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お茶汲み秘書の話すのやめときたい秘密
小さきものはぷるぷる震えてる
しおりを挟むで、そんなあまりを海里は、
なに俺を無視して熟読してるんだ、と思い、更にガン見していた。
初めての夜を過ごしたあとのカップルは、新幹線で、人目につかない程度には、そっと手を握ったりとか、いちゃついてもいいものなんじゃないのか、世間的にはっ。
まあ、こいつ、カップルだとは思ってないだろうからな、と海里は、あまりを横目に見る。
だが、あまり。
冷静に考えろ。
お前のような女が幾ら酔っていたからと言っても、嫌いな男にいいようにされるはずないじゃないか。
だからと言って、いや、お前、俺のこと好きなんだろ? と真正面から言ってみても、こいつのことだ。
逆にショックを受けて、またカメの甲羅を磨きに行ってしまうに違いない、と思っていた。
しょうがない。
一夜明けて、ようやく卵から孵ったヒナみたいなものだから。
初めて外気に触れて、ぷるぷる震えてるのを見ていよう。
下手に手を出したら、ショック死するかもしれないからな、と思い、眺めていた。
「そういえば、来ないな」
と話しかけると、あまりが、
「ははは、はいっ?」
と振り向く。
……今こそ、ショック死しそうだったな、と思いながら、海里は言った。
「珈琲だよ。
着くまでに来そうにないな、車内販売」
ちょっと買ってくる、と海里は立ち上がり、あまりの膝を叩いた。
「退け」
はい、とあまりは本で顔を隠すようにして、膝を斜めにして避ける。
「……お前も珈琲でいいか?」
と訊くと、チラ、と本から目だけを出し、
「私、買ってきましょうか?」
と言う。
「いや、いい。
少し歩きたいから」
お前、甘いのでいいか、と問うと、はい、と言う。
「じゃ、行ってくる」
はい、ともう一度後ろで聞こえた。
うーん。
少しは進歩してるかな。
今、脚に触っても悲鳴上げなかったし。
ま、もうちょっと放っておいてやるか、と思いながら、自動販売機に行きかけて、手洗いの前で女性とすれ違う。
避けながら、
「すみません」
と言うと、あっ、はいっ、と言ったその女性は赤くなる。
……そうなんだよな。
俺が話しかけたら、普通の女の反応はこうなのに。
あいつは最初から、ビクビクするか、目をそらすかだったからな。
珈琲を運んできたあいつをカフェで自分が見上げたときなど、仔うさぎのようにぷるぷる震えていた。
だが、そのさまを思い返すと可笑しくもある。
海里は、あまりの甘い珈琲を買いながら、ま、もうちょっと放っておいてやるか、と思った。
しかし、どうやら、あまりの箱入り具合をあまく見過ぎていたようだった。
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