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お茶汲み秘書の話すのやめときたい秘密
目をそらしたら負け
しおりを挟む「寺坂さん、今日は忙しいの?」
と秘書室に戻った寺坂は秋月に訊かれた。
「支社長について行かなかったけど」
「ああ、いえ。
特に用事はないんですが」
と言うと、
「あらっ。
じゃあ、もしかして、気を利かせて、用事があるって言ったの?
あまりと支社長が出かけるように。
すごいじゃない。
寺坂さんとも思えない機転の利き方ね」
と言われる。
いや……それ、褒めてるんですかね? と寺坂は苦笑いしながら思っていた。
「いやー、実は、あまりさんとのお見合いの話が持ち上がったとき、支社長がスマホであまりさんの写真を見せてこられて。
見合いなんて嫌だと口ではおっしゃってたんですけど。
……すごいニコニコ顔で。
余程気に入られたらしいなと思って」
でも、ほんと、あまりさんが支社長を断られたのは想定外でした、と語ると、秋月は、
「まあ、私は、支社長が相手なら、女は絶対断らないと思う、その寺坂さんの心酔っぷりが怖いけど」
と呟いたあとで、
「でも確かに、私でも、若いときにそんな話が来たら、断らないかな。
ただ、あの子変わってるからねえ」
と笑う。
そうなのだ。
だが、あの変わったところが、支社長とは合ってるような気がするのだが。
「素直じゃないからね、支社長。
上手くやってるかしら?
余計揉めてなきゃいいんだけど」
そこでいきなり、秋月はこちらを見上げ、
「ところで、なんて言って断ったの?」
と訊いてきた。
えっ、と赤くなる。
なんとなく、桜田を見ると、桜田も、えっ? という顔をして、こちらを見ていた。
何故、私は此処に連れてこられているのでしょうか。
私用だって言ったくせに~。
駅を出た海里は、そのまま同じ系列の会社を訪れた。
「お前、秘書だってことにしといたからな」
と言われたので、一緒に会議室に連れて行かれてしまったあまりは秘書らしい顔をして話を聞いていた。
海里に言ったら、秘書らしい顔ってなんだ? と言われることだろうが。
どうも海外のスーパーが日本でチェーン展開を目論んでいるようで、その一号店の話らしい。
アウトレットとスーパーの複合店になるようで、かなり郊外に巨大な店舗を作るようなのだ。
郊外型の大型店舗もかなり厳しくなってるようだけどな、と思いながら、話を聞いていると、やはり、そこのところが問題なようで。
どうやらフランス人らしい人と、可愛らしい顔をした此処の社員らしい若い人、そして、その上司がなにやら真剣に話していた。
それにしても、なんでこの話に支社長が首突っ込んでるんだ? と思いながら、わかっているらしい顔をして微笑んでいたが、日本語じゃないので、さっぱり、わかってはいなかった。
やがて、そのフランス人は支社長たちと握手をして出て行った。
「では、ちょっとお見送りしてきます」
と海里に言って、可愛い顔の小僧さん風の社員が出て行く。
海里たちとは離れ、ロの字型に置かれた長テーブルの後方に居たあまりは、やれやれ、終わった、と出されていたペットボトルのお茶に口をつける。
最近、会議に出されるのは、ペットボトルのお茶も多いようだ。
まあ、湯飲み洗わなくていいよな、と思いながら、添えられた紙コップにそそいでいると、海里と目が合った。
そそぎ終わり、顔を上げると、対角線上に居る海里とまた目が合う。
なんとなく、そらしたら負けな気がして、そのまま見つめてしまうと、海里も同じことを考えているようで、こちらを見たまま、お茶を飲んでいる。
……どうしよう。
最初にそらしたら負けと思ってしまったせいで、そらせない、と思っているうちに、ドアが開いて、急いで戻ってきたらしい小僧さんが微笑んで言ってきた。
「すみません。
ありがとうございます。
やっぱり、海里さんが居るってだけで、向こうが全然態度が違うので」
どうも、あちらがグイグイ押してきて、向こうのいいように条件を飲まされそうになっていたようだった。
「いや、ついでがあったから」
と海里が軽く言うのを、全然ついでではなかったがな、と思いながら聞く。
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