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この本は私のお守りです
ごちそうさまでしたっ!
しおりを挟む「そういえば、シチューに赤いキノコ、入ってなかったな」
料理の代金を支払いながら、アーレクは言った。
「だから、入ってませんって」
とクリスティアは言うが。
いや、あの料理名のせいで、なんか危険そうな赤いキノコのことしかしか頭に残らなかったんだが……とアーレクは思っていた。
「しかし、料理に特に特徴がないから、名前に凝ってみたと言っていたが。
あれは謙遜だったのだな。
お前はなかなかの料理上手だ」
いえいえ、とクリスティアは赤くなる。
「私はこの本のレシピを見ながら作っているだけで」
そう言いながら、クリスティアは見たこともない文字の本を出してきた。
質の良い紙を使った本だ。
しかも、表紙は、リアルすぎるくらいリアルな素晴らしい絵で。
非常に高価な本のようだった。
「これは写真という物です。
定価は、えーと、2,980円」
本を裏に返してみながらクリスティアが教えてくれる。
……2,980円。
この娘の国の貨幣の価値はわからぬが。
高価な宝石、幾つくらいあれば買えるのだろうか。
「まあ、私は図書館で借りたので。
……そういえば、期限までに返せるのでしょうかね、これ」
とクリスティアは青ざめる。
この娘の国では、高価な紙の本。
しかも、このような素晴らしい絵までついた本を庶民にも無料で貸し出しているのだという。
なんという富んだ国なのだっ。
行ってみたい、この娘の生まれ育った国にっ、とアーレクは思った。
……いや、行ってみたいと思うのは、その素晴らしく栄えた国に行ってみたいというだけで。
この娘の親兄弟に会って、挨拶したいとか。
いろいろ申し込みたいとか、そういうわけではない、と誰にともなく、心の中で弁解しながら。
クリスティアは見たこともないようなツルツルした素材の紙をめくってくれながら教えてくれる。
「これ、ハーブ料理の本なんですよ」
「……何処かにハーブが入っていたか」
「……セロリが入ってましたよ」
と言ったあとで、クリスティアは、
「それが、この辺り、この本にあるようなハーブ、育たないみたいなんですよね。
買うと高価ですしね」
と言う。
「じゃあ、この本、なんのために見てるんだ?」
「……料理の工程を学ぶためですかね?」
例えば、とクリスティアは澄んだスープに少しの肉と野菜が入ったページを開いて言った。
「……刻んで、煮る」
「見る必要あるのか? この本」
えっ? さあ? と苦笑いしたあとで、クリスティアは本を胸に抱き、
「まあ、お守りみたいなものですよ」
と言った。
そんなこんなでクリスティアや常連客に見送られ、美しき騎士アーレクは店を出た。
「おかしな店でしたね。
僕、食べてもいないのに赤いキノコのシチューが夢に出て来そうですよ」
とテオが苦笑いして言う。
アーレクは風に乗って運ばれてくる『可愛いうさぎが住み着いている家のおじさんが絞った牛の乳と赤いキノコがたくさん生えているおうちのおじさんが育てている季節の野菜を使って作ったシチュー』の匂いを嗅ぎながら、テオに訊いた。
「……帰り、また寄ってみるか?」
「はい」
笑顔でテオはそう答える。
神木なんじゃないかと思う巨木のうろには、今日もたくさんの客が訪れている。
いずれ、騎士アーレクも従者テオとともに、高価なハーブを手に、またこの店を訪れることだろう。
そのとき、小ぶりだが、ぎゅっと甘みと酸味のつまったリンゴの果実を手にした王子がやってくるかもしれないし。
王子にどんどんリンゴを持ち逃げされている魔王が追いかけてくるかもしれないが。
どちらにしても、この情報量が多過ぎてなんの料理だかわからない料理ばかりのレストランは、
リアル世界は今、何月何日っ? 本の貸し出し期限過ぎてないっ!?
と焦る娘、クリスティアこと、栗栖しのによって。
本日も、明日も、
騎士アーレクがさらに料理に感激し、
常連になろうっ! と誓うそのときまでも、
ずっと美味しく営業中――。
完
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たえさん、
ありがとうございますっ(⌒▽⌒)
いつも以上に、ぼーっとしてるかもしれませんね(^^;
ありがとうございます。
短いですが、頑張りますね~っ(*^^*)