落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける

ディエゴ

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包囲されたはじめての街

1590年4月3日・異界の文殊菩薩

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館に戻り、暫くすると、仕事を終えたらしい雄二が帰ってきた。

二人だけで相談したいことがあると伝え、夕食を食べながら話すことにした。

雄二には、現代での俺・孝太郎が、”お頭”であり”兄者”である自分に宿っていることをある程度知って貰わなければならないと考えていた。

これからやろうとしていることは、”南蛮人から仕入れた知識”で全て片付けられる程、些末な事ではない。協力者の存在は必須だからだ。

「今日一日、夕に城下を案内してもらったが、どうやら、俺の記憶混濁というか記憶の喪失の原因がわかった。」

『単なる、疲労じゃなかったのか?』

「あぁ、こんな話信じられないかも知れないが、今の俺の意識にはどうやら別の人間の意識というか知識のような物が入り込んでいるみたいだ。その所為せいで以前の俺の記憶が一部抜け落ちてしまったんだと思う」

『な?なんだ、そりゃ 別の人間の意識が混ざった?確かに信じられないが、それだったら、坊主でも呼んで祈祷でもしてもらうか? もっとも、兄者に信仰心なんてものがあるとはとても思えないけどな』

「ははは、確かにな。それにな、悪い事ばかりじゃないんだ。この別人、物凄い知恵者なんだよ。今日、鋳物師の所で大筒を見たんだが、改良点が直ぐに頭に浮かんできた。それに、城内の物資で今までにない威力の武器が製造できそうなんだ。」

『なんと!それは凄いな。しかし、そんな得体のしれない話を信用して良いのか?仮に俺が信じたとしても、大筒の改良なんて御屋形様の了解を得ないと始まらないぞ』

「俺は信じて良いと確信してる。その人のいた世界の情景も一部流れ込んできたが、俺達のこの世界より明らかに技術の進歩した世界だった。その世界ではな、鳥より速く人間が空を飛んでる。飛び魚より早く人間が海を越えてた。丘でも馬なんかよりずっと早く人間が移動してた。」

『・・・ホントか!』

「あぁ、最初は俺も目を疑ったが、意識として流れ込んでくるので否定できん。俺の中の別人は何て言うか、さしずめ異界の文殊菩薩とでもいうような人だ」

『兄者から菩薩なんて言葉が出ててくるとは思わなかったぞ』
『まあ、兄者がそこまで言うなら評定に出て意見具申してみるか?』

「いや、評定はまずいだろう。こんな与太話。あんな大勢に理解してもらえるとは思えん」

本当は『北条は城内から裏切り者が出て敗れた』という木内館長代理の言葉が気になっていた。

「親方様と俺達、三人だけで話をする方法はないかな?」

『忍び仕事で手に入れた極秘情報とかなら、秘密裏に御屋形様に報告を上げることはあるが、大筒の改良とか新兵器となると・・・・・
そうだ、兄者は南蛮船で帰って来ただろ。船内で手に入れた南蛮人の中でも一部の者しか知らない、最新の機密情報ってことにして御屋形様に直接話すか?』

「異界の文殊菩薩より、全うそうな情報だな それで親方様との密会を手配してくれるか、雄二?」

『わかった、やってみる。』

(史実での小田原陥落まで、あと94日)
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