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悪徳公主を観察する離宮の人々
女官頭代理、白英の呟き その2
しおりを挟むそういえば、皇后様は故国でなにをなさって追い出されたのだろう?
黙っていれば、天女の如き麗しさ。
何処の国に行っても、皇后として君臨できそうなのに。
何故、こんな辺境の国に?
「そうだわ。
プリンは黄色だと教えておかないと」
炊事場から眩しい外を眺めながら、皇后様がそう呟かれます。
「プリンはみどり~。
フルフルで美味しそう~」
と歌いながら、明花たちが戻ってきたからのようです。
バニラビーンズの代わりに、パンダンリーフを粉末にして入れたのですが。
そのせいで、緑色になっているものの、本来、プリンというものは、黄色いものなのだそうです。
「プリンは緑って、他国の方に言って、話が噛み合わなかったら困るものね」
……年の割に落ち着き払っている天天はともかく、明花まで、賓客のもてなしに出すおつもりですか?
やさしいが過ぎるのでは。
確かに明花は幼き折から学者である祖父の教育を受けているので、ああ見えて、才女ではありますが。
可愛いけど、言動には問題がありますよ。
まだまだ子どもですからね、
と思っていると、湯兒がやってきました。
「今日はちゃんとした船で来ましたっ」
と威張って言います。
「ええっ?
また来たの?」
とちょうど中に入ろうとした天天が湯兒に言っていました。
「あら、今日は正式なお使いよ」
湯兒は皇后様に向き直ると、その場に膝をついて言いました。
「皇后様、皇后様の兄殿下が近くここを訪ねていらっしゃるそうです」
「お兄様が?」
その言葉に、天天と私は青くなりました。
皇后様がいらっしゃる離宮がこんなにボロボロだなんて知られたら、国的にまずいのでは、と思ったからです。
「そうなの。
じゃあ、それまでにお兄様のお好きな物をお作りしないとね」
「兄殿下のお好きな物って、なんですか?」
材料調達してきますよっ、と湯兒が訊いています。
……それはいいのですが、湯兒。
その皇后様への伝達は本来、伯楽宮の人間がすることではないのでは。
誰かの仕事を奪ってきましたね、と思ってはいたのですが。
あまりたくさんの人間がここに出入りしない方が安全上いいだろうと思い、そこには触れないことにしました。
「そうねえ。
お酒かしら?」
と呟く皇后様に、
「密造ですか……?」
と私と天天は更に青ざめます。
この国では勝手にお酒を作ってはいけないことになっているのです。
それに気づいて、皇后様がおっしゃいました。
「大丈夫よ。
この国ではまだ酒として登録されていないものを作るから」
そ、そうなのですか。
いいのでしょうか。
……いや、いいことにしましょう。
ここに来て、私もずいぶん判断基準が緩くなりました。
そのとき、湯兒がケロッとした顔で皇后様に訊きました。
「そういえば、皇后様って、故国でなにをなさったんですか?
評判悪いですけど」
ひーっ。
湯兒ーっ。
全員が心臓が止まりそうな顔をしました。
でも、実は、ちょっとだけ――
よく訊いてくれたわ、湯兒っ、
と思ってしまったことをここに告白致します。
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