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アリスについて調べる
しおりを挟むアリスの家から宿に戻ってきた。
部屋へ戻るとマルクスがいた。
「帰ったぞ。」
「おかえりなさいませ。」
「今日は何か収穫があったか?」
「いえ、まだ。 ですが、アリス嬢のお母上が入院していた可能性のある我が国の国立病院へは一応手紙を送っておきました。」
「貴族の病歴ならば記録が残っている可能性があるだろうからな。 今回の調べるものに特に関係は無いが陛下への報告に混ぜられそうなら入れよう」
「はい。」
「そうだ、アル近衛隊長に今週末空いていたら会おうと言っておいてくれ。」
「承知いたしました。」
「アプト国に帰るのに数日かかるからな、なんだかんだ言っても後3週間程で戻るからな。」
「はい。アリス嬢とは如何ですか?」
「まだ何が進んだとは言い難い。 いつもならばもっと簡単なんだがな。」
「アリス嬢の事を大切に思われていらっしゃるから難しいのかと」
「そうだと思う。」
マルクスが用意していた食事に少し手を付けて酒を飲む
失礼しますとマルクスが下がったのを確認して懐から先程買った包みを出す。
「今日渡しても良かったが、もっと雰囲気のある時にしよう。」
包みを見ながら1人言い訳のように言う。
アリス、今日の服も似合っていた。
何を着せても着こなすとは。
明日も楽しみだ。
それから数日俺はアリスの家へ行きアリスと過ごした。
穏やかで満たされる日々。
国へ帰る時、この日々と離れるのが嫌でそれを考えるだけで苦しくなってきた。
今日もアリスと過ごし帰り際に頬にキスを落としてきた。
赤く染まる顔を見るたびに最高に満たされる。
どんなにこのまま押し倒してやろうかと思うか。
耐えている自分を褒めてやりたい。
「連れて帰りたい。」
「え? 私は旦那様とアプト国へ帰りますよ。」
「お前ではない、アリスだ」
少し泣きそうな顔でこちらをみるマルクス。
「・・・連れて帰ったら良いのでは?」
「令嬢だぞ?」
公爵家が男爵家に一声かければ例え他国と言えど爵位の高さからこちらの方が優位だが。
「どうもアリス嬢はご令嬢として扱ってもらえていないようですよ。」
「なんだと? それは俺が聞いていなかったことか?」
マルクスを睨む
若干怯んだマルクスは続ける
「旦那様がアリス嬢とお会いしている間にウィドーソン家のメイドと元執事と接触が出来たのですが、アリス嬢は10歳の頃から屋敷のメイドと同じような生活をしているようです。」
「・・・後妻のせいか」
マルクスの話によると、どうやら妾であった後妻とその間に産まれた子どもを優先した実の父親からも雑な扱いを受けているらしい。
「あと、近々アリス嬢の母上について知っている者と接触予定です。」
「確かアリスの母上はアプト国の国立病院に入院していたんじゃ?」
「どうやら違うみたいです。」
「なんだと?」
「詳しくはその者と会ってからでないと分かりませんが・・・」
「アリス・・・なんと不憫な。」
「えぇ、だから案外簡単にこちらに嫁ぐ事は出来そうですよ。」
アリスはそのような家で辛く孤独な生活を。
あんなに優しく愛らしい娘に・・・
「そろそろウィドーソン男爵に婚姻の申し込みでもするか。」
「いつでも申し込めるよう準備しておきます。」
「頼む」
ふぅ、ため息を吐いて、ふと思い出す。
「今日はアル近衛隊長と会う日だな。」
「はいそうです。」
「では、そろそろ準備をして行くとしよう」
「お供いたします。」
既に夜も深くなってきた時間だ。
全身黒のシャツとジャケット赤のラインが入った服を着る
アル近衛隊長に指定された店へ行くと既に店の前にアル近衛隊長がいた。
「クロヴィスさん!お久しぶりです!」
「アルさんも、元気だったか?」
「あはは!相変わらずですよ!」
「それは安心した。 では入ろうか。」
「はい。」
アル近衛隊長が指定した店は貴族御用達の店らしく、周りと接触せずに密談が出来るような個室がある店だ。
アル近衛隊長はわざわざ個室を予約していてくれたようで個室に入る。
「従者の方もご一緒に入ってください。」
「いえ、私は外で・・」
「まぁまぁ!せっかくいらっしゃったのに外で待ちぼうけなんて疲れるでしょう! クロヴィスさん宜しいですか?」
「マルクス、一緒に入れ。」
「はい、ありがとうございます。」
マルクスは嬉しそうに入り、長テーブルの端の方に座った。
「先日は国王陛下への書状を届けて下さり大変助かった。礼を言わせてくれ。」
「いやいや!クロヴィスさんの頼みとあらばいつでも大歓迎ですよ! 何せクロヴィスさんにもとうとう春が来たそうじゃないですか!」
ニコニコと人好きしそうな顔で言うアル近衛隊長は意外にも噂好きなんだな。
「ああ。実はそうなんだ。 と言っても、こちらばかりが盛り上がっていて、ご令嬢は私の気持ちには気付いてないんだがな。」
「なんと!?クロヴィスさんが!意外だ・・。いや、失礼。 ちなみにどちらのご令嬢ですか?」
「ウィドーソン男爵の長女アリス嬢だ。」
「!? ウィドーソン男爵・・」
なんだ?少し顔付きが変わったな。
「実は先日の書状もそのウィドーソン家の事についての書状だったんだが、もしやアル近衛隊長は何かご存知か?」
「いや・・・あの男爵家については貴族間で噂になっている程度の事位しか・・・。」
「噂とは?」
「アリス嬢のお母上は心が病んで亡くなったのではなく、男爵に殺されたのでは。と言う噂です。」
「男爵に。」
「はい。 奥方はアリス嬢が10歳になる前から病にかかっていたようなのですが、奥方が立つのもやっと。という頃に男爵が外で女性とよく逢瀬をしていたんです。」
「ほう。」
我が国もこちらの国も一夫一妻制ではあるが、貴族は自分の懐の豊かさを見せるために女を囲う奴が多い。
愛人・妾を持つ夫は妻からしたら面白く無いだろう。
「それで、あそこは奥方の家に結婚して養子に入った男爵があの家を乗っ取るために奥方を殺したんじゃないかって噂です。」
あくまで噂ですよ!と重ねていうアル近衛隊長
「なるほど。」
こちらの国の貴族ではないが大概どこの貴族も同じだろうが、その手の噂はまさに真実な事が多い。
公爵・侯爵等の爵位の高い貴族の噂話は妬み嫉みから嘘も多いが男爵程度ならば・・・
「あながち間違いでもないだろうな・・・」
ボソリと呟いた言葉は誰にも聞かれる事がなかった。
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