62 / 65
俺にも呪いがかかっている
なんで、先輩が王子なんだろうな
しおりを挟む登校中、前を歩く廣也に電話がかかってきて、朝霞がぼんやりそちらを見ていると、佐野村が言ってきた。
「なんで、先輩が王子なんだろうな」
「え?」
「なんで俺じゃなくて、先輩の夢を見たんだろうな、お前は」
俺の方が近くにいたのに、と言ったあとで、佐野村は少し笑って言う。
「近くにいすぎたってことかな。
一回、転校して戻ってこようか。
そうだ。
ちょっと親父に転勤してくれるよう頼んでみよう」
……いや、あなたのお父さん、市役所の職員では。
「まあ、俺もお前が先輩が好きとか言いださなかったら。
お前のことを意識しないまま、卒業してたかな。
人にとられたくないと思って、ようやくお前が大事なんだと気がついたよ」
……佐野村。
「だが、お前も今は、遠すぎる先輩に夢を見ているだけだ、きっと。
先輩ともずっと一緒にいて、神秘性もなくなり、憧れの存在でなくなったら。
俺の方がよかったかな、と思うかもしれないぞ」
「――というセリフを俺の目の前で言うお前の神経がすごいな」
と佐野村の隣につり革を持って立つ十文字が言った。
話しているうちに電車に乗り、十文字とも合流していたのだ。
そう言われても、佐野村は、めげずに、
「朝霞。
お前のことを諦めようと思ったけど、やっぱり、そう簡単には諦められそうにもないから。
先輩に飽きたら、いつでも俺に言ってこい。
俺はいつでもお前の側にいるから。
――って、格好よくない!? 俺っ」
と自分で言ってしまうところがどうなんだろうな……、と思う頃、朝霞たちは学校に着いていた。
昼休み、図書室に行こうとした十文字は、たまたま朝霞たちが群れているところに通りかかった。
耳に入りやすい声なのか、朝霞の声だからなのか。
みんなで話しているのに、朝霞の声だけがとりわけよく十文字の耳に響いた。
「いや、だからさ。
ゲームぶっ通しでやってると、目が疲れるからさ。
途中から、片目ずつ休めながらやってるのー」
休憩しろ……と思う十文字の後ろで、他の女生徒たちが笑って言っている。
「朝霞姫って、器用なのねー」
……そうか?
そういう問題か?
朝霞はゲームオタクのマキがいつも側にいるせいか。
近頃、平気でゲームの話をしているが、特に誰もそれで朝霞に幻滅したりはしていないようだった。
入学してからの三ヶ月で、もう朝霞のイメージが出来上がってしまっているからというのもあるだろうし。
やはり、みんな、朝霞のあの優等生なわりに、ぼんやりとした雰囲気を好ましく思っていただけだったのだろう。
いつの間にか、佐野村も横に立って、朝霞を眺めていた。
朝、朝霞を忘れられない宣言をしていたが。
所詮は、朝霞の幼なじみ。
朝霞と似たような感じにぼんやりしていて、こちらに向かって、ガツガツ突っかかってくるようなこともない。
すると、そこに通りかかった山内が言ってくる。
「おっ、朝霞姫と仁美ちゃんとマキちゃんじゃないか。
いいなあ、お前ら、しょっちゅう、あのキラキラ女子の集団と一緒にいるよなー」
キラキラ女子!? と二人で振り返る。
どの辺にキラキラ女子がいるんだ?
ゲーオタ
ゲーオタ
なんかヤバそう
の三点セットにしか見えないんだが……。
「だが、まあ、ゲームの話をしている朝霞はキラキラして可愛いから、そういう意味かな」
とボソリと呟いて、佐野村に、
「いや、俺はそこんところはキラキラ見えないんで。
やっぱり、朝霞には先輩の方が合ってるかもですね……」
と言われてしまった。
1
あなたにおすすめの小説
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
【完結】憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる