人なんておこがましいしですしっ。
 そ、それに何かラリウスさんが私となんか恋人って思われたくないだろうなって…そのっだから必死に否定して…その…」

自分でも途中何を言ってるかわからなくなってきた。

「…だから…そのっ…気を悪くしたなら…申し訳ありません……」

あぁ。駄目だ。

ちょっと泣きそう。

「なんだ、そういう事ですか」
「……え?」

俯けていた顔を上げれば穏やか表情のラリウスさん。

先ほどと同じような笑顔だけど全く違う。貼りつけられた笑顔じゃない。

「あの…そういう事って?」
「それは…そうですね。…あ。そう言えばこの先に大きなツリーがあるんでしたよね?」

急に出てきたツリーの話に一瞬戸惑った。

「ツリー…? え、あぁ…は、はい」
「じゃあ、見に行きましょうか」
「え? え?」

ラリウスさんは訳の分かってない私の手を握ると、人ゴミを掻き分けてズンズンと歩き出した。
 
「…あ…あのっ」
「いいから行きましょう」

言葉を続ける前に言葉を返されてしまった。

こうなったら大人しく着いていくしかなさそうだ。


******


先ほどの場所から少し歩いた所にツリーは建っていた。

とても大きなツリーは全体が少し青みがかった電飾で飾られていて、圧倒的な存在感を放っていた。

真っ暗な寒空の中そびえ立つそれの光は人工的なものなのに、まるで目の前で奇跡が起きてるかのように神秘的に輝いて見える。

「…綺麗……」

自然とその言葉が口から漏れた。

「綺麗ですね」
「……はい」

ツリーの綺麗さにしばらく見とれているとラリウスさんに名前を呼ばれた。

「…あ、すいません。見とれちゃって…。どうかしましたか?」
「…さっきの場所で言っても良かったんですけど…」
「え?」
「今日買い物にお誘いしようと決めた時からこの場所で言おうと思ってたので」

ラリウスさんの言っている意図が汲み取れなくて私は少し首を傾げた。

「…何をですか?」
「…こんな場所で決心して言う事なんてわかるでしょう?」

ラリウスさんのその言葉で私は彼の言おうとしてる事がなんとなく分かった。

そしてうろたえた。

だって、それは信じられない事で有り得ない事だと思っていたから。

「…え…いや…まさか…」

私の驚いた表情を見て、ラリウスさんはまるで肯定するかのように小さく微笑んだ。

「…ちゃんとこちらの国でどう言ったら良いのか調べたんですよ」

もう私の心臓は破裂するんじゃないかってぐらいバクバク言っているし、上手く呼吸も出来ない。

私の緊張は最高潮に達していた。そしてついにその時は訪れた。

「ずっとあなたの事が好きでした」
「っ………」

あぁ。駄目だ。
さっきとは別の意味で泣きそうだ。


私はきっと今の瞬間、間違いなく世界で一番の幸せ者だ。


「そしてこう言うんですよね。だから私と結婚を前提に結婚して下さい」
「は、はいっ…。……………て、え?」

え? え? 言い間違い? 聞き間違い? …よね?

「本当ですか!? 良かった…」
「えっいや、私なんかで良ければ……って言うか結婚を前提に結婚ってのは―」
「そうと決まればすぐに式の準備をしなくてはいけませんね」

聞き間違いじゃなかったぁぁぁあ!!!!

「ちょっ…ラリウスさん!? なんか色々と順序をすっ飛ばしてませんかっ!?」
「あぁ…! そうですよね! すみません。私とした事がついつい浮かれてしまって…」

な、なんだ。

びっくりした。そうよね。普通結婚を前提に付き合って下さいって言うよね。

いや、それもいきなりだけど。

いくらなんでも結婚を前提に結婚なんておかしいし。

「まずは婚約指輪から見に行かないと駄目でしたね」
「えっ!? いや、そう言う事じゃ―」
「あぁ…! お店が閉まるまであと30分しかありませんので急ぎましょう!!」
「えっ…あっ…えぇっ!? えぇっ!? えぇっ――――!!」

聖なる夜のちょっと前のとある日。

寒空に少女の叫び声が響き渡った。



【飛び級な告白】


「へ? さっきのお店?」
「あ、先ほどの…お客様何か気になるものがございましたか?」
「実は先ほどただの"知り合い"から"婚約者"に昇格したので婚約指輪を買いにきました」
「恥ずかしいから止めてぇぇぇえええ!!」


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