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淡くて儚い
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「サーシャ様、旦那様がお呼びで御座います。」
「わかったわ。」
コンコンッ
「お父様、サーシャです。」
「入りなさい。」
「失礼致します。」
お父様の部屋に入ると、お父様は自分の机の前に広げた紙を手に持ち私に近づいてきた。
「お父様?何でしょう?」
「お前。慕っている者がいるな?」
「っ!!」
狼狽えつつも何も言わない私の目の前に手に持っていた紙を突きつけてきた。
「これは、宰相の息子からの手紙だな。」
「っ!?な、何故それをお持ちなんですか!?」
「私がお前の行動を知らぬとでも思ってるのか?」
「・・・いいえ・・・」
朝食時にでも落としてしまって、それを拾った侍女の中の誰かがお父様にこの手紙を渡したんだろう。
「お前と宰相の息子は恋仲なのか?」
「いえ・・・私が一方的に慕っているだけです。ですが、いつかアルヴィン様とそのような関係になれたらと」
「それはありえん!!」
普段温厚で声を荒げることのないお父様が私の言葉に被せるように怒鳴って思わず身体が硬直してしまった。
「お前は、お前には王子・・・クラウスがいるではないか!」
「クラウスは弟のようなものです!何故今クラウスが出てくるのですか?」
全く話に関係のない筈のクラウスが出てきてサッパリ意味がわからない。
「それに、お手紙の内容からアルヴィン様も私の事を好きと思って下さっているかも知れない・・・と思いました。 宰相様の御子息ならば、この家の家格ともそう引けを取りません。何故お父様はありえないとおっしゃるの?」
「宰相の息子アルヴィンはお前が思っているような若者ではない。それに、あの家にお前をやるつもりはお前が産まれる前からなかった。お前は幼少の頃・・・クラウス王子様がお産まれになった時からこの国の王妃となる為に育ってきたのだ。」
「そんなっ・・・私の気持ちはどうなるのですか?!クラウスは弟としか思っておりません!それにクラウスはまだ幼く、私とそのような関係になると思ってもおりませんわ!」
「・・・とにかく、アルヴィンとはもう会うことは許さぬ。お前は暫く部屋から出てはならん。」
そう言ったきりお父様は侍女に部屋に戻すように言い私は部屋から出る事を許されなかった。
部屋に閉じ込められて数日後、クラウスが私の元にやってきた。
コンコンッ
「サーシャ、僕だよ。クラウスだよ。入ってもいい?」
「今は会いたくないわ。」
大体、誰にも会わないように部屋に入れられているのに、どうしてクラウスは許されるの?
私と将来結婚すると決められているのを知らないの?
「僕、サーシャと話をしに来たんだよ。」
「私は話す事ないわ。」
一国の王子に対していくら従姉弟だからって本来なら許されない言葉遣いだけれど、私とクラウスはそれが許される。
それだけ長く一緒に育ってきたから。
「僕は話したい。サーシャ、王子の命令だよ。」
「っ!!ずるいわ!」
普段そんな事言わないくせに。
命令と言われてしまえば従うしかない。
5歳も年下のくせに!
苛立ちながらも身体は動く。
そう教育されたから。
「・・・・そんな顔しないでよ、サーシャ」
「命令なんてずるいわ」
「ごめんね。でも開けてくれた。」
「・・・早く入って。」
「うん。」
クラウスはニコッと笑ってパタパタと部屋に入る。
そして、勝手知ったる部屋の中を歩いて行きソファーに座る。
「サーシャも座って。」
「言われなくても座るわ。」
向かいの椅子に座ると、ソファーに来るように言われ、仕方がなく隣に座る。
「一体何のようですか?王子様。 私今父に軟禁されているのです。父に見つかれば叱られかねませんので手短に話をして下さいませ。」
嫌味ったらしく外で使うような言葉遣いで話す。
まだ10歳にも満たない子に当たる私にクラウスは変わらずニコニコしている。
「それは心配しなくて良いよ。だって叔父上には許可をとってるからね。」
「え・・・」
お父様・・・
勝手な事ばかりしているお父様に苛立ちながら、クラウスの方を見る。
「ねぇ、サーシャ。僕と結婚するのは嫌?」
「!?・・・どうして・・・」
クラウスは知ってるの?
私と将来結婚する事を。
「僕はね、幼少の頃からサーシャと結婚すると思ってたよ。」
まぁ、今も子どもなんだけどっと笑うクラウスは妙に大人びて見えた。
「嫌じゃないの?将来好きな人が出来るかもしれないのよ?それに私は貴方より5歳も歳が上だし。姉弟のように育った相手なのよ?」
捲し立てて話す私の方がずっと子どものよう。
だけれど聞かずにはいられなかった。
「もちろん、そんな人が出てくるかもしれないけど・・・今はそんな人いないし。よくわからないや。」
えへへっと無邪気に笑うクラウスはまだまだ幼くて、この子が本当に大人になるのかしら・・・と不安になった。
でも次の瞬間にクラウスが見せた儚げな笑顔は、紛れもなく大人へと成長させている気がした。
「僕はね、父と母の子どもである前に王子でないといけないんだ。第一王子とは、この国を守る為に幼い頃から教育を受けてこの国に住む人々を守れるように文武両道でなくてはならない。 利益や自分の贅沢ばかりに溺れている臣下に隙を見せてはならない。いつ王位を狙われるかもわからないからね。 それに、僕の結婚はそういう事の恰好の餌食だ。サーシャ、君は大公の娘で君も生まれながらに王族の家系だから、僕たちの結婚がどのようになるか、何となくわかるよね?」
「・・・・」
認めたくないけど、心のどこかではわかっていた。
だけど認めたくなかった。
他の貴族の令嬢も政略結婚は良くある。
だけれど、それなりに希望が通る子もいる。
私も全てが無理でもこれだけは通ると、傲慢にも思った。
自分が王族の家系であるというのに・・・
そう考えたら悲しくて、ポロポロと涙が溢れてきた。
そんな私にクラウスはハンカチを手渡してくれた。
もう、どちらが年上かわからない。
「わかったわ。」
コンコンッ
「お父様、サーシャです。」
「入りなさい。」
「失礼致します。」
お父様の部屋に入ると、お父様は自分の机の前に広げた紙を手に持ち私に近づいてきた。
「お父様?何でしょう?」
「お前。慕っている者がいるな?」
「っ!!」
狼狽えつつも何も言わない私の目の前に手に持っていた紙を突きつけてきた。
「これは、宰相の息子からの手紙だな。」
「っ!?な、何故それをお持ちなんですか!?」
「私がお前の行動を知らぬとでも思ってるのか?」
「・・・いいえ・・・」
朝食時にでも落としてしまって、それを拾った侍女の中の誰かがお父様にこの手紙を渡したんだろう。
「お前と宰相の息子は恋仲なのか?」
「いえ・・・私が一方的に慕っているだけです。ですが、いつかアルヴィン様とそのような関係になれたらと」
「それはありえん!!」
普段温厚で声を荒げることのないお父様が私の言葉に被せるように怒鳴って思わず身体が硬直してしまった。
「お前は、お前には王子・・・クラウスがいるではないか!」
「クラウスは弟のようなものです!何故今クラウスが出てくるのですか?」
全く話に関係のない筈のクラウスが出てきてサッパリ意味がわからない。
「それに、お手紙の内容からアルヴィン様も私の事を好きと思って下さっているかも知れない・・・と思いました。 宰相様の御子息ならば、この家の家格ともそう引けを取りません。何故お父様はありえないとおっしゃるの?」
「宰相の息子アルヴィンはお前が思っているような若者ではない。それに、あの家にお前をやるつもりはお前が産まれる前からなかった。お前は幼少の頃・・・クラウス王子様がお産まれになった時からこの国の王妃となる為に育ってきたのだ。」
「そんなっ・・・私の気持ちはどうなるのですか?!クラウスは弟としか思っておりません!それにクラウスはまだ幼く、私とそのような関係になると思ってもおりませんわ!」
「・・・とにかく、アルヴィンとはもう会うことは許さぬ。お前は暫く部屋から出てはならん。」
そう言ったきりお父様は侍女に部屋に戻すように言い私は部屋から出る事を許されなかった。
部屋に閉じ込められて数日後、クラウスが私の元にやってきた。
コンコンッ
「サーシャ、僕だよ。クラウスだよ。入ってもいい?」
「今は会いたくないわ。」
大体、誰にも会わないように部屋に入れられているのに、どうしてクラウスは許されるの?
私と将来結婚すると決められているのを知らないの?
「僕、サーシャと話をしに来たんだよ。」
「私は話す事ないわ。」
一国の王子に対していくら従姉弟だからって本来なら許されない言葉遣いだけれど、私とクラウスはそれが許される。
それだけ長く一緒に育ってきたから。
「僕は話したい。サーシャ、王子の命令だよ。」
「っ!!ずるいわ!」
普段そんな事言わないくせに。
命令と言われてしまえば従うしかない。
5歳も年下のくせに!
苛立ちながらも身体は動く。
そう教育されたから。
「・・・・そんな顔しないでよ、サーシャ」
「命令なんてずるいわ」
「ごめんね。でも開けてくれた。」
「・・・早く入って。」
「うん。」
クラウスはニコッと笑ってパタパタと部屋に入る。
そして、勝手知ったる部屋の中を歩いて行きソファーに座る。
「サーシャも座って。」
「言われなくても座るわ。」
向かいの椅子に座ると、ソファーに来るように言われ、仕方がなく隣に座る。
「一体何のようですか?王子様。 私今父に軟禁されているのです。父に見つかれば叱られかねませんので手短に話をして下さいませ。」
嫌味ったらしく外で使うような言葉遣いで話す。
まだ10歳にも満たない子に当たる私にクラウスは変わらずニコニコしている。
「それは心配しなくて良いよ。だって叔父上には許可をとってるからね。」
「え・・・」
お父様・・・
勝手な事ばかりしているお父様に苛立ちながら、クラウスの方を見る。
「ねぇ、サーシャ。僕と結婚するのは嫌?」
「!?・・・どうして・・・」
クラウスは知ってるの?
私と将来結婚する事を。
「僕はね、幼少の頃からサーシャと結婚すると思ってたよ。」
まぁ、今も子どもなんだけどっと笑うクラウスは妙に大人びて見えた。
「嫌じゃないの?将来好きな人が出来るかもしれないのよ?それに私は貴方より5歳も歳が上だし。姉弟のように育った相手なのよ?」
捲し立てて話す私の方がずっと子どものよう。
だけれど聞かずにはいられなかった。
「もちろん、そんな人が出てくるかもしれないけど・・・今はそんな人いないし。よくわからないや。」
えへへっと無邪気に笑うクラウスはまだまだ幼くて、この子が本当に大人になるのかしら・・・と不安になった。
でも次の瞬間にクラウスが見せた儚げな笑顔は、紛れもなく大人へと成長させている気がした。
「僕はね、父と母の子どもである前に王子でないといけないんだ。第一王子とは、この国を守る為に幼い頃から教育を受けてこの国に住む人々を守れるように文武両道でなくてはならない。 利益や自分の贅沢ばかりに溺れている臣下に隙を見せてはならない。いつ王位を狙われるかもわからないからね。 それに、僕の結婚はそういう事の恰好の餌食だ。サーシャ、君は大公の娘で君も生まれながらに王族の家系だから、僕たちの結婚がどのようになるか、何となくわかるよね?」
「・・・・」
認めたくないけど、心のどこかではわかっていた。
だけど認めたくなかった。
他の貴族の令嬢も政略結婚は良くある。
だけれど、それなりに希望が通る子もいる。
私も全てが無理でもこれだけは通ると、傲慢にも思った。
自分が王族の家系であるというのに・・・
そう考えたら悲しくて、ポロポロと涙が溢れてきた。
そんな私にクラウスはハンカチを手渡してくれた。
もう、どちらが年上かわからない。
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