恋と愛を知ったのは、陰謀だらけの王宮でした。

みるく

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30:身分の壁

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「すみません、おじさんが・・・」
「いや、構わない。」
先程の恥ずかしさから会話が少し減った二人はゆっくり歩く

ダリルは先程の店主の言葉に胸が跳ねたのか陽気な雰囲気のせいなのかわからないが、ずっと心が高揚感で満たされている
気を緩めたら口角が自然に上がってきてにやけてしまいそうなほどだ。

セラもまた、忘れようとするが店主の『デート』と言う言葉が離れない
相手は身分的にもありえない方なのに、なんてことを言うんだと少し店主を恨めしくも思いつつも、頬を軽くつねりニヤつかないようにしている。


そんな二人を後ろから眺めるマルコとジャンはコソコソと会話する
「どうしよう、ジャン」
「何がです?」
「セラはわからんが、ダリル様は完全に好意を寄せてるぞ?!」
「まぁ・・・そうですね」

ぼやぁっとしながら歩いているように見えるジャンは、会話の間もダリルに危険がないかを確認する
店主の言葉により緊張感を持って自分の仕事を全うしている


「まぁ、そうですねって!!ダリル様はこの国の王太子だ、平民の娘と恋に落ちるなんて・・・」
決してセラが嫌いなどと言うわけではない、しかし世間がダリルの心の行方が平民にある事を許さないだろう
民はまだ良い、だが貴族達は?
新たな風を嫌う貴族が多いことはマルコは嫌と言うほど知っている
正統な嫡子であるダリルですら、いついかなる時も油断ができない。
それが貴族なのだ
マルコはどうしたものかと頭を抱える

「結ばれないとしても」
「え?」
ジャンがボソリと言った言葉にマルコは聞き返す

そのマルコの問いにジャンはまた口を開く
「ダリル様とセラはどう考えても身分違いです。それはダリル様もよくお分かりでしょう。 ダリル様のセラへの想いが結ばれなかったとしても・・・悲しい結末だったとしても、ダリル様の人生に彩りを残すことができます。
あの王宮で、いつ命が狙われるかもわからない場所で、決められた運命に従い生きている。
人生を共にする相手すら自分で選べないんです。
そんな人の心すら奪ってはいけない。・・・と、俺は思います」

そう言ったあと、ジャンは口を閉じる
そんなジャンにマルコは目を見開く
「お前・・・そんなに沢山話せたんだな」
ズレた事を言われ少しムッとするジャンにマルコは少し微笑む

「すまんすまん、そうだな・・・ダリル様の初恋だ。私たちがそれを奪ってはダメだな」
マルコがそう言うと、ジャンはコクリと頷き、二人はまた静かに周りへの警戒に戻った




「キャー!!!スリよ!!誰か捕まえて!!!」
後ろの方から叫び声が聞こえてくる
ダリル・マルコ・ジャンはその声のする方を向くと走ってくる男が見えた

「ジャン!!」
ダリルがジャンの名を呼ぶと、ジャンは一度ダリルを見て頷き、一目散にその男の方に走る

人混みをまるで風のようにすり抜けていき
目的の男を掴んで投げ倒す
男が小さな声で呻めく
ジャンは手に持っていたバッグを取り返し、後ろから走って来た持ち主の女性に返した
女性は何度もジャンにお礼を言う

周りで見ていた人々から
「おお・・・」「すごい!」などと言葉が聞こえてくる


「ジャン、見事だ」
追いついたダリルがジャンを褒め、その言葉にジャンは頭を下げる

「ほら、立て!」
マルコはそう言うとジャンと一緒に男を立たせる
そしてマルコはジャンに話しかける
「ジャン、悪いがこのまま近くの警備部隊の所まで連行してくれ。私たちはここにいるから」
マルコの言葉にジャンはコクリと頷き男を連れて人混みの中に入っていった



「では、ダリル様ジャンが戻ってくるまでここを動かないで待ちましょう」
「あぁ・・・セラ、悪いがしばらくここで・・・セラ?」
ダリルは後ろを振り返る
いると思っていたはずのセラがいない

「あれ?・・・ダリル様、セラは?」
マルコはダリルの後ろを見てから周りを見回す

「セラとはぐれた・・・?」
ダリルはその言葉を口にしてゾッした
スリもいるこの場所で、それ以上に厄介な人間が居ないとは言えない
背筋が冷えてきて心臓がバクバクとうるさい

「セラを探しに・・・」
「なりませんダリル様!」
焦るダリルにマルコが手を掴み引き止める
その力は普段のマルコとは比べ物にならないほどの力で、ダリルは振り解くことができない

「何故だ!私が置いて来てしまったんだぞ!もしも変なやつに絡まれてたりしたら!」
威嚇をするように話すダリルにキッと見つめ返すマルコ
「ダリル様、私はあなた様の御身の方が優先なのです。セラももちろん心配ですが、せめてジャンが戻ってくるまではお待ちください。」
「しかし!」
「ここはセラが生まれ育った場所です。セラなら大丈夫です。ジャンが戻り次第探しましょう。」
マルコの必死の説得で、ダリルは大人しくなりマルコも掴んでいた手を離す

「私は・・・なんて非力なんだ」
悔しそうに言うダリルにマルコは下を向く
「そんなことはありません・・・」 
それしか言えなかった。







「おーい!ダリル様~!マルコ様~、ジャンさーん」
女性の叫び声と共に入っていったジャンさんを追いかけて二人も後に続くように走っていった。
追いかけようとした時に野次馬達がゾロゾロと出てきてあれよあれよと人の波に押されてはぐれてしまった。

「まぁ、夜市自体そこまで広いわけじゃないから歩いてたら見つかるでしょ」
そう独り言を言いながら人の流れに乗って歩いていく


ドンッ
人混みの波に逆らって歩いて来た人と強くぶつかり転けそうになった時
手を掴まれグイッと引っ張られ、腰をぐっと引き寄せられた
その瞬間、相手の息が近付き、耳元で小さく「危ない」と聞こえて来た。

「わっ!!すみませっ・・・!!!」
転けずに済んだ為お礼を言おうと上を向いたら知っている方だった。

その衝撃に、周りの音が一瞬遠のいた。
まさかこんな場所で出会うと思っていなかった。
その方も私の顔を見て驚いた顔をしている、そんな顔すら美しい人


「セラ・・・」
「セシル様・・・」
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