オタク姫 ~100年の恋~

菱沼あゆ

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夢の中で乙女ゲームの世界っぽいところに迷い込みました

壮大なスペースオペラの果てに

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「っていうか、お母様だったんですね、ワンマン社長って」
と朝霞は苦笑いして言う。

「壮大なスペースオペラの果てに出会った黒幕は、実の母だった」
と呟く廣也に、

「いい加減、その設定から離れろ。
 だが、そんな感じだ」
と十文字は言う。

 どんなお母様なんだか。
 かえって気になるな、と朝霞は思っていた。

「でも、先輩」

 余計なことかと思いながらも、朝霞は言った。

「人生でわずかな時間ですよ、親と暮らせるのは」

 家族とも、と朝霞は兄を見る。

「だから私は我慢します。
 いきなり兄が夜中に部屋に入ってきて、私の大事なゲームや漫画を奪っていっても」

「待て」
と廣也が割って入る。

「我慢してるのは俺だぞ。

 それに、お前が小さいころ、漫画雑誌の発売日に自転車で早売りのクリーニング店まで乗せていってたのは誰だ」

 おにいさまでございます、と朝霞が廣也を拝んだところで分かれ道に来た。

「いい兄貴だな」
と一緒に廣也を振り返りながら、十文字が言う。

「ありがとうございます。
 意外とそうなのかもしれません。

 でも、先輩の気持ちもわかりますけど。
 親に頼らず一人暮らしって、やっぱり大変だと思いますよ」

 まあ、余計なお世話だろうが。

 いつも忙しく家事をこなしている母親を思うと、学校へ行きながら、バイトもしつつ、あのようにするのは大変だろうなと思ってしまう。

「……わかってる」
と少し考える風な口調で言った十文字に、朝霞は空気を変えようと、笑って言った。

「そうだ。
 先輩が一人暮らししたら、差し入れにいってあげますよ。

 あ、でも、レトルトとかは、火や水がないと作れないですよね」

「待て。
 お前の頭の中で、俺はどんなところに住んでいる?

 そして、差し入れって、手作りじゃないのか?」

 いや、別にお金がないので、山の斜面に穴を掘って住んでいるとかではなかったのだが。

 電気代や水道代が払えなくて、止められてそうだな、と思ったからだ。

 だが、そのとき、ちょうど階段が見えたので、朝霞はそのまま佐野村とともに、行こうとした。

「あ、先輩。
 我々、三階なんで、じゃ」

「お前、ほんっとうにマイペースだなっ。
 鬼龍院とそっくりだっ」
と後ろで十文字が文句を言っていた。



 朝霞が階段を上がっていると、佐野村が言ってくる。

「お前、一人暮らしの男のところに、差し入れに行くとか簡単に言うなよ」

「なんで?」
と振り向き問うと、

「いや、なんででも――」
と佐野村は言葉をにごす。

 そう、と言った朝霞は、
「わかった。
 じゃあ、おにいちゃんと行くよ」
と言って、

「……いや、それはそれで嫌がられそうだけどな」
と呟く佐野村と、教室の手前で別れた。


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