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王妃様付き

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「ごめんなさいね。王様が言葉足らずだったようなの。」
「夫人、申し訳ない。私も少し勘違いをしていたようだ。」
「いえ、・・・あの。私はどうすれば良いのでしょう?」
もしかして、王宮勤めでは無くなるのかしら?
そうしたらどうしましょう。
まぁ、前世の経験もあるから、どこか住み込みで仕事を探したりするしかないかしら。
伯爵夫人、と言えども元だし。
実家は兄の代に代わっているから頼るわけにはいかないし・・・
まぁ、身分的には伯爵元夫人。元伯爵令嬢だから、お金にとても困っているわけではないけれど・・・

うーんうーん。と考えていると王妃様に一先ずソファーに座るように促される。
そして、侍女たちは下がるように言われ、室内には王様と王妃様と私の3人になった。

「あのね、ステラ。貴女にはわたくしの身の回りのお世話も少しは頼みたいとは思っているけれどそうじゃなくて、貴女には わたくしの友人、話し相手となって欲しいの。」
「話し相手、ですか?」
「ええ。そう・・・」



王妃様の話を聞くと、王妃様と王様は従姉弟いとこ同士で幼い頃から決められた完全な政略結婚だそうで、王妃様の方が王様より5歳年上。
この王室をより強固なものにする為に従姉弟と結婚したものの、なかなか子どもに恵まれず痺れを切らしたノーマン公爵とカルナーレ侯爵と言う2人の大臣が王様に2名の側室を選んで連れてきた。
それもお互いが都合の良い家柄の娘達で、ノーマン公爵の連れてきた側室、メリル様はノーマン公爵と懇意にしている侯爵家の娘。
カルナーレ侯爵の連れてきた側室、リズ様は侯爵の弟の娘を。
側室達は姫や王子を産み、それぞれの務めを果たし、各自の地位を確立している。
そして、その2人は王妃様の座を狙っているのだ。
どちらも王子様がいる為、このままではどちらかの子に王座が渡る事になる。
2人の大臣は確かに仕事は良くできるが、その地位に満足しておらず、あわよくば自分の選んだ側室の子を王に据えて自分やその子ども達を次の王様の側近に、と考えているらしい。

王妃様は何度か妊娠はしたものの、妊娠の度に誰かはわからないものの階段から突き落とされたり、部屋にや食事にネズミや虫を入れたりと嫌がらせを受けた。
元々身体が弱いことも重なり心労からか流産を繰り返していた。
そんな折、今回の妊娠が分かった。
「おそらく嫌がらせや階段から突き落としたのは側室達です。ですが証拠が掴めず未だ側室の地位を与えています。わたくしの年齢的にもこのお腹の子はどうしても産みたい。できる事であれば王子であって欲しいですが、もうそのような高望みもしていません。5ヶ月前、わたくしの元にやって来てくれた、このお腹の子さえ産まれてくれるならば。」
そう言って王妃様はふんわりとしたドレスの上からお腹を撫でる。
「王妃の心労を少しでも癒してあげたいのは山々なのだが、私も公務があり忙しい。側室達に非があるとわからぬ今、夫として情けないが表立って私がしてやれないのだ。」
「良いのです、王様は王様のお立場というものが御座いますもの。嫌々と言えども、この国のため側室との寝夜もまた理解しておりますわ。」
項垂れている王様の膝の上にある手を王妃様はギュッと握る。
王室とは、私の想像をはるかに超えている。
愛や権力が蠢いているのだ。
私のように夫から一身に愛を受けた者は王妃様や側室の方々よりずっと幸せなのかもしれない。
そんな事を考えていると、王様や王妃様と目が合った。

「そして、この様な状況の中、わたくしは貴女の事を知り、ぜひ私の元に来てもらいたいと思ったのです。」
王妃様の慈愛のこもった笑みがこちらに向く。
「あの、それで・・・私は王妃様のお話相手、との事ですが・・・私は残念ながら子を身籠ったことも御座いません。そんな私がその様な大役が務まりますでしょうか?」
「勿論です、ステラ。貴女もご存知の通り、わたくしには多くの侍女や公爵・侯爵夫人が仕えてくれています。ですが、皆子育てを終えた者ばかりです。出来る事なら年が近い・・・妹のような者を近くに置きたかったのです。」
「王妃様・・・」
周りはみんなご自身よりもずっと年上の侍女ばかりで、側室は言わば敵。
きっと何度も不安と重圧に潰されそうになったんだろう。
その様な経験をしたことが無い私でも簡単にわかる事だ。
それでも王妃様はそのお立場故にいつも笑顔で、そして凛としていなければいけない。

「それに私は今日貴女を見てとても気に入りました。その髪色も容姿も、内から溢れる気品も。まさにわたくしの求めていた女性です。貴女さえ良ければ、わたくしに仕えて欲しいわ。」
そう言って王妃様は向かいに座っていた私の方に座ってギュッと手を握った。
それに援護するように王様から声を掛けられる。
「王妃は幼い頃から大人とばかり接していてね。夫人、どうか王妃の友となってくれ。」
「・・・元々お仕えするつもりで来ましたので、私で宜しいのなら。王妃様の友人になります。」
思っていた立場とはえらく違うけれど、根本的な部分ではきっと変わらない。
身も心も健やかにして差し上げたいと願っているのだから。

「まぁ!嬉しいわステラ。では、先程言ったように、わたくしの事はサーシャと呼んでね。」
「はい、サーシャ様」
「うふふ。まぁそれで良いわ。」
嬉しそうに私の手を握りブンブンと振る王妃様は年齢よりもずっと幼く感じた。

「王様も、私の友として扱ってくださいね。 王様もわたくし同様に『夫人』ではなくステラと呼ばれては如何ですか?」
「えっ!?」
それは、良いのかしら?
「ふむ・・・なるほど。元々夫人は私の友人の妻である訳だし、友人の妻は友人と言うことだな。では、私も親しみを込めて夫人ではなくステラと呼ぼう。」
名案だと言うように王様と王妃様は2人で納得してしまった。
「あの、そのような事。王様と王妃様が許されても、周りの方々がお許しにならないのでは・・・」
規律を重んじる貴族がただの元伯爵夫人にそれを許すだろうか。
「ステラ、友人に階級は必要ではないの。心が友となる事を望んでいるのだから、貴女はわたくし達の友ですよ。」
「そう・・・ですよね。」

なんだか無理矢理納得させられたような気もするけど、まぁ良いか。


その後王様は公務に戻られ、王妃様も久しぶりに沢山お喋りしたからとお休みになられると仰ったので、私は王妃様のお部屋から下りこれから自分の部屋になる場所へ侍女に案内された。
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