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岩の町
お礼の晩餐
しおりを挟むフェリシアたちは布団を作ったお礼の晩餐に招かれていた。
「ありがとうございます。
フェリシア様、アルバトロス様、ファルコ様、サミュエル様……
えーと?」
と祝いの席で、この地の領主が小首をかしげる。
「あ、えーと、
スラ……
スラーです」
と今日はちゃんと椅子にお座りしているスライムを見ながらフェリシアは言った。
スライムの男の子は食事が楽しみなようで、床についていない足をパタパタさせていたが、最初の頃に比べれば、ずいぶんとお行儀が良くなっていた。
なんと言っても、とりあえず、椅子に座っている、というだけで、かなり違う。
「布団の製法を教えていただき、ありがとうございます。
これでこの町も観光の町として、発展していくと思います」
ささ、お召し上がりくださいと言われる大きな木のテーブルには、茶色い陶器のツボが一列に並べられている。
密封してあるようだ。
……ヘビとか出て来そうだ。
活き造りでお召し上がりくださいとか言われたらどうしよう、とフェリシアが思っていると、茶色い服を着た、給仕の男たちが前に出て来て、おもむろにツボをつかんだ。
一斉に、カッ、と木槌でツボを叩く。
すると、ツボの上部が綺麗にはずれた。
フェリシアたちの目の前にある、なにも入っていなかった皿に、ドボドボと肉とスープが注がれる。
強い香辛料の香りがした。
――ツボのまま火にくべて蒸し焼きみたいにしたのかな。
そこに、大きな木のトレーを抱えた白い服の男が現れた。
空いていたもうひとつの皿に、木のトレーの上に並んでいる物を置いて歩く。
それは、ぷっくりと膨らんだ、薄皮のパンみたいなものだった。
それに、カラフルな豆のサラダがやってきて。
さらに、数人の男たちが皿にのったなにかの肉の丸焼きを持ってきた。
どんっとテーブルの中央に置かれる。
なんの味もついてなさそうだったが、いい感じにこんがり焼けている。
その周囲には、たくさんの小皿が並べられていて、色とりどりの塩や香辛料が入っていた。
お好みでそれをつけて食べるのだと言う。
「さあ、お召し上がりください」
と領主が微笑むと、また違う白い服の男が現れ、小さなナイフで丸焼きの肉を削ぎはじめる。
それを数枚ずつ、フェリシアたちの皿にのせてくれた。
サミュエルが笑って小声で言ってくる。
「肉を削ぐための剣ならありますと言ってみてはどうですか?」
肉削ぎの剣は、今も勇者の剣とともに、袋に入って足元に置いてあった。
「そういえば、踊りながら剣で肉を削いでいるのを見たことがありますよ」
笑顔で言うファルコに、その場合、削がれてるのは丸焼きのケモノですか?
生きた人間ですか?
と思いながらフェリシアが食事をしていると、領主が訊いてきた。
「大聖女様はどの料理が一番お好みでしたか?」
動揺していたフェリシアは、
「あ、ワインですかね?」
と言ってしまう。
……すみません、と豪華な料理の数々を前に謝った。
そのとき、伝令の者がやってきた。
「フェリシア様にトレラントから書状がっ」
――トレラントからっ?
とみんな驚く。
フェリシアの目撃情報を追いかけて、ここまで来たらしい。
「まあ、大聖女一行とか目立つからな」
「途中、ドラゴンで飛んだりしてますしね~」
と魔王とサミュエルが言う。
「それにしても、なんの用事なんでしょう?
後宮に戻れとか?」
「もう離縁しようとか?」
「魔王はもう倒したのかとか?」
と全員がいろいろと予想を立ててくる。
ちなみに、魔王はもう倒したのかと言ったのは、魔王だった。
フェリシアは使者をねぎらったあとで、その巻物のような書状を見た。
「……ウィリカだわ」
「……ほんとうにトレラント王のもとに押しかけて行ったんですか」
残って止めればよかった。
国の恥です、とサミュエルが呟く。
だが、そこに記してあったのは、意外な事実だった。
「『お姉様を勇者に仕立てて、後宮から追い出したのは、侍女のララサンダーだと思います』」
おお、とみながどよめく。
魔王が、
「意外と仕事ができるではないか、あの小娘」
と言ったが、手紙にはつづきがあった。
「『ララサンダーを問い詰めた結果、やはりお義姉様が勇者だろうということになりました』」
いや、何故っ!?
と全員でその書状を見つめる。
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