落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける

ディエゴ

文字の大きさ
21 / 66
包囲されたはじめての街

1590年4月15日・鬼煙の採取開始

しおりを挟む
重伍から、鬼涌谷で鬼煙(硫化水素)の採集を開始するとの連絡があり、雄二と共に現場を視察することになった。

重伍によると、敵の夜間の峠道の通行が全くなくなったことと、昼間の通行が明らかに増えたのが決断の理由らしい。どうやら、狼をつかった襲撃作戦は上手くいったようだ。

ただ、硫化水素の噴出現場という大変危険な場所に、俺と雄二という風魔の首脳が二人同時に赴くことに、重伍からは危惧の意が示されたが、そんな危険を冒してまで視察する程に重要な作業であることを伝え、了承してもらった。

実際、小田原を勝利に導くには、この鬼煙の採取貯蔵こそが、最大の切り札になるのだ。その事を現場で作業する者にも重く認識してほしかったというのもある。

現場作業は全て風魔一党と三つ者によって行われる。なのでここでは、俺も風魔のお頭として顔を晒している。

因みに既に包囲が始まっている小田原城下だが、町人の恰好に変装を施したら、驚くほど簡単に城外に脱出できた。

この時代の包囲が現代人からすれば緩いのか、敵が圧倒的な優勢であるので油断しているのか、おそらく両方だな。

とはいえ、一応、敵の目を恐れて、現場までは藪、谷、崖と道なき道を行くのでかなりの強行軍である。現代の俺の体では絶対に不可能な行進だったが、先代様のこの体は、その程度は物ともしなかった。

さて、現場に来てビックリ。崖上から下に滑車とウインチがついた機械が5台設置されている。

重伍によると施工は三つ者が行ったという。毒に詳しいだけじゃなく施設設置も彼らはプロだという。ウインチも滑車も少なくとも俺は教えた覚えがないが、三つ者は、どうやってそんな技術を習得したのかな?なんともチートな集団だ!

そんな凄い人達がいながらなんで滅亡したんだろうね武田家?「甲斐の虎」って異名だったらしいから虎人族だったのかね?フシギ!

重伍から聞いた施工までの手順はこうだ。

1.縄の先に鼠を縛り付けて垂らす。
  縄伝いにわかる暴れる鼠が静かになったら、その地点が鬼煙の上端

2.次に鉛の重しを縄の先に縛り垂らす。
  縄が撓むようになったら下端、つまり地面である。

この測量の結果、鬼煙は崖下3mから存在し、地面までは約5mであることがわかった。

これを受けて木材(杉の木だそうだ)で、クレーンの大きさを決め設置、先端の滑車の先に甕を吊るし降下させて鬼煙を採集、ウインチで巻き上げて回収する設備が整ったとのこと。

ここまで説明を受けて、ようやく俺は問題に気が付いた。

硫化水素の比重はおよそ1.2だ。 空気よりは重いから崖下に甕を置けば確かに中に硫化水素は溜まるだろうが、80リットルもの大甕を満たすのに数日はかかるだろう。

運び人の安全を考慮して40リットルと見積もっても三日はかかる計算だ。

三日で甕5個=200リットル。硫化水素は水溶性だから梅雨前に出来るだけ確保して置きたい。

入梅まで、およそひと月弱、もう少しペースアップしたいところである。

と、この要望を三つ者に伝えたところ、クレーンをあと5つ増設してくれることになった。これで、採集量は二倍になる。

また、採集作業中の三日は見張り要員数名と護衛の狼使いに狼、危険探知役に籠に入れた鼠を置くことに決め、狼使いの護衛の下、採集場を後にした。

現代では絶滅している日本狼に会えたことでテンション爆上がりだったのはいうまでもない。
(史実での小田原陥落まで、あと82日)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記

糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。 それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。 かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。 ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。 ※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。

王国の女王即位を巡るレイラとカンナの双子王女姉妹バトル

ヒロワークス
ファンタジー
豊かな大国アピル国の国王は、自らの跡継ぎに悩んでいた。長男がおらず、2人の双子姉妹しかいないからだ。 しかも、その双子姉妹レイラとカンナは、2人とも王妃の美貌を引き継ぎ、学問にも武術にも優れている。 甲乙つけがたい実力を持つ2人に、国王は、相談してどちらが女王になるか決めるよう命じる。 2人の相談は決裂し、体を使った激しいバトルで決着を図ろうとするのだった。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

対ソ戦、準備せよ!

湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。 前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。 未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!? 小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!

大和型重装甲空母

ypaaaaaaa
歴史・時代
1937年10月にアメリカ海軍は日本海軍が”60000トンを超す巨大戦艦”を”4隻”建造しているという情報を掴んだ。海軍はすぐに対抗策を講じてサウスダコタ級戦艦に続いてアイオワ級戦艦を12隻建造することとした。そして1941年12月。日米は戦端を開いたが戦列に加わっていたのは巨大戦艦ではなく、”巨大空母”であった。 表紙はNavalArtというゲームの画像で、動画投稿者の大和桜花さんに作っていただきました

処理中です...