【R-18】冷徹な公爵が迎えた隣国の令嬢※現在不定期連載

癒し

「とっても良いお天気ね。」
リリーがお茶菓子を持って来てくれる間、部屋の窓から外をみると、太陽が庭の木々や花達に栄養を与えている。
この屋敷の庭を見ていると、ふと。あの小屋を思い出す。

「奥様？良ければお庭でお茶でも如何ですか？」
ヤヤに話しかけていたけれど、丁度リリーが部屋に戻ってきて私にそう言った。

「いいの？」
「ええ。勿論です。なんなら庭師に頼んでお好きなお花を植えてみては如何ですか？」
「好きなお花・・・クロヴィス様に叱られないかしら？せっかくこんなに素敵なお庭に勝手に。」
「あら。奥様がなさる事を旦那様が叱ったりしないと思いますよ。」
そう言ってリリーはお庭に行く準備を始めた。

私とリリーとヤヤが廊下から玄関ホールに続く階段の近くまで行くと。


バタンッ
玄関ホールから大きな音が聞こえる。
「旦那様！お早いお帰りだったのですね！」
下からハリーの声が聞こえてくる。

「クロヴィス様？　お帰りは夕方と言ってなかった？」
私はリリーに尋ねるとリリーは首を縦に振る。

「アリスー！」
そう大きな声で私の名を呼びながら階段を上がってくる。
上がり切る前に私を見つけてとても嬉しそうに笑うクロヴィス様。

「アリス、ただいま。」
「クロヴィス様！お帰りなさいませ！」
私がそう言うと、クロヴィス様は階段を駆け上がり私をギュッと抱きしめる。

「アリス。アリス。」
「ク、クロヴィス様！？皆んなが見てます。」
聞こえているのかいないのか、クロヴィス様はさらにぎゅうぎゅうと私を抱きしめる。

クロヴィス様の腕の隙間から見えたリリーやヤヤ。
クロヴィス様を追いかけて来たハリーは呆然とクロヴィス様を見続けていた。






「アリス、機嫌を直してくれ。」
あの後抱きしめたまま離れないクロヴィス様を皆んなで落ち着かせて、一緒にお庭に移動した。
何も言わない私に、怒っていると勘違いしたクロヴィス様は私を宥めようとオロオロしています。

「別に怒っていませんよ。私だって、クロヴィス様が早く帰って来てくださるのは本当に嬉しいんです。」
「アリス・・・」
「本日は、お仕事が早く終わったのですか？」
クロヴィス様は王様直々にお仕事を頂くと聞いていたけれど、こんなに早く終わるものなのね。
「いや・・・アリスの事が気になり途中で帰って来たんだ。」
「えぇ！！」
「「ええっ！！」」
「まぁ、まぁ！」
私が驚いたとほぼ同時位に、ハリーとリリーが更に大きな声で驚いた。
ヤヤも驚きを隠せなかったようだ。

「「し、失礼致しましたっ！」」
そう言って、ササっとお茶の用意をして会話が聞こえるか聞こえないか位の所まで3人は移動してしまった。

「クロヴィス様、お仕事の途中で帰って来たのですか？」
「そうだ。・・・だが、王様が今日は特別に帰っても良いと仰った。」
「それは良くありません、クロヴィス様！クロヴィス様を信頼して王様がお仕事をお与えになっているのに。」
「そうだな・・・すまない。今後は気をつけよう。」
反省したように少し目を伏せるクロヴィス様に少し可愛いと思ってしまった。

「うふふ。クロヴィス様。私はクロヴィス様の妻になったんですから、旦那様のお帰りをここで必ずお待ちしていますよ？」
「アリス・・・本当に、可愛い事を言う。」
そう言ってクロヴィス様は私の手をとりご自分の胸の中に引き込んだ。
「クロヴィス様っ！みんな見てますっ！！」
「構わん。それよりも今アリスを抱きしめねば気が済まないんだ。」
ギューっと抱きしめられて、恥ずかしさもあったが、なんだか今日は甘えたのクロヴィス様を甘やかしてあげたい。そう思い自然と私も背中に腕を回す。

暫くそうやっていると、クロヴィス様が耳元で話しかけてきた。

「アリス、明日から仕事を頑張る為に今日は私を癒して欲しい。」
「癒す・・・ですか？私で出来るなら、ぜひ癒してあげたいです。どうすれば癒されますか？」
「そうだな。・・・ひとまず夜まで考えておくから、そのつもりで。」
「わかりました！私に出来る事ならいくらでもクロヴィス様を癒して差し上げますね。」
「ありがとう。アリス。」


そう約束をして、お茶会が始まった。
クロヴィス様が王都のお土産にと買ってきてくれたお茶菓子は、とても美味しくて甘くて。
まるでいつも私を甘やかしてくださるクロヴィス様のようなお菓子だった。


ところでクロヴィス様の癒して欲しいっていったいどんな事かしら？
よしよしして差し上げたりとか？
抱きしめて差し上げたり？
考えておくって仰ってたから今から考えるのね。
私が出来ることなんて限られているだろうけれど、いつも沢山の愛をくださるクロヴィス様を心を込めて癒して差し上げよう！


私は夜までウキウキして待つことにした。