漆黒の白魔族~最弱生徒の成り上がり~

sizuma

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一年生編 第一章 オルエイ入学

第十九話 エイリア先生

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寮に戻ると、たくさんの先輩達が料理を作っていた。



朝は数人だったのに、今はほぼ総動員といった感じだ。



これがこの寮の日常なのだろうか?



よくよく考えて見れば、第八寮には個別の部屋に厨房は無い。



ご飯を食べたくなった時は、皆でロビーにある大きな厨房を譲り合いながら使うのか?



俺とシアは一旦別れてそれぞれ自分の部屋へと戻った。



戻ってくると、同じ部屋のメンバーは皆戻ってきていた。



「俺が1番最後か…」



そう呟くと、ナルキが話しかけてくる。



「エスタ、結構時間かかったね。」



「ああ、俺もここまでかかるとは予想外だった。」



「最後まで2人で狩りしたの?」



「ああ、お前らはやっぱり途中で別れたのか?」



そう質問すると、ナルキは声を弾ませて答える。



「うん。狩ったペース的に絶対終わらないと思ったからね。」



「僕とノエルちゃんも、別れたよ。僕の自分磨きの時間が減るのは惜しいからね!」



そういいながらも、ベッドの上でくつろぐミナクールを見て、自分磨きって何だっけ?と思う。



そんな彼を横目に、俺は思い出したように聞いた。



「そうだ、わざわざ狩りを頑張っておいてあれだが、夜ご飯ってどうするんだ? この寮厨房一つしかないじゃないか。」



「あー、それなんだけど、、、」



ナルキはジト目で質問に返す。



「実は、最初の一週間は先輩達が用意してくれるらしいよ。」



「え?」



「一年生は、入学したての時は収入が少なすぎて、まともにご飯を食べていけないから、第八寮では先輩が面倒を見ることになっているんだって。今日の昼も、一旦寮に戻ってくればご飯出してくれたらしいよ。」



「なんだよそれ、骨折り損じゃないか。」



三食分の食事を必死に集めていたこの四時間は一体何だったんだ?



俺があっけにとられていると、ヨロが説明を補足する。



「で、でも、明日からは午後の授業もあるし、昼ご飯は学食を食べなければいけないので、やっぱりお金は必要ですよ。」



だとしても一食分だけじゃないか。



学食なら一番安いメニューだと360デルで食べられるので、狩る数自体は三分の一でよかったのだ。



なんだか、この頑張った四時間が無駄に思えてきてならなかった。



「そういえばナルキ、先輩が面倒を見てくれるのは最初の一週間って言ったな。」



「言ったね。」



「その後はどうなるんだ?」



「当番制らしいよ。お金は皆毎日500デルづつ払って、その日の当番の人が料理を作るんだって。」



思い返して見れば、今日の朝、数人の先輩達が朝ごはんを作ってくれていたな。あれは今日当番の人達だったのか。



ヨロがナルキの説明に付け足す。



「ち、ちなみに、と、当番制なのはご飯だけじゃないらしいです。洗濯係とゴミの回収係、あとは掃除当番もあるらしいです。」



「なるほど、家事系は全部当番が決まってるのか。まぁ、共同生活をするわけだから当たり前だな。」



「グループ分けは、今日の夕食の時にするらしいですよ。」



部屋ごとではないのか。



でも言われてみれば、朝料理をしていた先輩も男子と女子が入り混じっていたから、部屋とかは全く関係なくグループを決めたのだろう。



「夜ご飯は何時から?」



「七時からだって。二時間くらい暇になるね。先輩曰く、今日は一年生の歓迎会をするらしいよ。」



質問するとナルキが答えてくれた。



歓迎会か、、、



確かに昨日は歓迎はしてくれたが、クラッカーを鳴らしていただけだったもんな。



少し豪華にご飯を振る舞ってくれるのだろうか。



そう考えると、少し楽しみに感じてきた。



まだ喋ってない人とも仲良くなりたい。



そんなことを考えながら、俺は部屋の端に立てかけておいた剣を手に取った。



「何? エスタ今から剣でも振りに行くの?」



ナルキが俺の行動を見て、聞いた。



俺はうん、と頷いてから答える。



「少しの時間も無駄にしたくないからな。」









★☆★☆★









俺は、昨日と同じ場所で剣を振り始めた。



歓迎会の準備をしていた先輩とは別に、十数名近くの先輩が自主トレーニングをしている。



同じクラスの生徒も二・三人剣を振っていた。



一つ言えるのは、時間的な問題もあるのだろうが、昨日よりトレーニングしている人数は明らかに多いことだ。



俺は、この放課後の剣の修行を日課にしようと思っている。



もしかしたら、他に優先すべきことが出てくるかもしれないが、今は基礎力を身につける事が一番だ。



それなら剣の修行はちょうどいい。



時間が来るまで、俺は剣を振り続けていた。



始めてからちょうど二時間が経った頃だろうか。



周りの先輩達が徐々に特訓を切り上げ、寮内に戻り始めた。



歓迎会を始める十分前、時間的にもちょうど良い頃だ。



俺もそろそろ切り上げようかと剣を鞘にしまった時、とある視線に気づいた。



寮の物陰から、じーっとこちらを観察しているのだ。



銀髪銀目の美しい女性。



エイリア先生だった。



目が合うと、彼女は手をクイっとこちらへ来るようにジェスチャーした。



俺は、頷いてすぐに駆けつける。



「エイリア先生、お久しぶりです。」



そう声をかけると、彼女は腕を組んでから俺に祝福の声をかけてくれた。



「入学おめでとう、エスタ。とりあえず、最初の難関は超えられたな。」



「先生のおかげです。」



「世辞はいい。入学できたのはお前自身の力だ。」



決してお世辞ではないのに。



彼女がいなければ、自分の過去と向き合うことなどなかった。



ましてや、オルエイ高等学校を受けることも、こうして今ここにいることも叶わなかっただろう。



確かに俺はがんばった。



この学校にいる誰よりも努力して入学した自負がある。



だが、その努力の前提には彼女との出会いがあった。



きっとこれから一生、俺は彼女に頭が上がらないだろう。



彼女は俺を褒めた後、予想外にもすぐに落としに来た。



「とはいえ、入学成績160番目は流石に肝が冷えたぞ。半年前のお前の実力から見て、Hクラスが限界だとは思っていたが、流石にこれはギリギリすぎる。そもそもなんだあの受験の内容は。緊張しているとは言え、あまりにもひどすぎる。最後、決闘で勝利できていなければ、間違いなく落とされていたぞ!」



「返す言葉もありません。」



コテンパンに言われてしまった。



自分の受験の時の結果があまりにも不甲斐なさすぎて、何も言い返せない。



そんな俺を見てエイリア先生はため息をついた。



「課題は山ほど残っているな。それはそうと、あの時決闘を見て思ったんだが、お前、剣術は誰にならっている?」



「剣術? 一応学校の先生と、家にいる時は父親から? でも、父は騎士団に所属していて、あんまり家にいないので、大体は自己習得です。どうしてそんなことを?」



俺がそう言うと、彼女は顎に手を当てて納得した素振りを出す。



「なるほどな、道理で。始めて剣を交わした時からそうだったが、妙な癖が多すぎると思ったんだ。」



「妙な癖?」



俺はとっさに聞き返す。



そんなこと初めていわれた。



もしかして、俺の剣の振り方、どこかおかしいのだろうか。



「ああ、足や腰の使い方に余計な部分が多い、基礎が固まっていない証拠だ。素振りはよくしているのだろうが、そもそもの剣の使い方を学べていない人に多い特徴がもろに出ている。オルエイに来る生徒は、大抵塾講師や専門の先生に矯正してもらっているのだが、塾には入らなかったのか?」



「半年前から入れる所はなかったんです。オルエイや、上位の高等学校の対策をしている所は、最低でも一年前からじゃないと入塾させてもらえなかったので。」



「なるほど、それは納得だ。確かにたかが半年頑張った所で入学できるほど、うちの学校は生温くないからな。」



そう言われて、心臓が、キュッと引き締まる感覚を覚えた。



考えてみれば、皆数年単位で、人によっては生まれてからずっとこの学校に入れるように対策をしているのだ。



たかが半年のぽっと出の俺が受かったのなんて、ただの奇跡としか言いようがない。



エイリア先生は数秒間何かを考えてから口を開いた。



「よし、わかった、こうしよう。月、水、金曜日の朝に体育館裏へ来い。私がみっちり鍛えてやる。」



その言葉を聞いた瞬間、俺は耳を疑った。



「え? いいんですか? エイリア先生って忙しいんじゃないんですか?」



最初に出会った時、彼女は自分の事をオルエイの最高権力者だといった。



生半可な魔族では、そんな立ち位置には立てない。



俺は彼女の経歴をしらないし、何をしていたのか全く存じ上げないが、普段忙しいことは想像がつく。



心の中で、あんなに凄い剣技を持っている人から指導を受けられる期待と、彼女の時間を奪ってしまう罪悪感がせめぎ合い始めた。



俺の言葉を聞いてエイリア先生は気にするなといった表情で返事を返した。



「別に、起きている時間ずっと仕事をしている訳でもない。己の自己研鑽の時間を少し子供に与えるだけだ。それともなんだ? まさか、将来魔王になりたいと言っている魔族が、私の修行を受けたくないと?」



「いや、受けたいです。受けさせてください!」



俺はそう言った。



先生は勢い良く宣言した。



「よし、引き受けた。多くの事は教えられないが、お前をAクラスのやつらにも負けないくらい強くしてやる。寝坊とかするなよ。した瞬間お前の事ぶっ飛ばしに駆けつけるからな。」



俺は自分の事が幸運だと思った。



こんなすごい実力者に剣を見てもらえるのだ。こんなに嬉しいことはない。



ただ、少し恵まれすぎている気もする。



「先生、一つ質問していいですか?」



「なんだ? 構わないぞ?」



「先生は、どうして俺の事を気に掛けてくれるんですか?」



率直な質問だった。



俺に彼女の気を引くくらいの魅力があるとは思えない。



突出した才能はないし、成長する見込みもそこまであるわけじゃない。



なら、何故彼女は俺に対して興味を持つのだろうか?



「お前、自意識過剰じゃないか? 私はいろんな生徒をスカウトしているんだぞ、別にお前だけを特別に気にかけているわけじゃない。

・・・ただ、二十年ぶりだったんだ。」



「? 二十年ぶり?」



「私のカウンターを受け止めたやつは、二十年ぶりだったんだよ。そして、今まで受け止めてきたやつは、既に大物だったか、将来必ず大物になった。だから、久しぶりにわくわくしているのさ。ただそれだけの話だ。」



そう言うと、彼女は黙り込んだ。



下を向いて、何かを思い出すかのような表情を見せた。



そして、最後に一言付け足した。



「あとは、お前の髪の色だな。」



「髪の色?」



「ああ。その黒髪は初代魔王を連想させる。つい、何かありそうだなと期待してしまうのは私だけではないろう。」



そう言うと、エイリア先生は自身の腕時計を覗いた。



「そろそろ、学校の方に戻るとしよう。お前も歓迎会なり、なんかあるだろう? 私も仕事が残っているのでな、ここいらで帰らせてもらう。入学祝いの言葉は口にできたのでな。」



そう言い残して、彼女はこの場を去っていった。



もしかして、入学おめでとうと言うためだけにわざわざ来てくれていたのだろうか。



だとすれば、なんていい先生なのだろうか。



俺はエイリア先生の背中を眺めながら、彼女の期待は裏切れないなと、自身の心を震わせた。
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