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箱から出てこない箱入り娘
漢字に変換できません
しおりを挟む大崎は近くにあるのに、まだ行ったことのなかった素敵なレストランにあまりを連れていってくれた。
テラス席に座ると、緑も多く、既につけられているテーブルの上のランプが夕暮れの光のなかで揺らめいて綺麗だ。
「なんだ。
海里と食べるのなら、食べられないわね。
此処のクリーム系のパスタ、ほんとに美味しいのよ」
と大崎はメニューを見ながら言う。
確かに。
すごくいい匂いが店中に漂っている。
「また来てみます」
店内を見回しながら、あまりが微笑んで言うと、大崎は、
「そうね。
海里と来てやって」
と言う。
あまりは、ケーキにごってりフルーツが盛りあわせてあるデザートを頼んで、
「あんた、それ、ご飯食べるのと変わらないんじゃない?」
と大崎に笑われた。
しばらく大崎の店の話や、海里の会社の話などをしていた。
こうしてゆっくり話してみると、この人話しやすいな、とあまりは思う。
海里さんのご親戚だからだろうか。
でも、血は繋がってないんだよね? とその綺麗な横顔を眺めていると、大崎が笑い出した。
「いや、駄目。
もうちょっと黙ってようと思ったけど、あんた、可愛すぎるわ」
と言い出す。
「あまり」
と呼びかけられ、はい、と言うと、大崎は食べる手を止め、言ってきた。
「私の名前は、大崎桐矢」
「……きりやさんですか。
素敵なお名前ですね」
「いや、あんた、何処までマジなの」
と大崎は言う。
いや、大崎に似合う綺麗な名前だなと思ったのだが……。
あまりの頭の中にあるのは、語感だけで、漢字に変換されてはいなかった。
「私は元、海里の家庭教師で、海里の姉、麻里子の夫、大崎桐矢。
麻里子と結婚にこぎつけるまで、随分、海里に協力してもらったわ」
あの……ちょっぴり脳が言葉を拒否しているのですが。
大崎さん、すみません、と完全に大崎の言葉を理解しないまま、あまりは思う。
「麻里子が他に男を作って出て行ってしまって。
ただいま、ショックで現実逃避中よ」
日本に戻って女装してセレクトショップなど始めたので、心配した海里がときどき様子を見に来るのだと言う。
「一時は、麻里子を殺して私も死のうかと思ったわ。
でもほら、そのうち、麻理子も間男に飽きるかもしれないじゃないの」
と乙女のような顔で大崎は言う。
そ、そうですか……。
そうですね。
「海里には昔随分世話になったから、いつか恩を返してやらねばと思っていたのよ。
だから、あんた、さっさと海里と結婚しなさい」
えーと……。
「海里と結婚して、私と姉妹になったら、お店の服もまけてあげるし。
毎日、服コーディネートしてあげてもいいわよ」
「えっ、ほんとですかっ」
と思わず、差し出された大崎桐矢の手をつかんでしまう。
おっと、男の人だったー、とあまりは慌てて手を離した。
それに、この手を取るということは、海里と結婚するということだ。
そんな、素敵な服につられてとか。
人としてまずいだろう。
そして、姉妹ではなく、兄妹のような気がするのだが……。
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