65 / 86
ゼロどころか、マイナスからの出発
申し訳ございませんでしたっ
しおりを挟むなんかあかり見てると、悩むの莫迦らしくなるな、と青葉が思っているうちに、動物園に行く日がやってきた。
明るいときに行きたいと日向が言ったので、みんなでお弁当を持って、朝から出かける。
真希絵が作ったお弁当だ。
あかりは、
「私も詰めました」
と言っていたが。
来斗とカンナも来ていたので、大吾もついて来るのでは、と青葉は怯えたが。
大吾は、今度は、呪いをかけられた村とやらに行っていていなかった。
青葉さん……
おっと、木南さんの言う、私の恐ろしい秘密ってなんなんだろうな、と思いながら、あかりは重い大きな水筒を抱えて、父親の運転する車から降りる。
横から、ひょいと青葉がその水筒をとってくれた。
「あ、ありがとうございま……」
と言いかけたとき、青葉の車から降りた寿々花が日向に話しかけているのが聞こえてきた。
「きのう、まあちゃんたちとごはん食べに行ったよ~」
と日向が言うのが聞こえてきて、真希絵が震え上がる。
なにも責められていないのに。
いつもはちゃんと作ってますよっ、という顔をしていた。
「そうなの?
何処で食べたの? 日向」
日向は全開の笑顔で寿々花に言う。
「いす~」
そりゃまあ、そうですよね~、とあかりは苦笑いしていたが、寿々花は、
「……そう、偉いわね」
と言っていた。
なんとなくだが、青葉さんが子どものころ、そう答えていたら、叱られていたのではないだろうか。
孫って、やっぱり可愛いんだな、と思いながら、みんなで動物園の門をくぐった。
「ほら、日向が好きなぞうさんだぞー」
と幾夫がぞうが見られる柵のところまで、日向を連れていった。
ところが、首から子供用のカラフルな双眼鏡をさげている日向は、
「ぞうさん、いないよ」
と言う。
「そこで、ぱお~んとか言ってるじゃないか」
ぞうは、ぱお~んは言ってなかったが、のしのし目の前を歩いていた。
「ぞうさんは、これだよ」
と日向は看板に描いてある、水色で、お目目ぱっちりのイラストを指差した。
全員が困る。
そうか……。
子どもにとっては、リアルに象色で(?)、なんかしわしわしてるこのデカイのは、ぞうではないのか、とみんなでしみじみしていたが。
日向は、
「違うよ。
これはマルミミゾウだよ」
とデッカいリアルなぞうさんを指差し、言い出した。
そのあと、さっきの看板を指差し、
「こっちは、ぞうさん」
と言う。
すみません……。
大人の方がぞうさんの種類、存じあげませんでした……。
「いや~、やっぱり、昼間は暑いですね」
ゾロゾロみんなで歩く中。
あかりは苦笑いして、青葉を見たが、青葉は、
「ああ。
だが、なんかいいな。
こうして、みんなで昼間に動物園とか」
と言う。
「……まあ、うちの親がちょっと浮いてはいるんだが」
確かに、ひとりなんかゴージャスな方が混ざっている……。
いや、一応、行楽用の格好をされてはいるのだが、なにかが何処か、ゴージャスで場違いだった。
今にも執事とか現れて、寿々花のために、木陰に白いテーブルや椅子を用意し。
よく冷えたシャンパンとか持ってきそうな感じだ。
だが、そんな寿々花もはしゃぐ日向を見ながら楽しそうだった。
青葉が言う。
「気にしないことにしたよ」
「えっ?」
「過去のなんか恐ろしげな記憶とか。
……まあ、お前絡みだから、ほんとうはなにも怖くないんだろうが。
どうせ、記憶は戻りそうにないし。
一からお前を恋に落とすつもりで頑張るよ」
「あ……、木南さん」
と言うと、まだ木南さんなのか、薄情な奴だな、という顔をされたが。
今、そう呼ばなかったのは、単に恥ずかしかったからだ。
……並んで歩くの、照れるな、とあかりは足を速くするが。
負けじと、青葉も速くする。
しまいには、最後尾にいたはずなのに、先頭の日向たちを追い抜いてしまっていた。
「おねーちゃんたち、急いで、なに見たいのかなー?
ライオンー?」
という日向の声が後ろから聞こえてくる。
そのあと、暑さでダラっと寝ているタヌキたちをみんなで眺めた。
青白いくらい色が白いせいか。
まったく暑さを感じていないように見えるカンナが、ぼそりと言う。
「よく見るわ、こんな感じのタヌキ」
「そうなの?
カンナの家の辺り、タヌキが出るの?」
来斗が驚き訊くと、カンナは深く頷き、
「よくこんな感じで、道で死んでる」
と倒れて寝ているタヌキたちを見て言った。
そ、それは今、みんなが思ってたけど、呑み込んだ言葉では……、
とあかりが思うと同時に、隣にいた知らない男の人が吹き出すのが聞こえてきた。
……あなたもそう思ってたんですね、
とあかりと青葉がその見知らぬ家族連れのお父さんを見ると、お父さんは、
はは……とふたりと目を合わせて笑った。
――なんか知らない人と心が通じ合いましたよ。
タヌキとカンナさんのおかげで。
18
あなたにおすすめの小説
腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~
有木珠乃
恋愛
両親を亡くし、二人だけの姉妹になった一ノ瀬栞と琴美。
ある日、栞は轢き逃げ事故に遭い、姉の琴美が務める病院に入院することになる。
そこで初めて知る、琴美の婚約者の存在。
彼らの逢引きを確保するために利用される栞と外科医の岡。
「二人で自由にならないか?」を囁かれて……。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
思い出のチョコレートエッグ
ライヒェル
恋愛
失恋傷心旅行に出た花音は、思い出の地、オランダでの出会いをきっかけに、ワーキングホリデー制度を利用し、ドイツの首都、ベルリンに1年限定で住むことを決意する。
慣れない海外生活に戸惑い、異国ならではの苦労もするが、やがて、日々の生活がリズムに乗り始めたころ、とてつもなく魅力的な男性と出会う。
秘密の多い彼との恋愛、彼を取り巻く複雑な人間関係、初めて経験するセレブの世界。
主人公、花音の人生パズルが、紆余曲折を経て、ついに最後のピースがぴったりはまり完成するまでを追う、胸キュン&溺愛系ラブストーリーです。
* ドイツ在住の作者がお届けする、ヨーロッパを舞台にした、喜怒哀楽満載のラブストーリー。
* 外国での生活や、外国人との恋愛の様子をリアルに感じて、主人公の日々を間近に見ているような気分になれる内容となっています。
* 実在する場所と人物を一部モデルにした、リアリティ感の溢れる長編小説です。
【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます
鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────
私、この子と生きていきますっ!!
シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。
幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。
時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。
やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。
それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。
けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────
生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。
※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
妖狐の嫁入り
山田あとり
恋愛
「――おまえを祓うなどできない。あきらめて、俺と生きてくれ」
稲荷神社の娘・遥香(はるか)は、妖狐の血をひくために狐憑きとさげすまれ、ひっそり生きてきた。
ある日、村八分となっている遥香を探して来たのは怨霊や魔物を祓う軍人・彰良(あきら)。
彼は陰陽師の名門・芳川家の男だった。
帝国陸軍で共に任務にあたることになった二人だったが、実は彰良にもある秘密が――。
自己評価は低いが芯に強さを秘める女が、理解者を得て才能を開花させる!
&
苦しみを抱え屈折した男が、真っ直ぐな優しさに触れ愛を知る!
明治中期風の横浜と帝都を駆ける、あやかし異能ロマンス譚です。
可愛い妖怪・豆腐小僧も戦うよ!
※この作品は、カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される
絵麻
恋愛
桐島花は父が病没後、継母義妹に虐げられて、使用人同然の生活を送っていた。
父の財産も尽きかけた頃、義妹に縁談が舞い込むが継母は花を嫁がせた。
理由は多額の結納金を手に入れるため。
相手は二十五歳も歳上の、海軍の大佐だという。
放り出すように、嫁がされた花を待っていたものは。
地味で冴えないと卑下された日々、花の真の力が時東邸で活かされる。
【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~
蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。
嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。
だから、仲の良い同期のままでいたい。
そう思っているのに。
今までと違う甘い視線で見つめられて、
“女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。
全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。
「勘違いじゃないから」
告白したい御曹司と
告白されたくない小ボケ女子
ラブバトル開始
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
椿かもめ
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる