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第二章 貯水湖の提案編
繋がる二人
奥の奥まで、彼で埋め尽くされている。熱い。硬い。脈打っているのがわかる。
(……殿下が……ここに……。)
胸が、どくん、と大きく打つ。
(私たち……今……ひとつに、なってる……。)
そう思った瞬間、膣がきゅっと甘く締めつけられた。
「うっ、‥‥何、だ?……今、すごく締まったな。」
小さく息を呑み、アルフレートが低く呟く。
「……リリアーヌ。そろそろ、動くぞ。俺に、しっかり掴まっていろ。」
「……っ、は、はい……」
リリアーヌはこくりと小さく頷き、言われた通りに彼の背へと腕を回した。
ぎゅっと、縋るようにしがみつく。触れた体温に、胸がどくんと鳴った。
熱杭がずる、と抜かれかけ、また奥までずん、と突かれて、リリアーヌは大きく身体が跳ねた。
「あん、ぁ、‥‥‥ぁんッ‥‥‥ぁ!」
そのまま緩やかな抽送が始まった。もう痛みは感じなかった。
腰を打ちつけるように前後させたかと思えば、今度はゆるやかに揺さぶられる。
緩急をつけた腰遣いに、リリアーヌは翻弄された。
「あっ、あっ、ああっ!」
ぐちゅ、ぐちゅ、と湿った水音が部屋に響く。
動くたびに、溢れ出す蜜が止まらない。
何度も蜜壺を抜き差しされるのがたまらない。
そのたびに、内側にじん、と甘い痺れが広がっていく。
「あっ、あっ……!ん、あぁっ……!」
どこをどう責められているのか、もう分からない。
ただ、快感だけが積み重なっていく。
膣壁が擦られるたびに、きゅうきゅうと締め付けてしまう。
「ぐっ、う‥‥ッ!」
アルフレートが、低く押し殺した声を漏らした。
わずかに眉を寄せ、奥歯を噛みしめる。
(……締まりすぎだ。)
強く絡みつく感覚に、思わず息が詰まる。
こんなに締め付けられては――堪えるだけで、精一杯だった。
(……まるで、搾り取られるみたいだ。)
眉間に皺を寄せ、奥歯を食いしばる。
危うく、出そうになった。
わずかに乱れた吐息を零しながらアルフレートはリリアーヌの腰を支えるように掴み、ゆっくりと身を引いた。
引き止めるように絡みついてくる襞のうねりも、たまらなく気持ちがいい。
油断をしたら、すぐにでも達してしまいそうだ。
それくらい、リリアーヌの中は具合がいい。
「‥‥リリアーヌ。悪い、俺も、もう限界、だ‥‥。」
アルフレートはそのままリリアーヌの唇を塞いだ。激しく口づけられる。舌が絡まり、息を奪われる。
「んんっ……!んぅ……ッ、」
上も下も、同時に満たされていく。
抗えないほどに、彼に絡め取られていくようでーー
(……なのに、ちっとも――嫌じゃない。)
むしろ、もっと……と、思ってしまう。
お互いに舌を吸い合い、濃厚な口付けを交わしながら、腰の動きが少しずつ速くなる。角度を変えながら、奥を探るように突き上げてくる。
「ん、んんっ……!んぁ……っ」
突き上げられるたびに、視界に火花が散る。
積み重なっていく感覚に、抗えない波が押し寄せてくる。
そして――ある一点に触れられた瞬間、視界が白く弾けた。
彼も気づいたのか――同じ場所を、執拗に繰り返しなぞってくる。
「やっ……あっ……!そ、こ……っ、だめ……っ」
「……っ、ダメじゃないだろ。こんなに締め付けて……ッ、もっと……感じろ。」
頭がぼうっとして、もう何も考えられない。
室内に肌のぶつかり合う濡れた音とリリアーヌの甘く濡れた嬌声が鳴り響く。
「あっ、あっ、ああッ!」
奥を突き上げる角度が深くなる。執拗に敏感な場所を刺激されて、くちゅ、くちゅ、と剛直が抽送されるたびに、溢れた蜜が止まらない。リリアーヌはアルフレートの背中に爪を立てた。
「あん、‥‥ぁッ、‥‥ぁんッ、‥‥‥ぁ!」
「……はあっ、締まる——ッ!」
低く、掠れた声が漏れる。
(あ、だめ……っ!ま、また‥‥!)
何かが迫ってきている。
お腹の奥に、甘い熱が溜まっていく。
リリアーヌは無意識のうちに、アルフレートの腰に脚を絡めた。そのまま、ねだるように腰を揺らす。
「あっ……あぁっ……!い、イくッ‥!」
「ッ、いいぞ。‥‥俺の腕の中でイけ。」
深く、強く、――突き上げられた瞬間。白い光が弾けた。
「——っ、ぁあああっ!!」
身体が、弓なりに反った。
内壁がきゅうきゅうと痙攣して、彼を締め付ける。
頭の中が、真っ白になる。
ただ――気持ちいい。それだけだった。
「……っ、リリアーヌ——ッ!」
アルフレートがリリアーヌの細い身体をギュッと抱きすくめる。
太い腕で抱き締められ、最後に深く突き上げられた瞬間——リリアーヌの中で、快感が弾けた。
熱いものが、どくどくと内壁を濡らす。
彼の精が、奥に注ぎ込まれていく。
「あ……っ、」
どくどくと下腹部を満たす熱い感覚に、また小さく達してしまった。びくびくと身体が震えて、止まらない。
リリアーヌは初めての感覚に戸惑い、アルフレートにきゅっと抱きついた。
アルフレートの手が、そっとリリアーヌの髪を撫でる。
「……無理をさせたな。」
掠れた声が、静かに落ちる。
そのままーー彼の唇が、リリアーヌの額に触れた。
労わるような、静かな口づけ。
(……殿下……。)
胸の奥が、じんわりと満たされていく。
「……疲れただろう。ゆっくり休め。」
そっと、身を引く。
ずる、と抜かれる感覚と同時に、温かい何かがこぽりと溢れて、リリアーヌの身体がびくりと震えた。
「……っ、なに……これ……?」
リリアーヌが戸惑ったように呟く。その様子に、アルフレートは小さく息を漏らす。
(本当に何も知らないんだな。……まあ、初めてなら当然か。)
くすりと笑い、わずかに目を細める。
「気にするな。俺が出したものだ。」
短く、それだけを告げた。
「出したもの……?」
リリアーヌはぽかん、としたまま首を傾げる。
(出したって……ま、まさか……!?)
遅れて理解して、リリアーヌの頬がポッと熱を帯びる。
視線を彷徨わせる彼女を見下ろしながら、アルフレートはふっと笑みを零した。
「……あまり、煽るな。」
低く落とされた声。
「え……?」
戸惑うリリアーヌを見下ろしながら、
「そんな顔をされると……、」
一瞬、言葉を切って――
「……また、したくなる。」
アルフレートの言葉に一瞬、キョトンとしたリリアーヌだったが、リリアーヌの顔が一気に赤く染まる。
「え……!?ま、また!?あ、あの、これで終わりじゃないんですか……!?」
慌てる様子に、アルフレートはくすりと笑った。
「冗談だ。」
そのまま、やさしく頭を撫でる。
「初めてのお前に、そんな無茶はさせない。」
ひと呼吸置くと、
「……いいから、もう休め。」
その声は、どこか穏やかだった。
アルフレートの指先が、そっとリリアーヌの額に触れる。
触れた場所から、淡い影のような魔力が静かに広がった。
それは冷たさではなく――まどろむような、やわらかな静けさだった。
(あ、れ……?急に、眠く……なって……)
瞼が、重い。
意識が、ゆっくりと遠のいていく。
(……殿下……。)
それだけ思って――リリアーヌは、深い眠りに落ちた。
意識を失ったリリアーヌの身体を、アルフレートは丁寧に拭いて清めた。
乱れた髪を整え、そのままそっとベッドへと寝かせる。
スヤスヤと静かな寝息が、規則正しく続いていた。
その寝顔を、しばし見下ろす。
(……子供みたいな顔だな。)
もともとあどけなさの残る顔立ちではあるが――眠っていると、それが一層際立つ。
まるで、幼い子供のようだった。無防備で、柔らかくてーー
つい先ほどまで、自分が抱いていた相手とは思えない程だ。
ふと、思う。
(……そういえば、こいつ……何歳なんだ?)
今さらの疑問だった。
側室として迎えた以上、成人しているはずだ。
だが――
(初めて見たときは、とてもそうは思えなかったな……。)
十四、十五。
いや、下手をすれば、十二、三と言われても納得してしまう。
童顔なのもあるが、小柄で、華奢で。とても成人した女には見えなかった。
(……俺は、リリアーヌについて、何も知らないんだな。)
自嘲気味に、口元が歪む。
リリアーヌを側室に迎えると決まった時も、ヴェロニカ以外の女に興味などなかった。
どうせそのうち離縁する――そう決めつけていたから、知る必要もないと思っていた。
(……身上調書すら、まともに目を通していなかったな。)
側室として迎える以上、本来ならば家柄や素行、評判等をまとめた報告書に目を通すのが当然だ。
だが当時の自分は――そんなものに興味すら持たなかった。ただ「世継ぎをもうけるための存在」として扱っていた。
胸の奥が、わずかに重く沈んだ。
(……最低だな。)
今更ながら、自分のしたことに自己嫌悪と後悔に苛まれる。
そもそも、さっきリリアーヌのことを「知りたい」と口にしておきながら、年齢すら知らないとは――どの口が言うのか。
せめて、基本的なことくらいは把握しておくべきだろう。
アルフレートは視線を落とし、静かに眠るリリアーヌを見つめた。
ふと、シーツに視線が落ちる。
敷布に、淡く滲んだ赤い痕跡。
一瞬だけ、アルフレートの動きが止まった。
(……本当に初めて、だったんだな。)
分かっていたはずなのに――こうして目の当たりにすると、今更ながら実感が伴う。
胸の奥に、鈍く重いものが沈む。
視線を、眠るリリアーヌへと戻す。
無防備な寝顔。何も知らないような、無垢な表情。
(……俺は……)
言葉にならず、ただ静かに息を吐いた。
(……帰ったら、まず身上調書と側室選定報告書に目を通そう。)
ふと、別の顔が脳裏をよぎった。
(……ヴェロニカはどうだっただろうか。)
初めての夜を、思い返す。
ヴェロニカは――今、目の前で眠るリリアーヌとは、まるで違っていた。
戸惑う様子など微塵もなく、自ら大胆に衣を脱ぎ捨て、アルフレートの上に跨って腰を振ってみせるような女だった。むしろ、こちらを翻弄する余裕すらあった。
(……ヴェロニカは、慣れた様子だったな。)
それは当然だろう。ヴェロニカは処女ではなかったのだから。
が、当時はヴェロニカが身体を許してくれたことに喜び、何も疑問を抱かなかった。
それに――ヴェロニカは多くの男たちに求婚されていた。数ある男たちの中から自分を選んでくれたことが純粋に嬉しかった。それだけで、十分だった。
だが――視線が、自然と眠るリリアーヌへと落ちる。
無防備な寝顔。何も知らないまま、すべてを委ねてくるような無垢さ。
(……リリアーヌは違う。)
何もかもが初めてで、純潔をアルフレートに捧げた。
それがなんだか――とても神聖で、妙な重みを感じた。
が、それを負担には思わなかった。むしろ――抗いがたい満足感があった。
それが何なのか、うまく言葉にできない。
ただひとつ確かなのは――ヴェロニカの時とは、何かが決定的に違うということだった。
(……殿下が……ここに……。)
胸が、どくん、と大きく打つ。
(私たち……今……ひとつに、なってる……。)
そう思った瞬間、膣がきゅっと甘く締めつけられた。
「うっ、‥‥何、だ?……今、すごく締まったな。」
小さく息を呑み、アルフレートが低く呟く。
「……リリアーヌ。そろそろ、動くぞ。俺に、しっかり掴まっていろ。」
「……っ、は、はい……」
リリアーヌはこくりと小さく頷き、言われた通りに彼の背へと腕を回した。
ぎゅっと、縋るようにしがみつく。触れた体温に、胸がどくんと鳴った。
熱杭がずる、と抜かれかけ、また奥までずん、と突かれて、リリアーヌは大きく身体が跳ねた。
「あん、ぁ、‥‥‥ぁんッ‥‥‥ぁ!」
そのまま緩やかな抽送が始まった。もう痛みは感じなかった。
腰を打ちつけるように前後させたかと思えば、今度はゆるやかに揺さぶられる。
緩急をつけた腰遣いに、リリアーヌは翻弄された。
「あっ、あっ、ああっ!」
ぐちゅ、ぐちゅ、と湿った水音が部屋に響く。
動くたびに、溢れ出す蜜が止まらない。
何度も蜜壺を抜き差しされるのがたまらない。
そのたびに、内側にじん、と甘い痺れが広がっていく。
「あっ、あっ……!ん、あぁっ……!」
どこをどう責められているのか、もう分からない。
ただ、快感だけが積み重なっていく。
膣壁が擦られるたびに、きゅうきゅうと締め付けてしまう。
「ぐっ、う‥‥ッ!」
アルフレートが、低く押し殺した声を漏らした。
わずかに眉を寄せ、奥歯を噛みしめる。
(……締まりすぎだ。)
強く絡みつく感覚に、思わず息が詰まる。
こんなに締め付けられては――堪えるだけで、精一杯だった。
(……まるで、搾り取られるみたいだ。)
眉間に皺を寄せ、奥歯を食いしばる。
危うく、出そうになった。
わずかに乱れた吐息を零しながらアルフレートはリリアーヌの腰を支えるように掴み、ゆっくりと身を引いた。
引き止めるように絡みついてくる襞のうねりも、たまらなく気持ちがいい。
油断をしたら、すぐにでも達してしまいそうだ。
それくらい、リリアーヌの中は具合がいい。
「‥‥リリアーヌ。悪い、俺も、もう限界、だ‥‥。」
アルフレートはそのままリリアーヌの唇を塞いだ。激しく口づけられる。舌が絡まり、息を奪われる。
「んんっ……!んぅ……ッ、」
上も下も、同時に満たされていく。
抗えないほどに、彼に絡め取られていくようでーー
(……なのに、ちっとも――嫌じゃない。)
むしろ、もっと……と、思ってしまう。
お互いに舌を吸い合い、濃厚な口付けを交わしながら、腰の動きが少しずつ速くなる。角度を変えながら、奥を探るように突き上げてくる。
「ん、んんっ……!んぁ……っ」
突き上げられるたびに、視界に火花が散る。
積み重なっていく感覚に、抗えない波が押し寄せてくる。
そして――ある一点に触れられた瞬間、視界が白く弾けた。
彼も気づいたのか――同じ場所を、執拗に繰り返しなぞってくる。
「やっ……あっ……!そ、こ……っ、だめ……っ」
「……っ、ダメじゃないだろ。こんなに締め付けて……ッ、もっと……感じろ。」
頭がぼうっとして、もう何も考えられない。
室内に肌のぶつかり合う濡れた音とリリアーヌの甘く濡れた嬌声が鳴り響く。
「あっ、あっ、ああッ!」
奥を突き上げる角度が深くなる。執拗に敏感な場所を刺激されて、くちゅ、くちゅ、と剛直が抽送されるたびに、溢れた蜜が止まらない。リリアーヌはアルフレートの背中に爪を立てた。
「あん、‥‥ぁッ、‥‥ぁんッ、‥‥‥ぁ!」
「……はあっ、締まる——ッ!」
低く、掠れた声が漏れる。
(あ、だめ……っ!ま、また‥‥!)
何かが迫ってきている。
お腹の奥に、甘い熱が溜まっていく。
リリアーヌは無意識のうちに、アルフレートの腰に脚を絡めた。そのまま、ねだるように腰を揺らす。
「あっ……あぁっ……!い、イくッ‥!」
「ッ、いいぞ。‥‥俺の腕の中でイけ。」
深く、強く、――突き上げられた瞬間。白い光が弾けた。
「——っ、ぁあああっ!!」
身体が、弓なりに反った。
内壁がきゅうきゅうと痙攣して、彼を締め付ける。
頭の中が、真っ白になる。
ただ――気持ちいい。それだけだった。
「……っ、リリアーヌ——ッ!」
アルフレートがリリアーヌの細い身体をギュッと抱きすくめる。
太い腕で抱き締められ、最後に深く突き上げられた瞬間——リリアーヌの中で、快感が弾けた。
熱いものが、どくどくと内壁を濡らす。
彼の精が、奥に注ぎ込まれていく。
「あ……っ、」
どくどくと下腹部を満たす熱い感覚に、また小さく達してしまった。びくびくと身体が震えて、止まらない。
リリアーヌは初めての感覚に戸惑い、アルフレートにきゅっと抱きついた。
アルフレートの手が、そっとリリアーヌの髪を撫でる。
「……無理をさせたな。」
掠れた声が、静かに落ちる。
そのままーー彼の唇が、リリアーヌの額に触れた。
労わるような、静かな口づけ。
(……殿下……。)
胸の奥が、じんわりと満たされていく。
「……疲れただろう。ゆっくり休め。」
そっと、身を引く。
ずる、と抜かれる感覚と同時に、温かい何かがこぽりと溢れて、リリアーヌの身体がびくりと震えた。
「……っ、なに……これ……?」
リリアーヌが戸惑ったように呟く。その様子に、アルフレートは小さく息を漏らす。
(本当に何も知らないんだな。……まあ、初めてなら当然か。)
くすりと笑い、わずかに目を細める。
「気にするな。俺が出したものだ。」
短く、それだけを告げた。
「出したもの……?」
リリアーヌはぽかん、としたまま首を傾げる。
(出したって……ま、まさか……!?)
遅れて理解して、リリアーヌの頬がポッと熱を帯びる。
視線を彷徨わせる彼女を見下ろしながら、アルフレートはふっと笑みを零した。
「……あまり、煽るな。」
低く落とされた声。
「え……?」
戸惑うリリアーヌを見下ろしながら、
「そんな顔をされると……、」
一瞬、言葉を切って――
「……また、したくなる。」
アルフレートの言葉に一瞬、キョトンとしたリリアーヌだったが、リリアーヌの顔が一気に赤く染まる。
「え……!?ま、また!?あ、あの、これで終わりじゃないんですか……!?」
慌てる様子に、アルフレートはくすりと笑った。
「冗談だ。」
そのまま、やさしく頭を撫でる。
「初めてのお前に、そんな無茶はさせない。」
ひと呼吸置くと、
「……いいから、もう休め。」
その声は、どこか穏やかだった。
アルフレートの指先が、そっとリリアーヌの額に触れる。
触れた場所から、淡い影のような魔力が静かに広がった。
それは冷たさではなく――まどろむような、やわらかな静けさだった。
(あ、れ……?急に、眠く……なって……)
瞼が、重い。
意識が、ゆっくりと遠のいていく。
(……殿下……。)
それだけ思って――リリアーヌは、深い眠りに落ちた。
意識を失ったリリアーヌの身体を、アルフレートは丁寧に拭いて清めた。
乱れた髪を整え、そのままそっとベッドへと寝かせる。
スヤスヤと静かな寝息が、規則正しく続いていた。
その寝顔を、しばし見下ろす。
(……子供みたいな顔だな。)
もともとあどけなさの残る顔立ちではあるが――眠っていると、それが一層際立つ。
まるで、幼い子供のようだった。無防備で、柔らかくてーー
つい先ほどまで、自分が抱いていた相手とは思えない程だ。
ふと、思う。
(……そういえば、こいつ……何歳なんだ?)
今さらの疑問だった。
側室として迎えた以上、成人しているはずだ。
だが――
(初めて見たときは、とてもそうは思えなかったな……。)
十四、十五。
いや、下手をすれば、十二、三と言われても納得してしまう。
童顔なのもあるが、小柄で、華奢で。とても成人した女には見えなかった。
(……俺は、リリアーヌについて、何も知らないんだな。)
自嘲気味に、口元が歪む。
リリアーヌを側室に迎えると決まった時も、ヴェロニカ以外の女に興味などなかった。
どうせそのうち離縁する――そう決めつけていたから、知る必要もないと思っていた。
(……身上調書すら、まともに目を通していなかったな。)
側室として迎える以上、本来ならば家柄や素行、評判等をまとめた報告書に目を通すのが当然だ。
だが当時の自分は――そんなものに興味すら持たなかった。ただ「世継ぎをもうけるための存在」として扱っていた。
胸の奥が、わずかに重く沈んだ。
(……最低だな。)
今更ながら、自分のしたことに自己嫌悪と後悔に苛まれる。
そもそも、さっきリリアーヌのことを「知りたい」と口にしておきながら、年齢すら知らないとは――どの口が言うのか。
せめて、基本的なことくらいは把握しておくべきだろう。
アルフレートは視線を落とし、静かに眠るリリアーヌを見つめた。
ふと、シーツに視線が落ちる。
敷布に、淡く滲んだ赤い痕跡。
一瞬だけ、アルフレートの動きが止まった。
(……本当に初めて、だったんだな。)
分かっていたはずなのに――こうして目の当たりにすると、今更ながら実感が伴う。
胸の奥に、鈍く重いものが沈む。
視線を、眠るリリアーヌへと戻す。
無防備な寝顔。何も知らないような、無垢な表情。
(……俺は……)
言葉にならず、ただ静かに息を吐いた。
(……帰ったら、まず身上調書と側室選定報告書に目を通そう。)
ふと、別の顔が脳裏をよぎった。
(……ヴェロニカはどうだっただろうか。)
初めての夜を、思い返す。
ヴェロニカは――今、目の前で眠るリリアーヌとは、まるで違っていた。
戸惑う様子など微塵もなく、自ら大胆に衣を脱ぎ捨て、アルフレートの上に跨って腰を振ってみせるような女だった。むしろ、こちらを翻弄する余裕すらあった。
(……ヴェロニカは、慣れた様子だったな。)
それは当然だろう。ヴェロニカは処女ではなかったのだから。
が、当時はヴェロニカが身体を許してくれたことに喜び、何も疑問を抱かなかった。
それに――ヴェロニカは多くの男たちに求婚されていた。数ある男たちの中から自分を選んでくれたことが純粋に嬉しかった。それだけで、十分だった。
だが――視線が、自然と眠るリリアーヌへと落ちる。
無防備な寝顔。何も知らないまま、すべてを委ねてくるような無垢さ。
(……リリアーヌは違う。)
何もかもが初めてで、純潔をアルフレートに捧げた。
それがなんだか――とても神聖で、妙な重みを感じた。
が、それを負担には思わなかった。むしろ――抗いがたい満足感があった。
それが何なのか、うまく言葉にできない。
ただひとつ確かなのは――ヴェロニカの時とは、何かが決定的に違うということだった。
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