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第一章
第四話 本来の目的を終えましたところ
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そもそも、俺たちの目的ことギルドで受注した『依頼』は、あるモンスターの討伐であって、この森にドラゴンが居ることも知らなければ、ドラゴン退治など目的ですらない。
国が討伐指定したモンスターであるならともかく、保護指定や(あんなでも)聖竜指定されていて、うっかり討伐なんて、目も当てられない。
もし、そんなことになれば、故郷同然のあの町やギルドで悪目立ちするのは分かりきっているし、迷惑も掛けてしまう。
「フレイヤ。依頼、とっとと終わらせよう」
隣を並走するルナの言葉に頷く。
現状、あのドラゴンが追ってくる様子はない。
というのも、ルナが視界遮断の魔法を利用し、俺たちがドラゴンの横を通り抜けたタイミングで、気配遮断の魔法を使ったのだとか。
だから、俺たちがどちらに向かったのかはともかく、どの辺りに居るのかまでは分からない……はずとのこと。
正直、不安でしかないのだが、魔法が切れる前に終わらせればいいと言われてしまえば、それまでである。
「ああ、そうだな」
ドラゴンとの戦闘など、せめて依頼を終らせてからにしたい。
☆★☆
「……」
「……」
終わった。依頼は終わった。
討伐完了を示す部位も、きちんと持っている。
ただ、状況が良くない。
帰ろうとしたタイミングで、あのドラゴンの姿を見つけ、慌てて隠れたからである。
「……やっぱ、あいつをどうにかしないと駄目か」
正直、ドラゴンハンターやドラゴンバスター、ドラゴンスレイヤーでも無いから、ドラゴンなんぞ相手にしたくないのだが。
「たとえ逃げたとして、町の方に来られでもしたら困るし、何より、都合よくドラゴン討伐の専門家たちが居るわけもないだろうしね」
さて、どうしたものか、とルナが唸る。
「さすがに、ドラゴンを封じたりする魔法は……」
「無いことはないけど、私は使えない」
ですよねー。
一瞬でも使えるかと思ったわ。
「実際、あのドラゴンは封印されてたみたいだし、封印魔法が効かないわけじゃないことは証明済み」
「でも、使えないんだろ?」
「使えないね」
もし、封印魔法が使えたなら、あの池に誘い込んで再封印するという手が使えるんだけど、とルナは言う。
「町まで逃げるのは、ギャンブルだよな」
「ドラゴンスレイヤーたちが居なかったとしても、高レベルランカーたちが何人かは居れば、どうにかなるはずだろうけど……」
「まあ、居ねぇわな」
一人や二人なんて、足りるはずもない。
ましてや、魔王級でもない限り、一人であのドラゴンを沈めることなど不可能に近い。
「――本当、こういうとき使えないのが腹立つ」
仕方ないと言えば仕方ないのだろうが、俺とて何も出来ないのは悔しい。
「俺も、悔しい」
せめて、時間稼ぎぐらいにはなりたいと言うのに、攻撃や目眩まし等もルナに頼りっぱなしだ。
強くなろうと決めたのに、俺はまだ『その場所』には――『その場所』にすら届いていない。
「フレイヤ……」
ルナの不安そうにも聞こえる小さな声が、俺の耳に届いたかと思えば、いきなり両頬に添えられた彼女の両手によって、視線の向きが変わる。
「大丈夫だよ」
「……ルナ?」
「まだ手はあるから」
その言葉に目を見開けば、ルナの手が離れていく。
「手があるって……」
「気配を消す」
「気配を?」
それだけでドラゴンが誤魔化されてくれるとは思えないのだが。
「私たちが今一番するべきことは、あのドラゴンの存在を、早くギルドに持ち帰って伝えること」
「それはそうだが……」
「たとえ封印は出来なくても、誤魔化すことぐらいなら、私にも出来るから」
魔法は彼女の担当だ。
だからこそ、あまり口を出すわけにはいかないんだろうけど……
「魔力は? 大丈夫なのか?」
「二人分なら余裕」
『大丈夫』じゃなくて、『余裕』か。
言い方一つで、気持ちはこんなにも変わるのか。
「詠唱は?」
「必要ない。破棄でも十分足りる」
「持続は?」
「ギルドに入るまでなら保たせられます」
質問しながら、一つずつ確認していく。
「分かった。それ、信じるからな?」
本当にそれしか無いから、困る。
俺にもう少し力とかがあって、どうにかすることさえ出来れば、きっと他の選択肢だって、得られたはずなんだ。
それでも――
「任せて」
こちらを安心させるかのように笑みを浮かべる彼女に対して、本当に安心し、信じてしまえているのだから、本当に彼女には敵わないということを実感させられる。
けれどこの時、そんな笑顔の裏でも、ルナには不安な部分があったことを、俺は後日、知ることとなる。
国が討伐指定したモンスターであるならともかく、保護指定や(あんなでも)聖竜指定されていて、うっかり討伐なんて、目も当てられない。
もし、そんなことになれば、故郷同然のあの町やギルドで悪目立ちするのは分かりきっているし、迷惑も掛けてしまう。
「フレイヤ。依頼、とっとと終わらせよう」
隣を並走するルナの言葉に頷く。
現状、あのドラゴンが追ってくる様子はない。
というのも、ルナが視界遮断の魔法を利用し、俺たちがドラゴンの横を通り抜けたタイミングで、気配遮断の魔法を使ったのだとか。
だから、俺たちがどちらに向かったのかはともかく、どの辺りに居るのかまでは分からない……はずとのこと。
正直、不安でしかないのだが、魔法が切れる前に終わらせればいいと言われてしまえば、それまでである。
「ああ、そうだな」
ドラゴンとの戦闘など、せめて依頼を終らせてからにしたい。
☆★☆
「……」
「……」
終わった。依頼は終わった。
討伐完了を示す部位も、きちんと持っている。
ただ、状況が良くない。
帰ろうとしたタイミングで、あのドラゴンの姿を見つけ、慌てて隠れたからである。
「……やっぱ、あいつをどうにかしないと駄目か」
正直、ドラゴンハンターやドラゴンバスター、ドラゴンスレイヤーでも無いから、ドラゴンなんぞ相手にしたくないのだが。
「たとえ逃げたとして、町の方に来られでもしたら困るし、何より、都合よくドラゴン討伐の専門家たちが居るわけもないだろうしね」
さて、どうしたものか、とルナが唸る。
「さすがに、ドラゴンを封じたりする魔法は……」
「無いことはないけど、私は使えない」
ですよねー。
一瞬でも使えるかと思ったわ。
「実際、あのドラゴンは封印されてたみたいだし、封印魔法が効かないわけじゃないことは証明済み」
「でも、使えないんだろ?」
「使えないね」
もし、封印魔法が使えたなら、あの池に誘い込んで再封印するという手が使えるんだけど、とルナは言う。
「町まで逃げるのは、ギャンブルだよな」
「ドラゴンスレイヤーたちが居なかったとしても、高レベルランカーたちが何人かは居れば、どうにかなるはずだろうけど……」
「まあ、居ねぇわな」
一人や二人なんて、足りるはずもない。
ましてや、魔王級でもない限り、一人であのドラゴンを沈めることなど不可能に近い。
「――本当、こういうとき使えないのが腹立つ」
仕方ないと言えば仕方ないのだろうが、俺とて何も出来ないのは悔しい。
「俺も、悔しい」
せめて、時間稼ぎぐらいにはなりたいと言うのに、攻撃や目眩まし等もルナに頼りっぱなしだ。
強くなろうと決めたのに、俺はまだ『その場所』には――『その場所』にすら届いていない。
「フレイヤ……」
ルナの不安そうにも聞こえる小さな声が、俺の耳に届いたかと思えば、いきなり両頬に添えられた彼女の両手によって、視線の向きが変わる。
「大丈夫だよ」
「……ルナ?」
「まだ手はあるから」
その言葉に目を見開けば、ルナの手が離れていく。
「手があるって……」
「気配を消す」
「気配を?」
それだけでドラゴンが誤魔化されてくれるとは思えないのだが。
「私たちが今一番するべきことは、あのドラゴンの存在を、早くギルドに持ち帰って伝えること」
「それはそうだが……」
「たとえ封印は出来なくても、誤魔化すことぐらいなら、私にも出来るから」
魔法は彼女の担当だ。
だからこそ、あまり口を出すわけにはいかないんだろうけど……
「魔力は? 大丈夫なのか?」
「二人分なら余裕」
『大丈夫』じゃなくて、『余裕』か。
言い方一つで、気持ちはこんなにも変わるのか。
「詠唱は?」
「必要ない。破棄でも十分足りる」
「持続は?」
「ギルドに入るまでなら保たせられます」
質問しながら、一つずつ確認していく。
「分かった。それ、信じるからな?」
本当にそれしか無いから、困る。
俺にもう少し力とかがあって、どうにかすることさえ出来れば、きっと他の選択肢だって、得られたはずなんだ。
それでも――
「任せて」
こちらを安心させるかのように笑みを浮かべる彼女に対して、本当に安心し、信じてしまえているのだから、本当に彼女には敵わないということを実感させられる。
けれどこの時、そんな笑顔の裏でも、ルナには不安な部分があったことを、俺は後日、知ることとなる。
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