恋と愛を知ったのは、陰謀だらけの王宮でした。

みるく

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1:始まりよりもはじまり

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18年前-


ゴロロ・・・
ザァァァ・・・

カッ!!!

数年に一度の大嵐。
とある王国の王城内の一室で、王妃は口に布を入れ両手はベッドのシーツを引きちぎる寸前のように握りしめる

「んーーーーーっっ!!!」
「王太子妃様、もう一度いきんでくださいませ」
「ふぅーふぅー・・・んーーーー!!!!!」
「頭が見えました!!王太子妃様、もう少しでございます!」
王室医女達は必死の形相で王太子妃を鼓舞し、この国の未来を担うであろうお子の誕生を待ち侘びている


「ふっふっ・・・ぐぅううんんっっ!!!!あああっ!!!!」
王太子妃は呼吸を整えると最後の力を振り絞るように目を見開き身体をグッと丸め下腹部へ力を込める。
するとずるりと身体から我が子が出てきた。
自然と王太子妃は叫ぶように声を上げて身体をベッドに深く沈めた

「ああー!!!んぁああ!!」
産まれたばかりの赤子は力強く人生の始まりの産声をあげる

「はぁはぁ・・・どちらだ?」
荒い呼吸を整えながら王太子妃は医女に尋ねる
「王太子妃様おめでとう御座います!王子様で御座います!!!第二王子様です!!!」
歓喜の声をあげる者、嬉しそうに涙を流す者
王太子妃にお祝いの言葉をかける者で部屋中が明るくなる。

「すぐに王様へお伝えして参ります!」
そう言って王太子妃付きの侍女は部屋を出て行った。

王子を取り上げた医女は産まれたばかりの王子の身体を清め綺麗なおくるみに包んで王太子妃の腕に乗せる
「王妃様、おめでとう御座います。」
「・・・ありがとう。そなたらのおかげもありこのように元気な王子を産むことが出来た。王太子様から褒美が頂ける事だろう。何かあれば呼ぶのでそなたらも少し休みなさい」

「ですが、しばらくは王太子妃様の容体の管理を」
「隣室に居れば良い。疲れているのだ、何かあれば侍女のマーヤが呼びに行くから下がりなさい。」
医女の言葉を遮りピシャリと言い放つ王妃にびくりと身体を震わせ、医女はサッとカーテシーをして部屋から下がる。

茶色い髪を後ろで綺麗に束ねた王太子妃付きの侍女マーヤは医女が部屋を出たのを確認してパタリと扉を閉じた後、王太子妃の方にくるりと向き直り、嬉しそうな顔で声をかける。

「サリアナ様、本当におめでとう御座います!」
「ありがとうマーヤ。」
「第一王子様がお生まれになって7年、
数度の悲しい流産を経験してやっとここまで・・・
早産では御座いますがお生まれになった御子は王子様! 喜ばしい限りでございます!」

口角は上がり興奮で顔を真っ赤にしながら王太子妃サリアナの胸の中で眠る王子の顔をそっと覗く。

「サリアナ様と同じく美しいブロンドで王太子様と同じ琥珀色の瞳を持った王子様ですね。第一王子のダリル様は王様の漆黒の髪色を引き継いでおられるので兄弟異なった髪色ですね。 将来がとても楽しみです!」
うっとりとした顔で将来を思い浮かべ嬉しそうに話すマーヤ
そんなマーヤを見る疲れた表情のサリアナに慌てて姿勢を正す

「気遣いが足らず申し訳ございません!どうぞ私の事は気にせずおやすみください。王子様はサリアナ様の隣へ」
そう言ってサリアナから王子を受け取りそぉっとベッドに乗せる
「では私は部屋の隅で待機いたしますので何かありましたら」

コンコンッ

マーヤが話している最中に軽いノックが聞こえてきた
その音を聞きマーヤが扉を少し開けて外に出る
そしてすぐにサリアナの側に戻ってきた
「誰が来たのだ?」
「デニス殿下です。現在ご公務で手を離すことのできない王太子様に代わりお見舞いにいらっしゃいました。」
「まぁ!」
横にしたばかりの身体を持ち上げようとするサリアナにマーヤが制止する
「サリアナ様はお疲れですし、いくらデニス殿下と言えども王太子妃のかようなお姿をお見せする訳には」
「良いのよ。きっと王太子様から何か言付けがあるのよ。」
サリアナはそう言うと座りながら乱れた着衣や髪を正し、デニスを呼ぶように言う。
「デニス様が入られたらマーヤは外で待っていて頂戴」
マーヤはそう言われて顔色をサッと変える。
「ですが、殿方と密室になられるなど!」
「マーヤ。デニス様は王太子様の弟君よ。私の義理の弟でもあるお方にその様に無礼な想像をするのは辞めて」
サリアナはキッとマーヤを睨みつけるとマーヤはびくりと肩を振るわせた

「申し訳ございません。」
「わかってくれたなら良いのよ。キツく叱ってごめんなさい。さぁ、デニス様をお待たせしないで。」
サリアナはマーヤにそう言うと、マーヤは扉に向かいドアを開ける


「殿下。王太子妃様がお入りいただいて構わないと仰っております。早産で通常よりもお身体のご負担が大きいと思われますので出来るだけ長居は避けてくださいませ。」
「ありがとう。兄上から様子を見てきて欲しいと頼まれたのでね。悪いね。」
デニスは父王によく似た王太子の黒髪に黒い瞳とは対照的に金色の長髪にタレ目がちな琥珀色の瞳を持ち王妃の容姿にとてもよく似ている、女性をドキリとさせる様な甘いマスクでマーヤに笑いかけた。
そんなデニスを見てマーヤも一瞬心が乱されそうになったが、すぐに切り替えて平常心を保つ

「いえ。・・・ですが、出来るだけお時間は短めにお願いいたします。王太子妃様は出産したばかりで大変お疲れでございますゆえ」
「わかっているよ。」
そう言ってデニスは部屋に入り扉をゆっくりと閉めた。




「デニス様・・・」
「義姉上・・・いや、サリアナ。良く頑張ったね。」
2人はうっとりとした瞳で見つめ合い、デニスはサリアナの髪に触れ顔を引き寄せる
そして瞳・頬・口と啄むようにキスを落とす

「んっ、デニス様・・・」
「可愛いサリアナ、君が兄上の妻なのが悔しいよ。伯爵令嬢だった君をはじめに見初めたのは僕だと言うのに。」
ちゅ、ちゅ。と小さく軽いリップ音を立てながらデニスはそう言うとサリアナはくすぐったそうに身じろぎした。

「王様と王妃様が婚姻は長男から。と仰ったので仕方がありません。私もダミアン様よりもデニス様が良かったと今も・・・ずっと思っております。」
手の甲にキスを落とすデニスを見ながらそう言うサリアナは頬を染める
「本当かい?」
「勿論ですわ。私の愛の忠義の証拠にこの子を良くご覧くださいませ。」
隣でスヤスヤと寝息を立てる赤子をデニスに見せる
「この子は兄上との子。・・・この子が証拠とはいったい・・・」
デニスがそう言ってまじまじと赤子を見ているとサリアナは嬉しそうにそして誇らしげに言う
「この子は・・・デニス様、貴方様のお子です。」
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