8 / 65
夢の中で乙女ゲームの世界っぽいところに迷い込みました
リアルの先輩を訪ねてみました
しおりを挟む次の日、2年の教室を訪ねた朝霞はちょうど戸口のところにいた男子生徒に言った。
「あのっ、十文字先輩はいらっしゃいますか?」
そう言うと、何故か聞き耳を立てていたらしいクラスの人たちが、ざわめく。
ひいっ、私なんぞが先輩を呼び出すなんて、ご無礼ですよねっ。
申し訳ありませんっ、と何故か、十文字本人ではなく、彼のクラスメイトたちに対して思う。
「鬼龍院朝霞だ。
なに? 十文字と付き合ってんの?」
と聞こえてきた。
とんでもございませんっ、と思った朝霞は、十文字がこちらに向かって来ていることより、彼のクラスメイトの反応にどきどきし、自分の許に、
「お前か。
なんの用だ?」
と言ってきた十文字に、みんなにも聞こえるような声で言った。
「すみません。
この間、先輩が図書当番のときにお借りした本のことなんですけど」
みんなが、なんだ、という顔をするのが見えた。
「で、すみません。
ちょっとこちらへ」
と朝霞は、十文字を手をつかみ、ちょうど十文字の教室から近い図書室へと引きずっていく。
「……すみません、先輩。
お呼びたてしまして」
「どうした?
本が破れてたとか?」
と図書室の端で、十文字が訊いてくる。
「いえ、そうでなくてですね」
と朝霞は言いよどむ。
十文字は腕を組み、無表情に朝霞を見下ろしている。
ひいっ。
王子より、謎の騎士団長より、この人が怖いっ、と思いながらも、朝霞は図書室なので、小声で言った。
「じ、実は私、毎晩、ものすごく苦痛な夢を見るんです」
「夢……?」
と訊き返した十文字に、身振り手振りを加えつつ、説明していたが、腕をつかまれ、だんだん隅の方に引きずっていかれる。
「――というわけなんです。
今夜も気まずい時間を過ごしたくないので、先輩、なにかしゃべってください」
「……意味がわからんうえに、此処は図書室だ。
静かにできない奴は帰れ」
と一応、小声でしゃべっていたのに、腕をつかまれ、出口に連れていかれる。
まあ、私でも、こんな訳のわからないことを言ってくる女には関わりたくないな~、と思ったとき、廊下から、
「朝霞!」
と声がした。
十文字に連行されようとしている朝霞の許に佐野村がやってくる。
自分が話しかけるなと言ったくせにな、と思う朝霞に、佐野村が訊いてきた。
「どうしたんだ? 朝霞」
十文字が、
「お前、彼氏いたのか」
と朝霞に訊いてきた。
「いません」
「じゃあ、これはなんだ?」
と十文字は、朝霞の腕をつかんでいる十文字を咎めるように見ている佐野村を指差す。
「幼なじみです」
「1年の佐野村だろう。
人気の男じゃないか。
こんなのがいるんなら、お前の訳のわからん夢にも、こいつを出演させとけ」
と言って、十文字は行ってしまった。
「佐野村……、彼氏ってなにかな?」
「付き合ってる男のことだろう」
「いや、そうじゃなくて――。
彼氏って言葉と佐野村が結びつかないんだけど」
「心配するな、俺もだ……」
と言う佐野村と二人で、ぼんやり十文字を見送る。
「佐野村は、おにいちゃんLOVEなのにね」
「おかしな意味に聞こえるが。
確かに俺は廣也さんを崇拝している」
「じゃあ、妹の私じゃなくて、おにいちゃんと同じ高校に行けばよかったじゃん」
とうっかり言って、佐野村に熱く語られる。
「なに言ってんだ、お前っ。
なにが楽しくて男子校に行かなきゃならないんだっ」
いくら廣也さんがいても、絶対に嫌だっ、と佐野村は主張する。
「俺は廣也さんとは違うんだぞっ?
帰り道で女子が待ち伏せしてたり。
バレンタインには校門にチョコ持った女子で行列ができたりとかしない男なんだっ」
「あ、でも、昔、佐野村のことを好きだって言ってた子が誰かいたような」
「なにっ?」
「誰だったっけな~」
あ、チャイム鳴った、と行こうとする朝霞の肩をつかみ、佐野村がすがりついてくる。
「誰だ、その奇特なヤツはっ。
教えろっ、朝霞っ。
教えてくれ~っ」
うん。
昔から、こういうキャラだったから、イケメンだって気づかなかったんだな。
……高校ではモテているようなのだが、教えてやるまい、と思いながら、朝霞はさっさと自分の教室に戻っていった。
1
あなたにおすすめの小説
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
アリア
桜庭かなめ
恋愛
10年前、中学生だった氷室智也は遊園地で迷子になっていた朝比奈美来のことを助ける。自分を助けてくれた智也のことが好きになった美来は智也にプロポーズをする。しかし、智也は美来が結婚できる年齢になったらまた考えようと答えた。
それ以来、2人は会っていなかったが、10年経ったある春の日、結婚できる年齢である16歳となった美来が突然現れ、智也は再びプロポーズをされる。そのことをきっかけに智也は週末を中心に美来と一緒の時間を過ごしていく。しかし、会社の1年先輩である月村有紗も智也のことが好きであると告白する。
様々なことが降りかかる中、智也、美来、有紗の三角関係はどうなっていくのか。2度のプロポーズから始まるラブストーリーシリーズ。
※完結しました!(2020.9.24)
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる