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王子は竪穴式住居に住んでいました
忘れていた過去
しおりを挟む「そうだった、そうだった。
仁美が最初に話しかけてきたの。
『佐野村に近づかないで』だったよね~」
そう言って、喧嘩を売られたのが仁美との出会いだったのだ。
ほんとうに気持ちよく忘れていた、と思ったあとで、朝霞は、はっとする。
「もしや、仁美が、私とずっといたのは、私が佐野村に近づかないよう、見張るためだったとかっ?」
「あんた莫迦なの?
そんなのだったら、あんたに近づかないで、佐野村に引っついてるわよ」
「それもそうか」
と笑うと、
「いや、実のところ、佐野村好きだったのは昔の話で、中学校の頃とかは違う人好きだったんだけど。
高校に入って、制服変わって、あ、佐野村、似合うじゃん、とか。
大人っぽくなったなーとか。
身長いつの間にか抜かされてたなーとか思ってるうちに、また、なんか気になり出したんだよね」
と仁美はちょっと恥ずかしそうに白状する。
「そういえば、仁美は昔、背高かったよね」
なので、当時は、小柄だった佐野村より、仁美の方がずいぶん大きかったのだ。
「そうね。
男の子って、後から大きくなるよね。
でも、あんたにも、あっという間に、抜かれちゃったけど。
最初ちっちゃい子の方が巨大化するってほんとね……。
運動もしないのに、なに、その無駄な長身」
と元バスケ部の仁美に睨まれる。
いや、そんなこと言われても……と思っていると、
「でも、佐野村は、ずっと、あんたのこと好きだったんじゃないかな?」
と仁美は言ってきた。
「は? ないない」
「だって、あいつ、莫迦だったのに」
好きだったとか言うわりには手厳しいな……。
「こんな学校、猛勉強して入ってくるなんて。
特に将来のビジョンがあって、頑張ってるって感じでもないのに」
……仁美。
ほんとうに好き? 佐野村のこと。
と容赦ない、その口調に疑ってしまう。
「佐野村は、あんたが好きだから。
今まで通り側にいたいから、あんたを追いかけて、ここまで来たんじゃないの?」
「いやあ、でも、佐野村は私より、おにいちゃんの方が好きみたいよ」
「……どういう意味で?」
「ああ、いや、そういう意味でじゃなくて」
仁美の妄想を読み取り、朝霞は言った。
「まあ、おにいちゃん、男子校でもモテてるみたいだけど」
「ええーっ、やめてーっ。
廣也様が男の毒牙にーっ」
……とか言いながら、楽しそうなのはなんでだ。
「まあ、ともかく、私があんたの側にいたのは、佐野村のこととは関係ないよ。
一緒にいて面白いからだよ」
まあ、いろんな意味で、と付け足された一言が気にはなったが、朝霞は、
「仁美っ、ありがとうっ」
と朝の廊下で仁美に抱きつく。
すると、仁美が、
「やめてっ。
殺されるーっ」
と叫び出した。
なんで? と思って見ると、教室の窓から女子数人が怨念を込めた目で仁美を見ていた。
『朝霞様がお友だちと!』
『C組の土田仁美よ』
『まあ、うらやましい』
『ねたましいっ』
という視線を浴びていると仁美は主張する。
いや、そんな莫迦な、と朝霞は思っていたが。
仁美はポンと朝霞の肩を叩き、
「あんたが姫扱いされんのも面白いかと思って、ほっといたんだけど。
やっぱそのキャラ、早めになんとかして……」
と言ってきた。
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