38 / 66
包囲されたはじめての街
1590年6月8日・箱根湯本の戦い4・半蔵参上part2
しおりを挟む
怪異二体はとうとう立ち上がり半蔵に向かってきた。その体躯は共に2メートルを超えており、二体とも片手には大きな棍を持っている。
棍の横凪!
いかに急所を痛めたとはいえ、こんな大降りにやられる半蔵ではない。上体を竦めてやり過ごし、横へ後ろへと距離を取ろうとする。
すると、怪異は今度は棍による突きを繰り出してきた。
下腹部を狙ってきたか?
さすがに二度も急所に喰らうのは拙い。
半蔵は鎧を脱ぎ捨ててきたことを少し後悔した。鎧があれば草摺という下腹部を防御する部位があるからだ。
その後も、二体による突き!横凪!の連撃に半蔵は防戦一方となってしまった。
が、実は半蔵はやられっぱなしではなかった。防戦と見せかけて周囲の音を探っていたのである。
そもそも半蔵は怪異など信じていない。幻術の知識もある半蔵は動き出した二体の仁王像を直ぐに傀儡使いの仕業だと看破していたのだ。しかもこの二体で一体かのような鮮やかな連携、傀儡使いは一人に違いない。
この近くに必ず操者がいる。こんな大きな木偶を緻密に操る以上、注意を逸らされないため傀儡使いは虫除けの類を使用している筈なのだ。
だが、先刻より虫の音のしない方角へ何か所か、逃げると見せかけて足を向けるが傀儡使いの気配すら見つけられない。
その結果、半蔵が得た結論は一つ!
墓石で出来た壁の向かって左側、早川への崖そばの草むらだ。
仁王像に押されてるように見せかけて、実は誘導していき、そして、ついにたどり着いた。
梅雨の虫の音の中で余程良く聴き分けないと分からないが、この場所だけ夏の虫エンマコオロギの鳴き声が混ざっていたのだ。
仁王像に背を向け、コオロギの鳴き声のした場所に右足でかかと落としを食らわせた。
『ぐえぇぇ・・・』
草むらから一人の男が姿を現した。踵は背中下を直撃したらしく腹下を地面に強打したのだろう、悶絶している。
そして男の手の指には10本とも夜間の保護色である黒い糸や縄が括り付けられていた。間違いない、こいつが傀儡使いだ。
「エンマコオロギにはちょっと季節が早かったな」
それにしても
「こんな位置から、あんな大きな木偶を操っていたのか。なんて凄腕の傀儡使いだ」
半蔵は思わずそう呟いた。その刹那!背中に極大の衝撃が走った。あまりの威力に吹き飛ばされながら振り向いたそこにいたのは、棍を横凪に払った二体の仁王像だった。
「馬鹿な?操者は倒した筈だ」
驚愕の眼差しを向けていると一体の仁王の顔がニヤリと揺れた。その口からは4本の牙がみえる。
「!!まさか、風魔の小太郎!?」
半蔵は信じていなかったが風魔小太郎には2メートルを超える巨躯と4本の牙が生えているという噂があったのだ。
崖から空中に放り出された半蔵は、小太郎と思われる化け物を睨みながら早川に転落していった。
(史実での小田原陥落まで、あと28日)
棍の横凪!
いかに急所を痛めたとはいえ、こんな大降りにやられる半蔵ではない。上体を竦めてやり過ごし、横へ後ろへと距離を取ろうとする。
すると、怪異は今度は棍による突きを繰り出してきた。
下腹部を狙ってきたか?
さすがに二度も急所に喰らうのは拙い。
半蔵は鎧を脱ぎ捨ててきたことを少し後悔した。鎧があれば草摺という下腹部を防御する部位があるからだ。
その後も、二体による突き!横凪!の連撃に半蔵は防戦一方となってしまった。
が、実は半蔵はやられっぱなしではなかった。防戦と見せかけて周囲の音を探っていたのである。
そもそも半蔵は怪異など信じていない。幻術の知識もある半蔵は動き出した二体の仁王像を直ぐに傀儡使いの仕業だと看破していたのだ。しかもこの二体で一体かのような鮮やかな連携、傀儡使いは一人に違いない。
この近くに必ず操者がいる。こんな大きな木偶を緻密に操る以上、注意を逸らされないため傀儡使いは虫除けの類を使用している筈なのだ。
だが、先刻より虫の音のしない方角へ何か所か、逃げると見せかけて足を向けるが傀儡使いの気配すら見つけられない。
その結果、半蔵が得た結論は一つ!
墓石で出来た壁の向かって左側、早川への崖そばの草むらだ。
仁王像に押されてるように見せかけて、実は誘導していき、そして、ついにたどり着いた。
梅雨の虫の音の中で余程良く聴き分けないと分からないが、この場所だけ夏の虫エンマコオロギの鳴き声が混ざっていたのだ。
仁王像に背を向け、コオロギの鳴き声のした場所に右足でかかと落としを食らわせた。
『ぐえぇぇ・・・』
草むらから一人の男が姿を現した。踵は背中下を直撃したらしく腹下を地面に強打したのだろう、悶絶している。
そして男の手の指には10本とも夜間の保護色である黒い糸や縄が括り付けられていた。間違いない、こいつが傀儡使いだ。
「エンマコオロギにはちょっと季節が早かったな」
それにしても
「こんな位置から、あんな大きな木偶を操っていたのか。なんて凄腕の傀儡使いだ」
半蔵は思わずそう呟いた。その刹那!背中に極大の衝撃が走った。あまりの威力に吹き飛ばされながら振り向いたそこにいたのは、棍を横凪に払った二体の仁王像だった。
「馬鹿な?操者は倒した筈だ」
驚愕の眼差しを向けていると一体の仁王の顔がニヤリと揺れた。その口からは4本の牙がみえる。
「!!まさか、風魔の小太郎!?」
半蔵は信じていなかったが風魔小太郎には2メートルを超える巨躯と4本の牙が生えているという噂があったのだ。
崖から空中に放り出された半蔵は、小太郎と思われる化け物を睨みながら早川に転落していった。
(史実での小田原陥落まで、あと28日)
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』
月神世一
SF
【あらすじ】
「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」
坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。
かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。
背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。
目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。
鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。
しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。
部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。
(……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?)
現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。
すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。
精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。
これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記
糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。
それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。
かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。
ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
王国の女王即位を巡るレイラとカンナの双子王女姉妹バトル
ヒロワークス
ファンタジー
豊かな大国アピル国の国王は、自らの跡継ぎに悩んでいた。長男がおらず、2人の双子姉妹しかいないからだ。
しかも、その双子姉妹レイラとカンナは、2人とも王妃の美貌を引き継ぎ、学問にも武術にも優れている。
甲乙つけがたい実力を持つ2人に、国王は、相談してどちらが女王になるか決めるよう命じる。
2人の相談は決裂し、体を使った激しいバトルで決着を図ろうとするのだった。
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
対ソ戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。
前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。
未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!?
小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!
大和型重装甲空母
ypaaaaaaa
歴史・時代
1937年10月にアメリカ海軍は日本海軍が”60000トンを超す巨大戦艦”を”4隻”建造しているという情報を掴んだ。海軍はすぐに対抗策を講じてサウスダコタ級戦艦に続いてアイオワ級戦艦を12隻建造することとした。そして1941年12月。日米は戦端を開いたが戦列に加わっていたのは巨大戦艦ではなく、”巨大空母”であった。
表紙はNavalArtというゲームの画像で、動画投稿者の大和桜花さんに作っていただきました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる