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包囲されたはじめての街
1590年6月9日・アルキメデスの熱光線
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やがて日が昇り、そろそろアルキメデス熱光線を開始しようかと思った頃、水軍側でも動きがあった。総勢1000艘といわれる大軍の大半を占める小型船には動きはないが、大筒を備えた安宅船では兵が慌ただしく動いてる。
この頃になると、川から海に流され水軍に救助された敵兵もいたことだろう。
そして、彼らから陸上の惨状が知らされたとしても不思議ではない。
『二曲輪殿、敵は大筒の準備をしているようです』
親方様の近習で今回借りた兵の統括をしている北条氏隆が言った。
彼は、俺が風魔であることを知らない。
「じゃあ、こっちも始めよう」
向かって左の長曾我部隊の安宅船に光を合わせるよう氏隆が指示を出す。
同時に狼煙を上げた。海側各隊に攻撃開始の合図である。
ここ本丸から水軍までの距離はおよそ600メートル程。
さすがに俺もアルキメデスのように本当に船を燃やすことができるとは思っていない。兵たちは光を一点に集中させるほどの練度には達していないし、そもそも、今は晴れているが昨日までは梅雨にさらされていたのだ、船体は湿ったままだろう。
この作戦の狙いは、光を合わせ敵兵に目くらましを喰らわす事にあった。
サッカーでPKやFKを蹴る選手の目に敵のサポータがペンライトの光をあてて妨害しようとしたりするが、今回俺が狙っているのも、同様な事である。
攻撃の本体は海側に陣取る部隊の大筒やバリスタに任せるのだ。
幸い敵の船は帆も上げず停泊したままである。しかも安宅船と周辺の小舟を縄で繋いでいる。海上封鎖には最良の方法だろうが、一方で安宅船さえ沈めれば小舟を巻き込むことができるだろう。
練度に不安があった氏隆隊だが、敵船が動かないのであれば、照準も合わせやすい。次第に光が長曾我部の安宅船に集まっていった。
船上の兵はあからさまに眩しそうな仕草をしている者、光を避け下を向いている者がいるのがここからでも分かる。
「ふ、ふ、ふ、ざまあみろ」
思わずそう呟いた時だった。
突如、長曾我部隊の安宅船が爆発した!
は?何故?理解できない。本物のアルキメデスでさえ船を燃やしたのであって、爆発させた訳ではない。
やがて沈んでいく長曾我部の安宅船、繋がっていた小舟も引きずられるように沈んでいくぞ。被害は隣の水軍衆にも及んだようだ。
隣で大型船が沈んだのだから、端の小舟は巻き込まれて沈んでいく。
長曾我部隊の両隣の隊の安宅船は船体の維持に努めていたようだが、やがて沈没した側の小舟群との縄を切り始めた。
海側の隊は突然の爆発に暫く固まっていたが、いち早く復帰したのは海側の大将氏照さんだった。早川口からいつのまにか指揮を執りに駆けつけていたらしい。
『何してる!大筒!、炮烙!撃て!撃て!撃て!』
ここまで聞こえそうな大声で指示している。さすがは氏照さん、頼りになる。
やがて、水軍側の大筒も用意が出来た船から順次発砲してくる。
大筒・新型炮烙玉 vs 大筒
の砲撃戦だ。
さて爆発の理由は未だ不明だが、氏隆隊の次の目標は向かって右から二番目の九鬼隊だ。氏隆曰く水軍の中では有名な存在らしい。
氏隆隊は慣れて来たのか光を合わせるのも素早くなってきた。
その間にも砲撃戦は続いてく。大破した安宅船から海に飛び込む兵も出始めた。北条方にも大筒の鉄球が落ちてくるが、命中精度はやはり竜堀を施した味方の大筒の方が上のようだ。
さて、熱光線もどきの第二のターゲットとなった九鬼隊の安宅船だが、なんと小舟との縄を切って逃げ始めた。長曾我部隊が爆発する前から小田原城内からキラキラ光が来るのは把握していただろうし、自分達が狙われると知れば爆発を恐れて逃げ出したとしてもおかしくはないか。
もっとも、氏隆は
『あの、九鬼殿が退却していく!』
と大いに驚いていた。
あの大きな安宅船を帆も上げすにすごい勢いで遠ざかっていく。
一体、何人の手漕ぎ手がいるんだろう?
この九鬼隊の退却を切っ掛けに、敵の水軍は一切に逃げに入った。
ちょうど、中央に帆をあげた安宅船がいた。手漕ぎ手が足りないのだろうか?
だが、帆が張られてる、アルキメデスの熱光線の活躍の場である。
直ぐにターゲットをその安宅船の帆に変更する。間抜けな事に敵は帆を先にあげたが、小舟との縄切に手間取っているようでまだ出航の気配がない。
そして、ついに、俺が待ちに待ったロマン砲の効果が現れた。
敵の帆から出火したのである!!
敵船上は大騒ぎになってるぞ。
俺はもう感無量だ。だって、あの古代の天才アルキメデスの偉業を再現したんだよ。
あ、消火をあきらめて小舟に退げていく。やはりあの安宅船は漕ぎ手が少なく帆がないと航行できないらしい。
『あれは、毛利軍ですね』
氏隆が教えてくれた。
呉の居酒屋・大和にも飾ってあったな毛利元就の三本の矢。
九鬼は鬼が付いてるから鬼人族だと思うが、この世界の毛利は何族なんだろ?
やがて、他の安宅船や小舟達も続々と逃げ出し、とうとう相模湾も静寂を取り戻した。
(史実での小田原陥落まで、あと27日)
この頃になると、川から海に流され水軍に救助された敵兵もいたことだろう。
そして、彼らから陸上の惨状が知らされたとしても不思議ではない。
『二曲輪殿、敵は大筒の準備をしているようです』
親方様の近習で今回借りた兵の統括をしている北条氏隆が言った。
彼は、俺が風魔であることを知らない。
「じゃあ、こっちも始めよう」
向かって左の長曾我部隊の安宅船に光を合わせるよう氏隆が指示を出す。
同時に狼煙を上げた。海側各隊に攻撃開始の合図である。
ここ本丸から水軍までの距離はおよそ600メートル程。
さすがに俺もアルキメデスのように本当に船を燃やすことができるとは思っていない。兵たちは光を一点に集中させるほどの練度には達していないし、そもそも、今は晴れているが昨日までは梅雨にさらされていたのだ、船体は湿ったままだろう。
この作戦の狙いは、光を合わせ敵兵に目くらましを喰らわす事にあった。
サッカーでPKやFKを蹴る選手の目に敵のサポータがペンライトの光をあてて妨害しようとしたりするが、今回俺が狙っているのも、同様な事である。
攻撃の本体は海側に陣取る部隊の大筒やバリスタに任せるのだ。
幸い敵の船は帆も上げず停泊したままである。しかも安宅船と周辺の小舟を縄で繋いでいる。海上封鎖には最良の方法だろうが、一方で安宅船さえ沈めれば小舟を巻き込むことができるだろう。
練度に不安があった氏隆隊だが、敵船が動かないのであれば、照準も合わせやすい。次第に光が長曾我部の安宅船に集まっていった。
船上の兵はあからさまに眩しそうな仕草をしている者、光を避け下を向いている者がいるのがここからでも分かる。
「ふ、ふ、ふ、ざまあみろ」
思わずそう呟いた時だった。
突如、長曾我部隊の安宅船が爆発した!
は?何故?理解できない。本物のアルキメデスでさえ船を燃やしたのであって、爆発させた訳ではない。
やがて沈んでいく長曾我部の安宅船、繋がっていた小舟も引きずられるように沈んでいくぞ。被害は隣の水軍衆にも及んだようだ。
隣で大型船が沈んだのだから、端の小舟は巻き込まれて沈んでいく。
長曾我部隊の両隣の隊の安宅船は船体の維持に努めていたようだが、やがて沈没した側の小舟群との縄を切り始めた。
海側の隊は突然の爆発に暫く固まっていたが、いち早く復帰したのは海側の大将氏照さんだった。早川口からいつのまにか指揮を執りに駆けつけていたらしい。
『何してる!大筒!、炮烙!撃て!撃て!撃て!』
ここまで聞こえそうな大声で指示している。さすがは氏照さん、頼りになる。
やがて、水軍側の大筒も用意が出来た船から順次発砲してくる。
大筒・新型炮烙玉 vs 大筒
の砲撃戦だ。
さて爆発の理由は未だ不明だが、氏隆隊の次の目標は向かって右から二番目の九鬼隊だ。氏隆曰く水軍の中では有名な存在らしい。
氏隆隊は慣れて来たのか光を合わせるのも素早くなってきた。
その間にも砲撃戦は続いてく。大破した安宅船から海に飛び込む兵も出始めた。北条方にも大筒の鉄球が落ちてくるが、命中精度はやはり竜堀を施した味方の大筒の方が上のようだ。
さて、熱光線もどきの第二のターゲットとなった九鬼隊の安宅船だが、なんと小舟との縄を切って逃げ始めた。長曾我部隊が爆発する前から小田原城内からキラキラ光が来るのは把握していただろうし、自分達が狙われると知れば爆発を恐れて逃げ出したとしてもおかしくはないか。
もっとも、氏隆は
『あの、九鬼殿が退却していく!』
と大いに驚いていた。
あの大きな安宅船を帆も上げすにすごい勢いで遠ざかっていく。
一体、何人の手漕ぎ手がいるんだろう?
この九鬼隊の退却を切っ掛けに、敵の水軍は一切に逃げに入った。
ちょうど、中央に帆をあげた安宅船がいた。手漕ぎ手が足りないのだろうか?
だが、帆が張られてる、アルキメデスの熱光線の活躍の場である。
直ぐにターゲットをその安宅船の帆に変更する。間抜けな事に敵は帆を先にあげたが、小舟との縄切に手間取っているようでまだ出航の気配がない。
そして、ついに、俺が待ちに待ったロマン砲の効果が現れた。
敵の帆から出火したのである!!
敵船上は大騒ぎになってるぞ。
俺はもう感無量だ。だって、あの古代の天才アルキメデスの偉業を再現したんだよ。
あ、消火をあきらめて小舟に退げていく。やはりあの安宅船は漕ぎ手が少なく帆がないと航行できないらしい。
『あれは、毛利軍ですね』
氏隆が教えてくれた。
呉の居酒屋・大和にも飾ってあったな毛利元就の三本の矢。
九鬼は鬼が付いてるから鬼人族だと思うが、この世界の毛利は何族なんだろ?
やがて、他の安宅船や小舟達も続々と逃げ出し、とうとう相模湾も静寂を取り戻した。
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