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わたし、結婚するんでしょうか?
急ぐのですっ!
しおりを挟むお前、ほんとうに人間だったのか、と言われてしまいましたよ?
人間じゃなかったら、なんだったんだろうな、とアリスンは思う。
でも、私はあの神社で巫女をしていたはず。
巫女と言えば、人間では? と思ったが、不安になる。
そういえば、と思うことがあったからだ。
そういえば、前世の記憶は見聞きしたことばかりで、実際に体験したことが少ない。
そもそも、神社の記憶しかない。
何処で暮らしていたのか、家族は何処にいたのかもわからない。
だんだん、アリスンは青ざめてきた。
「……私、なんだったんですかね?」
そういえば、あの家族の会話も気になる。
小さな女の子が自分にイカ焼きをくれようとした。
そうしたら、その子の母親が、そんなものあげちゃ駄目じゃないの。
すみません、と自分に向かい、頭を下げた。
「通りすがりの巫女さんにイカ焼きをあげようとして怒られたっていうより。
なにかにイカ焼きをお供えしようとして止められたって感じですよね……。
私、もしかして、道端のお地蔵様とかだったんですかね?」
「お地蔵様とはなんだ」
とそこで魔王様が問うてきた。
「石や木で彫られたみんなが拝むものです。
昔は神社も寺もいっしょくたになってたりしたので、うちの境内にもあったんですよ」
と言ったあとで、アリスンは、また気づく。
「……でも記憶の中だと、私、みんなと一緒に並んでないですね」
「みんなとは誰だ?」
とまた魔王様に訊かれた。
「他のお地蔵様です。
私がお地蔵様なら、なんで、他のみんなと一緒にズラッと並んでなかったんでしょうね。
うち境内のお地蔵様、一箇所に集めてあったはずなんですが。
今は神社だから」
そう言うと、魔王様は腕組みして考えながら言ってくる。
「境内というのもわからないし。
お地蔵様というのもよくわからないから。
今、私の頭の中では、お前が道端にズラッと並んでいるのだが。
私の想像は合っているか?」
「……たぶん、違うと思いますね」
と言ったあとで、アリスンは言う。
「そうですよね。
神社とか境内とかお地蔵様とか言っても皆さんにはわからないですよね」
想像しにくいか、と思ったとき、開いたままだった部屋の入り口から張りのある声がした。
「ならば、今すぐ作れば良いではないですか」
サイバイン卿だった。
「どうせ神社を作るつもりだったのでしょう。
今すぐ作るのです。
そうすれば、あなたが何処でどのように暮らしていたのか明確に思い描けるでしょう。
ねえ、王子」
とサイバイン卿は王子を見る。
王子はまだ事態についていけずに、あ、ああ……と言っていた。
「私も手を貸しましょう。
王子の助けもあれば、小さな建物くらい、すぐに建つはずです」
「あの~、サイバイン様、何故、そんなに前向きに手を貸してくださるのですか」
とアリスンが問うと、
「私の作ったお守りが売れるところがみたいのだよ、アリスンッ。
そして、それを手に取った民たちが称賛するところをっ。
さあ、王子っ、早く王宮に戻り、王に認可をいただいてくるのですっ」
とサイバインは王子を急かす。
サイバインに追い立てられて出ていく王子を見ながら、ノアが、
「いや~、王子、サイバイン卿の娘を嫁にもらうと、舅の尻に敷かれそうですよね~」
と言って、笑っていた。
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