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ローズグリーン国
しおりを挟む・・・解放の時が来たのです・・・
解放の時?・・・
・・・フォンテーネを人に・・・
人に、なんだ!
・・・力は・・・あなたに授けます・・・精霊王よ・・・・
揺蕩う夢の中で何かが語りかけて来る。
それは、ずっと昔から知っているような、知らないような。
そんな声だった。
・・・全ては心が教えてくれます・・・
そう言われた途端目の前が眩しくなり、自分が目を覚ますのだとわかった。
「うっ・・・」
「兄様!!」
キラキラとした透ける髪に瞼が赤く腫れたフォンが視界いっぱいに入ってくる。
元々私の手を握っていたのか、フォンの両手が私の右手を握る力を感じて、現実と気づいた。
「・・・フォン・・・」
「はいっ!フォンはここにおります。」
「私は・・・生きていたのか・・・」
「数日眠っておられたのですよ。・・・本当に、本当に心配したのです。」
泣き腫らした大きな瞳から、枯れることなく大粒の涙が溢れていく。
だが、私の手はフォンの涙を拭ってやるだけの力がまだ出ない。
「心配致しました。フォレストさん。」
どこかに行っていたのか、フォンの側まで歩いてくるセシルは白いハンカチをフォンに渡してやる。
フォンはそれを受け取り涙を拭う。
「セシル様、どちらに行ってらしたの?」
「森がどうなっているか、と動物達が無事かね。」
ちゃんと森の中に居たよ。とフォンに優しく話すセシルと、一安心と顔を綻ばせるフォンを見て、私は一つ、決心する事が出来た。
「全ては心が教えてくれる、か。」
「?・・・兄様、どうされましたか?」
「いや、なんでも。」
翌日になると、私は元通り動けるようになった。
フォンの癒しの力もあるが、本来精霊は傷の治りが早い。
今回は打ちどころが悪く意識を失っていたようだったが・・・
「フォン」
「はい、兄様!」
パタパタと私に駆け寄ってくる愛おしい妹の手を取った。
「森を治そう」
「はい。」
私とフォンは森・泉の生命力を吸収し、それを倍増させて森を蘇らせた。
焼けた木の生きた場所からは新しい目が出始め、草花は芽吹く。
枯れ死んでしまった木たちは甦らないが、その木の周りに動物達が埋めていた木の実から芽がでる。
また数年・数十年後には立派な木となるだろう。
「これでまた、元の姿になりますね。きっと。」
「そうだな。」
幸せそうに笑うフォンテーネを見てから、私はセシルの方を見る。
「この度はすまなかった。そなたのお陰でフォンが怪我せずに済んだ。礼を言う。」
「そんな!僕は身体が勝手に動いただけでっ」
目をキョロキョロと動かし照れ笑いをするその姿に、自然と笑ってしまった。
なるほど、フォンが慕うのもわかる気がする。
セシルは万民に好かれるような人間だろう。
森も、妖精も動物までにも。
「まぁ!兄様が声を出して笑うなんて!とっても珍しいです!」
興奮気味に私を見てくるフォンの手を引きギュッと抱きしめる。
「兄様?」
キョトンとした顔で私を見上げる妹フォンテーネ。
「フォン、お前はこのセシルと共にいるのだ。」
「え・・・」
私は普段隠している背中の羽根を出し、フォンを置いて高く飛び上がる。
私が空に手を伸ばすと太陽の光が私を照らす。
すると2m程の木で出来た杖が私の手の中に出てきた。
すると、精霊として着ていた服と違う、上質な素材で出来た威厳ある装いに変わった。
そしてフォンとセシルの前に戻る。
「私は森の精霊王フォレスト。自然を司る神から賜ったこの力をフォンテーネ、お前に使おう。」
「え、えっ!兄様。 王?私達は森の精霊で・・・えっ?!」
パニックになったフォンとは打って変わってセシルは私に跪く。
「精霊王だったのですね。数々のご無礼をお許しください。」
「妹をその命に代えても守ると誓えるか?」
「勿論です。 何があろうと私はフォンテーネ嬢・・・いえ、フォンテーネ姫をお守り致します。」
「・・・その言葉信じよう。 フォンテーネ。」
「は、はいっ!!」
ボーッと我々のやりとりを見ていたフォンテーネは慌てて私の前に来る。
「驚かせたな。」
「はい・・・これはどう言う事なのですか?」
「私が気を失っている時に、森の神が出て来た。」
「森の神様・・・」
「あぁ。私たちの今までをご覧になっておられたんだろう。私を森の精霊王にしてくださった。」
「まぁ・・・」
フォンは目を大きく開いて驚いている。
「フォン、お前のセシルへの気持ち、未来永劫変わらぬか?」
「はい、長い年月を過ごして参りましたが、この方を超える方は居られません。」
「そうか・・・ところで、フォンテーネ。お前、私に隠している力があるな。」
「ぁ・・・はい。」
フォンは、緊張からか1度深呼吸をして、両手をギュッと胸の前で握ると私の顔を見た。
「・・・私には、未来が視えます。」
「・・・やはり、か。」
「ご存知だったのですか?」
「いや、確信していたわけではないが、最近の・・・セシルが来た頃から様子がおかしかったから、何か隠しているとは思っていた。 精霊王となる時、神がフォンには異なる未来を見せたと仰っていた時に腑に落ちたのだ。」
「そうだったのですね・・・だから、私の視えていた未来と違っていたのですね。」
ホッとしたような。
悲しいような。そんな表情のフォンにセシルが優しく問うた。
「どんな未来になる予定だったのですか?」
「私が視た未来では、私がセシル様と一緒に森を出た後、兄様の感情が昂りその時山から降りてきたオオカミが私に襲いかかり、それをセシル様が助けて下さるのですが、私はその際に深傷を負い命が尽きるのです。 しかし、兄様はセシル様に私への忠誠を感じこの森を含む一帯の責任者。つまり一国の王となる事を。それが、未来永劫この森が生き続ける方法だと、視えたのです。」
瞳を潤ませながらも芯のある視線はまさにそれを信じていた瞳だった。
「そうか、辛い決断をさせてしまうところだったのだな。」
「いえ、森や泉、兄様や妖精、動物達の為ならば悲しい事ではございません。 ですが・・・」
フォンはセシルを見ると頬を紅く染め下を向いた。
「実際にお会いしたセシル様をこのように慕うようになって、初めて死を怖いと感じてしまったのです。」
それを聞いたセシルもまた顔を染める。
「ぼっ!・・・私も、フォンテーネ姫を炎の中失ってしまうかも知れないと思った時はとても怖かったです。生きていてくださり本当によかった。」
「セシル様・・・」
2人の視線がまるで花の蜜のように甘くなる。
・・・私は一つ咳払いをして、空気を戻した。
「フォン。私はお前を失ってまで森を維持したいとは思っていない。 だが、フォンの気持ちもまた有難い。 そこで私はフォンとセシルに信頼の証として命を下す。」
「はっ、はい。」
「なんなりとお申し付けください。精霊王。」
フォンテーネとセシルは深く跪き命が下されるのを待つ。
「まずはフォンテーネ、立ちなさい。」
「はい・・・」
立ち上がったフォンは私の顔をじっと見つめる。
「フォン、未来永劫お前を忘れぬ。幸せになりなさい。」
「・・・え?」
私はそう言うとフォンにかざす様に杖を振る。
するとフォンはキラキラとした黄金の輝きに包まれる。
『精霊として宿し全ての力を捨て、人となれ』
そう唱えると輝きが消え輝きから出てきたフォンは、金や銀の装飾が付いた艶のあるドレスを身に纏っていた。
「兄様・・・」
「幸せになるのだ。これからは人として、想い慕う相手と共に。」
「・・・はぃ」
涙を流しながら私に抱きつくフォンを優しく包む。
これが最後となるだろう。
これからは私ではなくセシルがフォンを包み守るのだから。
「セシルよ。」
「はっ。」
「森の精霊王フォレストの妹姫フォンテーネを生涯愛し、共に暮らすのだ。 この森の外の一国の主として。」
「精霊王のご意志に従います。」
「うむ。・・・この森の外一帯に1つ国を作ろう。国の名はローズグリーン国!!」
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