【R-18】気がついたら未亡人伯爵夫人になってて後宮で愛された

譲位の儀式

「父上・・・いや、王様。サーシャの王子妃の座と譲位がどう繋がると言うのですかっ？！」
「落ち着くのだクラウス。余の話をしかと聞くが良い」
「・・・はい。」


それから王様は私わたくし達に考えを教えてくださった。
王様が曰く、今回この譲位の話を最初に持ち出したのは王様自身ではなく王妃様からの提案らしい。

王子妃と言う立場上、王妃よりも色んな人と触れ合う機会も多く様々な事に巻き込まれやすい、また側室との距離も近い故に側室からの嫌がらせ等も受けやすい。
王妃となれば、今よりもずっと周りを固められて安全に子を産み育てられるだろうと提案してきた事だと言う。
王妃様自身も王子妃時代に沢山巻き込まれて来たからこそ王様にそのように話されたらしい。
だけれど、クラウスも私わたくしもまだ若く、国政を担っていくにはまだまだ未熟。
だから、この王宮に留まり先王・王太后としてクラウスと私わたくしが1日も早く立派に国政が行えるようにしようと考えてくださっていた。
「王妃様が・・・」
「王妃は誰よりもサーシャを大切に思っているからこそ、今回思い切った事を言ってきたのだ。全てはそなたが安心して子を産めるようにと考えての事だ。」

「・・・っ。」
深い愛情に言葉が出てこない。
そんな私わたくしの肩をクラウスはギュッと抱いてくれた。
「王様・・・。私王子クラウスは、王様と王妃様の深い愛情を受け、今まで以上にこの国の為、この国に住む民の為に誠心誠意王としての努めを果たすと誓います。」
「王子妃サーシャ、王子様と同じく誠心誠意務めを果たす事を誓います」

「うむ・・・その言葉しかと胸に刻むのだ。」
「「はいっ！」」
クラウスと私わたくしは期待に応えるように大きく返事をした。
それをみた王様はうんうんと頭を縦に振り次にお父様の方を向く。

「我が弟バルトよ・・・」
「兄上・・・」
「そなたの大事な娘を守ると約束していたにも関わらず、幾度となく辛い思いをさせてしまった。許して欲しい。」
「何を仰るのです！王様である兄上と王妃様である義姉上が支えて下さったからこそ今の私とサーシャがあるのです。どうか謝らないで下さい。」
「そう言ってくれて感謝する。　余と王妃がこれからもサーシャを支えるから、そなたもクラウスをどうか支えてやってくれ。」
「もちろんで御座います」
「うむ。　では、譲位の儀式についてはまた王妃も含めて話し合うとしよう。」





それから2ヶ月と言う短い期間で譲位の話は固められ、クラウスへ王位を譲位する儀式が行われた。
私わたくしが子を産む前に儀式を急いだのは、もちろん子が姫であった場合に備えての事だった。
王妃となってから産まれた子が姫であっても私わたくしの地位が揺らぐ事は余程の事がない限り殆どない。
そして、それは私わたくしの産んだ子を守るためでもあるからだ。



今、まさにクラウスは譲位の儀式に挑んでいる。
大勢の貴族が入る大広間の1番奥に10段程の緩やかな階段がありその上には王様と王妃様の座る玉座がある。
重たい王冠を付けた王様と絢爛豪華なドレスに身を包んだ王妃様が玉座に立ち、クラウスが玉座に上がって来るのを待っている。
私わたくしはその玉座のある階段の下で入り口から歩いて来るクラウスを待つ。

クラウスはゆっくりと玉座に向かって進んできて私わたくしの前まで来ると、私わたくしの手を取り一緒に階段を上がり王様の前に2人で跪く。
王様は王冠を取りクラウスの頭にゆっくり載せた。
王妃様も私わたくしの前にきて私わたくしの頭に煌びやかなティアラを載せる。
このティアラもクラウスの王冠は、この国を開国した初代の王様と王妃様から代々受け継がれてきた物で、ティアラの真ん中にはこれまで見た事がない位美しい水晶が埋まっている。



そして王様と王妃様が貴族の方を向き、王様は大きな声をあげる。
『この瞬間を持って余は王位を譲位し、クラウスがこの国の王となる！！！』

わぁっ！！！と歓声が響き渡り至る所から新しい王の誕生を喜ぶ声が上がった

クラウスと私わたくしは立ち上がり、貴族達に手を振りそのまま大広間を出て国の民が集まっている広場がよく見えるバルコニーに出た。
すると、こちらも大きな声で「王様ー！王妃様ー！！」と歓声が聞こえて来る。
私わたくし達は大きく手を振り、クラウスは大きな声で民に声をかける。

「我が国の民よ！！今日から王となったクラウス・ローズグリーンだ！！！我が妻であり王妃サーシャ・ローズグリーンと共にそなた達民の声を聴き、より良い国にしたいと思っている！！！」

わぁぁぁ！！！！


クラウスの言葉を聞き民の声が更に大きく盛り上がる。
私わたくし達は暫くしてそこで民の様子を見た後、バルコニーを後にした。