まず、後宮に入れませんっ! ~悪役令嬢として他の国に嫁がされましたが、何故か荷物から勇者の剣が出てきたので、魔王を倒しに行くことになりました

菱沼あゆ

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地図にある町

肝心なときに奴はいない……

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「ひとっ飛びで行こうにも、ドラゴンも肝心なときにはいませんしね~」
「ドラゴンのところまで戻るか?」

 フェリシアと魔王がそんな話をしていると、
「そういえば、例の話のできる水晶玉、ドラゴンのいる湖に落としてますよね」
とサミュエルが言う。

「あれが呼びかけたらどうですか?」
「そうねえ」

「その呼びかけるための、もう一個は何処にあるんだ」

「……うちの城にありますね」

 カタリヤにいるランベルトが持っている。

「城に戻りましょうか?」
と言うフェリシアに、

「あのー、結局、迷路の街に戻った方が早いのでは……」
とファルコが苦笑いして言った。



 全員で迷路の街目指して歩くことになった。

「飛べるときが来たら、飛ぼう」
 魔王はそんなことを言う。

「あの思ったんですが、どうせ飛ぶのなら、迷路の街に向かって歩いてなくてもいいのでは?」

 先に進んだところで、どうせ飛ぶのなら一緒ではないのかと思い、フェリシアは訊いてみたのだが。

「なにを言う。
 私のチカラは有限だ。

 できるだけ、迷路の街に近づいておいた方がいい。
 このくらいなら街まで飛べるな、となったら、飛ぶ」

 ……あなたは本当に魔王なのですか。
 無限のチカラとか持っていないのですか。

 商人に訊いたりしながら、フェリシアたちは迷路の街まで、できるだけ近いルートを探す。

「正確な地図とかあればいいんですけどね」
とサミュエルが呟いた。

「ないの? 地図」

「……カタリヤの城に帰れば、少しはマシなのが」
 やはり、フリダシに戻らねばならないのか。

「城に帰ったら、フェリシアが里心がついて、そこから動かなくなるかもしれないではないか」
と魔王は主張するが、

「いや~、あの城自体には、いい思い出もありますが。
 もう、あそこには私の愛した人たちはいませんしね」
 そうフェリシアは言った。

「そうですね。
 私も城から出てしまいましたね」
と笑ってサミュエルが言う。

「そうね」
と言いながら、サミュエルが出してきた簡易すぎる地図を見ていたが。

 いつもなら、なにかすぐに言い返してくるサミュエルが沈黙しているのに気づく。

「なに?」
と顔を上げると、

「一生ついて行きますっ、フェリシア様っ」
とサミュエルが手を握ってくる。

「えっ? 何故っ?」

「おのれ、お前だけ、フェリシアの愛する人の中に入るとはっ。
 昔馴染みだからといって、大事にされおってっ」
と何故か魔王がサミュエルをなじる。

 なじられても、サミュエルは嬉しそうだった。

 ……いや、魔王様もファルコもスライムもいなくなったら、寂しいですよ。

 そんなこんなで揉めながら、この間とは違うルートを通って迷路の街に戻る。

 そっちの方が近道そうだったからだ。

 やがて、タイルで華やかな装飾がされた建物の立ち並ぶ可愛らしい街に出た。

「わあ、おもちゃ箱みたいねえ」

 早くタネを手に入れなければならないので、急いでいるのだが、なんとなく、市場は覗いてしまう。

 まあ、あの果実がここにもあるかもしれないし、と思って訊いてみたのだが。

 あのとき、おばあさんがひょいとくれた果実なのに、実はそう簡単に手に入らないものだとここでも言われてしまう。

「この土地ではたくさんあるけど、こっちではないとかってありますよね~」
とフェリシアが眉をひそめたとき、兵士の一団がやってきた。

 えっ? なにっ。
 拘束されるっ?
と思ってしまったが、そうではなかった。

 大きな杖を持ち、ローブを羽織った老人が兵士たちの後ろから現れ、
「あなたが噂に聞く大聖女様ですね」
と話しかけてくる。

 ……どんな噂になってんだ、と一行は思った。

「我が街にお立ち寄りくださり、ありがとうございます。
 ぜひ、神殿でおやすみください」
と頭を下げられる。


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