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悪徳公主を監視する後宮の人々
湯兒の四方山話 その5
「うちは普段は西洋蝋燭を使っているのですけど。
このハゼノキの実のアロマキャンドル、揺れ方が幻想的で素敵ですね」
灼永様は宴席で喜んでおられる。
「この炎のゆらゆらとした揺れ方が、皇后様の美しさを引き立てていますわっ」
真珠妃様が天天に、
「ここの蝋燭、何本かもらってきなさい」
と命じるのが聞こえた。
「真珠妃様、何故、私に言わないのですか。
私の方が伯楽宮の侍女ですよ」
と言ってみたが、
「あなたの方が私の侍女かもしれないけど。
あなたの方が言うこと聞きそうにないから」
と言われる。
皇后様も灼永様もそれを聞いて笑っておられた。
皇后様が、
「灼永様にも真珠妃様にも、お土産にアロマキャンドルをお渡ししますわ」
とおっしゃってくださる。
次々と珍しい料理が運ばれてくる。
隅に控えて、さっと動けるように客人たちに目を配りながら、私は思っていた。
……残らないかな、料理。
でも、この人たち意外と食べるんだよな。
残すと料理人に対して、失礼になると思ってるみたいで。
まあもう、味見と称して、つまみ食いはさせてもらったんだけど。
北の山にお住まいの雪潤妃様なんて、雀より召し上がらないから、残り物を侍女たちが食べ放題だと聞いた。
伯楽宮から移動するのなら、この離宮が第一希望だけど。
ここが駄目なら、雪潤妃のところに行きたい、とお料理目当てに思ってしまう。
皇帝陛下の宮殿に行きたがる侍女たちの方が多いから、この離宮も山にある雪潤妃の宮殿も入れてもらいやすいとは思うのだが。
みんな、陛下の目に留まるかもしれない可能性にかけて、皇帝陛下の宮殿を希望しているらしい。
いやいや。
この性格に問題はあるけど、色香漂う真珠妃様にも。
この世の者とも思えぬ麗しき皇后陛下にも手をお出しにならないのに、その辺の侍女が陛下の目に留まるわけもないではないか。
雪潤妃様など、陛下の御渡りがないので、山に篭ってしまわれたくらいなのに。
つまり、陛下には名ばかりの妃たちしかいない。
そんな話を聞き及んでいるのだろう、皇后様の元女官らしい柳泉様がさっきから陛下を値踏みするように見ている。
「お菓子もたくさんあるから、お持ち帰りになって」
と皇后様が灼永様たちにおっしゃる。
我々にもっ、我々にも、少しお残しくださいっ、と縋るように皇后様を見てしまい、天天に呆れた目で見られたが。
いやっ、普段からおこぼれに預かって、美味しいもの食べられるあんたたちとは違うのよっ、と思っていた。
「そちらに入れ物も用意しているから」
と側にいた環玉に皇后様は微笑みかけられる。
「あら、別にいらないのにっ」
といつものように真珠妃様が憎まれ口を叩いた。
いやっ、持って帰ってくださいっ。
大量にあったら、こっちにも回ってくるかもしれないからっ、と焦る。
すかさず、環玉様が言葉を付け足された。
「ありがとうございます。
真珠妃様は、皇后様がいつもハーブティーに添えてお贈りくださる焼き菓子を楽しみにしてらして。
お毒味を通さず、全部ひとりでお召し上がりになってます」
皇后様は微笑み、
「……それは危険よ」
とおっしゃる。
――作った人自らっ。
「それにしても、ここの蝋燭はゆらゆらしてて、なんだか怖い雰囲気ね」
と真珠妃様が言い出した。
いや、あなた、さっき、綺麗に見えると聞いて、欲しがったではないですか、と思っていたが。
まあ、なんでも人の物にケチをつけたがる人だからな、と思う。
だが、皇后様は怒るでもなく、おっしゃる。
「そうねえ。
怖いお話でもしたらよさそうね。
あ、そうだわ。
このあと、別のデザートがあるのですけど。
その前の腹ごなしにちょっとこの蝋燭を持って、島を探検してみられませんか?」
「嫌よ。
こんなところ、なにが出るかわからないじゃない」
と言う真珠妃に、皇后様は、
「幽霊以外は出ないですよ。
船を使わずに、来ようがないですから、こんな離れ小島」
とおっしゃった。
こんな離れ小島という皇后様のお言葉に、柳泉様がキッと陛下を見る。
皇后様をこんな場所に閉じ込めるなんてっ、とあらためて思ったのだろう。
陛下が藪蛇だ、という顔をされていた。
……でもまあ、皇后様に関しては、ここでのびのび楽しそうにされてますけどね。
だが、そういうものでもないのだろう。
仮にも皇后であるのに、この扱いはない、と柳泉様は思っているようだった。
「それに、大丈夫ですよ。
ここの森では、ひとりになったように見えても、ひとりじゃないですから」
いやっ、なにがいるんですかっ。
その方が怖いんですけどっ、と思ったが。
よく考えたら、昼間あった男前の間者とかが見守っているということなのだろう。
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