恋と愛を知ったのは、陰謀だらけの王宮でした。

みるく

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28:翻訳師として

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「セラ、本日はここまでにしましょうか?」
「はい!司書長!」

机の上に広げた本や資料をセラとハリスで片付ける
「セラが来てから大体2ヶ月ほど経ちましたね。どうですか?だいぶ慣れましたか?」
「はい!みなさん、はじめは静か過ぎて、歓迎されてないのかもと思っていましたが、優しく指導してくださる方ばかりで、とても働きやすいです!」
「そうですか。それはよかった。」
「これも全て、司書長のおかげです!」
セラはニコニコと笑いながらハリスにそう話すと、ハリスもにこりと微笑む

「いえいえ、私は何もしていませんよ。セラが優秀な事を彼らがわかっているからです。」
「優秀だなんて、そんなこと」
「謙遜しないでください。現に私がとても助かっているのがわかるでしょう?」
ハリスはそう言って、古文書を撫でる

「だから自信をもって、これからも助けてくださいね」

ハリスにそう言われ、セラの心の奥がじんわりと温かくなった
「はい!」

お互いに笑い合いまた片付け始める





思えばこの約2ヶ月、いろんなことがあった。
マギーさんに教えてもらいながら覚えた図書室の作業
1度だけまたセシル様が来たが、あれから見かけなくなった

その後すぐ、第二王子様のお妃様がご出産されたらしく、王宮内は賑やかな空気が広がっていた。
まぁ、ただの翻訳師である私には全く関係のないお話だけど、ご出産のお祝いとして王宮内に働く者全員に振る舞われたお菓子はとても美味しかった。






「あれ?」
本棚に本を戻していた時、見た事のある古文が見えた

「この文字は・・・あの遥か遠い国の・・・」
セラはその本を取るとパラパラと軽く中を見る

「セラ?その本が気になりますか?」
「はい・・・これって、私の実家にダリル様が初めて持ってきた本と同じ国の・・・」
「そうです。その国の文字です。」
「この研究室にもあったんですね。」
セラはまだ本の中身に視線を落としながらハリスに話しかける。

「その本は先日友人から預かったものなのです。その本は医術書らしいのですが、昨年この国で流行った流行病の治療法が載っているらしく」
「え!?」
バッと音が出そうな勢いでハリスの顔を見るセラにハリスが優しく微笑む

「セラの母君の病を治す方法が書かれているかもしれないのです」
「そんな本が・・・なぜ」
「この国で流行った病は治療法が見つからず、いまだに苦しんでいる人も多い。死者も多数出た。どうして終息したのかもわからないままですが、ひとまずこの国でいまだに苦しんでいる人々を助けようと話して辿り着いたのがその本でした。」
セラは手に持っている医術書を見つめる
とても重くて厚みがあり、到底すぐには解読できるものではない。


「その本を見つけてくれた私の友人は医術に携わる者でね。この本を翻訳出来れば、君の母君はもちろんのこと、この国の病に苦しんでいる民を助けられると言ってるんだよ。」
ハリスはセラを見てそう言う

「私・・・この翻訳やりたいです!」
ハリスを真っ直ぐ見つめて言うとハリスはにこりと笑う
「もちろん。セラに手伝ってもらえなかったらどうしようかと思っていましたよ。」
「ハリス様・・・ありがとうございます。」
母の病に一筋の光が差したように感じたセラは少し涙を浮かべる


「さぁ、今日はもう終わり!次回から始めていきましょう。 セラ、急ぎたい気持ちもわかりますが、焦らずやっていきましょう。」
「はい!」

そう言い合うと、また片付け始める

「あ、そこの本は高い場所にしまうので、私がやります。置いていてください。」
「大丈夫ですよ!私高いところ慣れてるので!」
セラが本棚の高い位置に片付けるため梯子に登る
ハリスはそれじゃあと別の作業を始めたその時


コンコンッ
ドアのノック音が聞こえてきた

「はい、どうぞ」
ハリスがノックに返事をする

「失礼する」
入ってきたのはダリルとマルコだった

「あ、ダリル様とマルコ様!キャッ」
「セラ!!」
梯子から足を踏み外し落ちかけるセラに、ダリルが思わず声をかけ助けに行こうとした
「危ない!!」
その時、セラの近くにいたハリスがセラを抱き止める


「っ・・・、ハリス様!!すみません!!」
痛みに備えるためギュッと目を閉じていたセラはなかなか来ない衝撃に目を開くと、ハリスに抱き止められていて申し訳なさそうに顔を赤くする
「いえいえ、怪我はないですか?」
そう言いながらセラをゆっくりと降ろす
「は、はい・・・大丈夫です。ハリス様はお怪我をされていませんか?」
ハリスの怪我を心配してハリスの身体を見るセラ



そんなセラとハリスを見て、固まっている人物が一人

「ダリル様、ダリル様!!」
マルコはダリルを肘でつつく
「あ、すまん!・・・セラ、驚かせてしまって申し訳ない。怪我はしてないか? ハリス、セラを助けてくれてありがとう」
ダリルは頭を下げて、シュンとした態度をとる

セラは慌てて両手を振ってダリルに話しかける
「え!!ダリル様何もしてないじゃないですか!私が足を踏み外しただけですよ!!気にしないでください!」
ハリスもセラに続いて慌てて頭を上げる
「ダリル様!私にそのような事をなさらないでください!」
「しかし・・・私のせいでセラが・・・」
ダリルは拳を握り悔しそうな顔をする

セラはそんなダリルの拳を両手で包む
「ダリル様!私は大丈夫ですから!ね?」
ダリルはセラに手を両手で包まれ、驚き顔が赤くなる
触れられた場所が熱くなった気がしてそこから鼓動を打っているような感覚にクラクラした

「あ・・・セラ、わかった。わかったから・・・手を」
急にドクドクと大きく脈打つ心臓に、ダリルは戸惑い、ちゃんと喋ることができない

「あ!すみません!!」
セラもまた頬を染めて手を離す
微妙な空気が流れたが、マルコが咳払いをすると、場の空気が少しずつ戻っていった

「ダリル様、セラに話があるのでは?」
そう言われてダリルはハッとする
「そうだセラ!明日、昼食を一緒にとらないか?最近忙しくてなかなかセラと話せなかったから、よければ庭園で一緒に昼食をとりたくて誘いに来たんだ」
ダリルの言葉に、セラは嬉しそうにした後困った顔をした
「すみません・・・明日は私、お休みを頂くんです」
「そうか・・・明日は何かあるのか?」
「はい、市中で夜市が行われるのですが、朝から市の手伝いをする事になっていて。」

申し訳なさそうに離すセラにダリルは目をぱちくりとさせて首を傾げる
「夜市・・・?」
「はい、ダリル様は元々領地にお住まいでこの辺りの民の生活はご存知ではないですよね。」
「あ・・・ああ。」
まさか王宮で勉強ばかりで知らないとは言えず、、ダリルは言葉を濁す

「この辺りでは年に2度ほど遠方や近隣の町から物売りがたくさん来て、夜に市場が出来るのです。 今年は第二王子様のお妃様がご出産されたので、例年よりも盛大になるらしく・・・あ!そうだ!」
セラは、まるで名案が浮かんだと言わんばかりに目を輝かせダリルを見る
そんなセラによくわかっていないダリルは更に首を傾げる
「?」

「ダリル様も夜市に来ませんか?」



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