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31:瞳に映るのは
しおりを挟む「あ!転ばずにすみました!!ありがとうございます」
セシルに掴まれた左手を見てそう言うと、セシルはサッと腰と手を離した
耳まで赤くしてお礼を言うセラを見てセシルはプッと吹き出すように笑った
「お前とはぶつかることが多いな」
綺麗な顔で微笑むセシルにセラはなんて美しい顔なんだと感心する
そして顎に手を当てて考える素振りをした
「うーん、確かにそうですね!」
そんなセラにセシルは不適な笑みになる
「そういえば、お前はなんでここにいるんだ?」
「あ、一緒に回っていた人達とはぐれてしまいまして。」
「ふーん」
「セシル様もですか?」
セラは首を傾げてセシルに問うと、セシルは目を見開く
「俺は一人で来てる!セラにみたいにはぐれるなどない!」
フンっと鼻を鳴らし腕を組むセシルに、セラはなんだか幼い子のようだと感じて少し笑う
「そうですか。」
「あぁ、そうだ。」
ツンとしているセシルにニコニコと笑いかけるセラ
そんなセラに悪い気はしないセシル
「人が多いのでここで止まっていては迷惑ですね。」
「ああ。」
どんどん人が増えてきて立ち話をするには邪魔な場所にいる二人は人が少ない場所まで歩く
「セシル様はこのお近くに住んでいらっしゃるんですか?」
「いや・・・家が嫌で飛び出してきた」
「まぁ、そうなんですね。」
そんな日もありますよねー。と頷くセラに、セシルは聞く
「理由を聞かないのか?」
その問いに目を丸くする
「え?はい。」
「女はこういう時あれこれと尋ねて来るものじゃ?」
今まで関わってきた令嬢は、みんな根掘り葉掘りと人のことにズカズカと土足で入り込むように聞いてきた。
それなのにセラは何も聞いてこない、その違いに驚く
「お前のような者は初めてだ・・・」
「え?なんですか?」
周囲の音にかき消されセシルの小さな呟きはセラの耳に届かなかった
そんなセラに意地悪したい衝動に駆られたセシルはセラの耳元まで顔を近づける
「お前のこと・・・結構好きかもしれない」
「っ!!!」
良い声で呟かれたセラは耳まで赤く染まる
その姿に、イライラしていた気持ちはなくなりスッキリとした気持ちになったセシルはセラの全身をよく見る
「ふーん。普段の子供っぽい雰囲気と違ってなかなかいいんじゃないか?」
そう言われ、パタパタと熱い顔を手で仰いでいたセラはスカートの裾を持ち、ぎこちなくカーテシーをする
「そうですか?ありがとうございます」
まだ少し赤い顔で微笑む姿に満足したセシルはセラの髪をひと束とるとそっと毛先にキスを落とした
セラはまた紅潮してぱくぱくと口を動かす
その時
「おーい、セラー!!」
人混みと周囲の音に紛れて声が聞こえて来た
「お前のことを呼んでる奴がいるぞ」
「え、え!!!」
セラはキョロキョロと辺りを見回し、うまく見つけられず声を上げる
「はーい!!!セラはここです!!」
手をあげてぴょんぴょんと飛び跳ねるセラにセシルは頭をポンポンと叩く
「迷子になって手を煩わせるなよ」
そう言ってどこかに行こうとするセシルにセラは声をかける
「あ!!!セシル様!ありがとうございました!」
ひらひらと後ろ手に手を振りながら去っていく
その後ろ姿を見ていると、後ろから声をかけられる
「やっと見つけた」
セラの手をガシッと握る大きな手にドキリと心臓が跳ねて思わず振り向いた
「ダリル様・・・」
「セラ、置いていってすまない」
少し息切れして必死な顔で謝るダリルに少しホッとして微笑むセラ
「いえ、私がついて行かず申し訳ありません」
「良いんだ。すまない」
そんなやりとりをしているとマルコが近付いて声をかける
「セラ、見つかって良かった。ダリル様の顔が真っ青になったままでどうしようかと思ってたところだったんだ」
「え!そうなんですか?ご心配をおかけしました。」
ぺこぺこと頭を下げるセラに、ホッとして深く息を吐くダリル
「はぁ~~。変なやつに連れて行かれてないかと心配していたけど、良かった。」
「もー!子ども扱いはやめてください!私、成人済みですよ!」
腕を組んで横を向き怒ってる風に見せるセラにダリルは、すまない。と言って笑う
そんな姿を遠くから眺めるセシル
「兄上・・・?なぜセラとここに・・・?」
笑顔でダリルに笑いかけるセラと普段の兄には見ない目でセラを見る姿にチクリと胸が痛む
「まさか兄上・・・セラを・・・?」
何度も見てきた女たちの熱い視線と同じ視線を送るダリルを見て、ギュッと拳を握るセシル
しかしその場に行くことなく、人混みに紛れて去っていった
「さぁ、さっきまでの時間を取り戻すために進もうか。」
「はい!」
ダリルの言葉にセラが元気よく言うと、スッとセラの前に大きな手が出てくる
「?・・・ダリル様?」
「・・・また、迷子にならないように、な。」
視線を外し耳を赤くしているダリルを見てセラまで赤くなる
今日は顔が熱くなることが多いな。などと感じながら、セラはそっとダリルの手の上に自分の手を乗せる
ギュッと強く握られた手が
絶対離さないと言われているようで安心する
「では行こうか。」
「はい!」
ゆっくり歩いて行く二人の後ろでマルコは口を大きく開ける
「ジャ・・・ジャン・・・今あの二人・・・手を・・・」
後ろを向くとジャンが山ほど食べ物を持って立っている
その姿にまた口を開けるマルコ
「なんですか?」
ジャンは口に入れた肉を頬張りながらしゃべるとマルコは呆れた顔をする
「お前は心配事がなさそうで羨ましいよ」
そう言いながら前を見る
「・・・あれ?」
「マルコ様・・・ダリル様、見失いました。」
その言葉に二人はサーッと青くなる
「あれ?」
「どうした?」
後ろを振り返るセラにダリルは聞く
「マルコ様とジャンさんがいないです」
「まぁ・・・良いだろう。またすぐ会えるさ」
「え、でも・・・」
心配そうなセラにダリルは笑いかける
「それより、他におすすめの露店はないのか?」
「そうですねぇー」
ダリルの質問にうーんと考えるセラ
その時
ヒュー・・・・・・ドンッ
空に輝く光の大輪が広がり、
夜市のざわめきが一瞬、遠のいた。
「これは・・・」
「これです・・・これを、見せたかったんです」
そう言ってセラはダリルを見る
「今年の夜市は王族に生まれたお子様の為に、例年より盛大で花火が上がるって聞いてたんです」
ドンッドンッと身体の奥から響く振動と、美しい光がセラとダリルを照らす
「とっても綺麗ですよね」
微笑むセラと空の大輪がリンクしているように光って見えて眩しい
「あぁ・・・とても綺麗だ」
繋いだ手が汗ばんでいる気がする
それを気にせず手を強くまた握る
あぁ・・・私はセラが・・・好きなんだ・・・
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