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樹海に沈む死体
先生って、ほんとに事件を呼びますよね
しおりを挟む「お前は陸たちは犯罪者だと言った。
では、なんの犯罪か。
此処に来て起こった事件は二つ。
転がり落ちた干からびた死体。
空から降ってきた死にたての死体」
「先生、二階からです」
「俺には空から突然降って湧いたように感じられたんだよっ。
お前、目の前に、いきなり死体が降ってきたんだぞ」
こっちが死ぬとこだった、と言うと、
「先生って、ほんとに事件を呼びますよね。
その仏眼相のせいですか?」
と亮灯は言ってくる。
「知るか!
ともかく、片方は干からびてる。
今起こった犯罪は、あの名前のわからない女の殺人事件だけだ。
そして、あの直後から居なくて、隠れている早希が犯人だ。
陸は早希をかばってる。
早希は此処へ来て、みんなを驚かすことがあると言ってたそうだな。
こんな静かな場所に興味のなさそうな陸が一人で此処へ来て時間を潰していた理由。
それは、恋人に呼ばれて、此処で結婚をみんなにサプライズで発表すると言われたからだ。
だが、なんらかのアクシデントがあって、早希があの女を殺してしまい、こういう事態になったんだろう。
お前が、陸もそんなことのために捕まりたくないと思ってると言ったことから言って、あの正体不明の女、ろくなもんじゃないな」
「そうです。
あの女、たぶん、ホテルを荒らして歩く窃盗犯ですよ。
でもね、結構スタイル良くて、影のある美人だったじゃないですか。
それが、此処に早くから一人で泊まってた陸の部屋に居たわけですよ。
こっそり陸の部屋を訪ねた早希さんは、そこで、あの女を見てしまった。
陸の浮気相手だと思った早希さんは、彼女に詰め寄った。
向こうも、疚しいもんだから、逃げようとする。
それで、ますます怪しいと思った早希さんと乱闘になって、窃盗犯の女は頭を強打して死んでしまったんです。
正気に返った早希さんは、散乱した部屋を見て、自分の勘違いに気がついた。
それで、陸に相談し、陸は早希さんの犯罪を隠そうとしたんです。
元々乱闘で乱れていた衣服を更に乱して、男に乱暴されかけた風を装おうとした。
ま、実際のところ、服を乱したくらいじゃ、そう判断させるのも難しいんですけど。
陸なんで」
と言われ、ああ、と言う。
ミステリーが好きだとか言ってはいたが、あの性格だから、あまり深く考えてはいなさそうだ。
「陸たちは、死体を人目のないときを狙って、空き部屋に移動し、そこにたまたま落ちていた縄を使って、手を縛った。
あんまり死体に触るのも気持ち悪いんで、そこを掴んで、引っ張り起こし、窓枠に立てかけた。
どうしようかな、と思ってる間に、鍵がかかってなかったら、落ちちゃったらしいんですよね」
「……偶然なら許そう。
俺が居るのを知ってて、落としたのなら、許さん」
ははは、と亮灯は苦笑いしていた。
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