ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ

文字の大きさ
82 / 86
ちちんぷいぷい

現実は、ドラマのようにはいかないので

しおりを挟む
 
 ドラマなんかだと、真相にたどり着いたら、すべてを捨てて、ヒロインの許に走っていくのだろうが。

 現実には、本日やるべき仕事を片付けたり、後日に割り振ったりしなければ、何処へも行けない。

 そんな中で、青葉もあのお茶が何処をぐるぐる回っていたかについて調べ。

 嶺太郎が作ったという、この公園になんとか、たどり着いたのだが。

 もうあかりの告白は、

「そして、私の母、真希絵が産まれたのです」
 まで来てしまっていた。

「いや、話飛びすぎでしょっ」
と寿々花が叫んでいる。

 話飛びすぎだろ、と青葉も心の中で思っていた。

 一瞬、自分の登場が遅すぎたせいで、話が終わってしまったのかと思ったが。

 前のセリフは、確かに、

「その偶然に二人は目を見合わせて笑い――」
 だった。

「でも、祖父には許嫁がいたんですよね」
とあかりはまた語り出す。

「それで、祖母は、こっそり私の母を産んだんですが。

 そのことを祖父に知られまして。

 でも、祖父はもう、その許嫁の人と結婚していたので、祖母はそっとしておいて欲しいといって。

 お茶の先生で身を立て、母を育てたんだそうです。

 まあ、祖父はしょっちゅう家を覗きに来たり、妹の孫の嶺太郎さんにお茶を習わせたりと、いろいろとやってたみたいなんですけど。

 祖母は、ともかく、私の人生に関わらないでと、祖父をはねつけていました。

 祖父は妻との間に子どもがおらず、厄介ごとに巻き込まれそうだったからです。

 母もその考えは変わらず、祖父とは距離を置いていました」

「……金と権力より、自由に生きたかったわけね」

 真希絵さんらしいわ、と寿々花は言った。

 寿々花ももう、あかりの祖父が何者なのかわかっているようだった。

「申し訳なかったわね」
と寿々花があかりに言う。

「日向に、真希絵さんと同じ道を歩ませて」

 そう、真希絵も日向も同じ、父親にその存在を知られていないシークレットベビーとして生まれてきたのだ。

「俺は日向を実子としてちゃんと育てるぞ」

 その言葉に、ようやく二人が振り向く。

 青葉は、あかりを見て言った。

「それから、俺はお前を自由になんかさせないぞ。
 お前が店を閉めて消えても、何処までも追いかけて、絶対、家族三人で暮らしてやる」

「青葉」
「青葉さん」

 やっと青葉と呼んだな、とようやくちょっとホッとした。

 実は、話を聞きながら、日向を何度も滑り台の上に抱き上げてやっていたのだが。

 その無限に続くかのような作業をまた続けながら、青葉はあかりの話を聞く。

 子どもはなんで同じ遊びを繰り返しても飽きないんだろうなと思いながら。

「……祖父は前から、私たちを引き取りたがっていました。
 跡取りがいないので。

 こちらにくればなんでも叶えてやると、ずっと言われてて。

 欲しいものはなんでも手に入るっていうのは、子どもにとっては魔法の呪文だったけど。

 なんでも手に入る代わりに、大切なものを失ってしまいそうだというのは、子ども心にも感じていて。

 私たちが、その呪文を唱えることはありませんでした」

『おじいちゃんちの子になる』

 その一言を言えば、大抵の願い事は叶ってしまう。

 政財界の黒幕、吾妻陽平あがつま ようへいの跡取りになる覚悟を決めれば――。

 だが、なんでも叶うかわりに、制約も多くなり、自由もなくなる。

 早くに呪文を発動していれば、あかりと自分がフィンランドで、ぼんやり出会うこともなく。

 あかりが、通りすがりの小学生に怪しい呪文を教えて踊っていたりするようなこともなかっただろう。

「まあ、結局、来斗がカンナさんのご両親に家柄が釣り合わないからと結婚を反対され、呪文を発動してしまったんですけどね」

「……吾妻の家とカンナの家じゃ、逆に釣り合わなくなってない?」
と寿々花は心配する。

「そんなことないですよ」
と言ったあとで、あかりは表情を少し暗くして言った。

「来斗が吾妻の家に入る条件は、私たちも一緒に戻ること。

 やっぱり、いいことだけ叶う万能な呪文なんてありませんでした。

 だけど、私は、来斗たちには、親子三人、最初から一緒に仲良く暮らして欲しいなって思って」

「……親子三人?」
と寿々花と二人、訊き返す。

 あかりが、
「……すみません。
 意外に手の早い弟で」
と謝ったが、寿々花は、

 いや、手の早いのはうちにもいる、という顔をして、こちらを見ていた。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

思い出のチョコレートエッグ

ライヒェル
恋愛
失恋傷心旅行に出た花音は、思い出の地、オランダでの出会いをきっかけに、ワーキングホリデー制度を利用し、ドイツの首都、ベルリンに1年限定で住むことを決意する。 慣れない海外生活に戸惑い、異国ならではの苦労もするが、やがて、日々の生活がリズムに乗り始めたころ、とてつもなく魅力的な男性と出会う。 秘密の多い彼との恋愛、彼を取り巻く複雑な人間関係、初めて経験するセレブの世界。 主人公、花音の人生パズルが、紆余曲折を経て、ついに最後のピースがぴったりはまり完成するまでを追う、胸キュン&溺愛系ラブストーリーです。 * ドイツ在住の作者がお届けする、ヨーロッパを舞台にした、喜怒哀楽満載のラブストーリー。 * 外国での生活や、外国人との恋愛の様子をリアルに感じて、主人公の日々を間近に見ているような気分になれる内容となっています。 * 実在する場所と人物を一部モデルにした、リアリティ感の溢れる長編小説です。

明日のために、昨日にサヨナラ(goodbye,hello)

松丹子
恋愛
スパダリな父、優しい長兄、愛想のいい次兄、チャラい従兄に囲まれて、男に抱く理想が高くなってしまった女子高生、橘礼奈。 平凡な自分に見合うフツーな高校生活をエンジョイしようと…思っているはずなのに、幼い頃から抱いていた淡い想いを自覚せざるを得なくなり…… 恋愛、家族愛、友情、部活に進路…… 緩やかでほんのり甘い青春模様。 *関連作品は下記の通りです。単体でお読みいただけるようにしているつもりです(が、ひたすらキャラクターが多いのであまりオススメできません…) ★展開の都合上、礼奈の誕生日は親世代の作品と齟齬があります。一種のパラレルワールドとしてご了承いただければ幸いです。 *関連作品 『神崎くんは残念なイケメン』(香子視点) 『モテ男とデキ女の奥手な恋』(政人視点)  上記二作を読めばキャラクターは押さえられると思います。 (以降、時系列順『物狂ほしや色と情』、『期待ハズレな吉田さん、自由人な前田くん』、『さくやこの』、『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい』、『色ハくれなゐ 情ハ愛』、『初恋旅行に出かけます』)

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

友達婚~5年もあいつに片想い~

日下奈緒
恋愛
求人サイトの作成の仕事をしている梨衣は 同僚の大樹に5年も片想いしている 5年前にした 「お互い30歳になっても独身だったら結婚するか」 梨衣は今30歳 その約束を大樹は覚えているのか

愛してやまないこの想いを

さとう涼
恋愛
ある日、恋人でない男性から結婚を申し込まれてしまった。 「覚悟して。断られても何度でもプロポーズするよ」 その日から、わたしの毎日は甘くとろけていく。 ライティングデザイン会社勤務の平凡なOLと建設会社勤務のやり手の設計課長のあまあまなストーリーです。

妖狐の嫁入り

山田あとり
恋愛
「――おまえを祓うなどできない。あきらめて、俺と生きてくれ」 稲荷神社の娘・遥香(はるか)は、妖狐の血をひくために狐憑きとさげすまれ、ひっそり生きてきた。 ある日、村八分となっている遥香を探して来たのは怨霊や魔物を祓う軍人・彰良(あきら)。 彼は陰陽師の名門・芳川家の男だった。 帝国陸軍で共に任務にあたることになった二人だったが、実は彰良にもある秘密が――。 自己評価は低いが芯に強さを秘める女が、理解者を得て才能を開花させる!   & 苦しみを抱え屈折した男が、真っ直ぐな優しさに触れ愛を知る! 明治中期風の横浜と帝都を駆ける、あやかし異能ロマンス譚です。 可愛い妖怪・豆腐小僧も戦うよ! ※この作品は、カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

絵麻
恋愛
 桐島花は父が病没後、継母義妹に虐げられて、使用人同然の生活を送っていた。  父の財産も尽きかけた頃、義妹に縁談が舞い込むが継母は花を嫁がせた。  理由は多額の結納金を手に入れるため。  相手は二十五歳も歳上の、海軍の大佐だという。  放り出すように、嫁がされた花を待っていたものは。  地味で冴えないと卑下された日々、花の真の力が時東邸で活かされる。  

処理中です...