ここは猫町3番地の2 ~限りなく怪しい客~

菱沼あゆ

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限りなく怪しい客

お客様の事情には首を突っ込むまいとは思ってるんですけどね

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 龍哉を見送ったあと、カウンターに戻ってきた琳が、コーヒーサイフォンを見つめていると、将生が、
「どうした?」
と訊いてきた。

「いえ、あまりお客様の事情には首を突っ込むまいとは思ってるんですけどね」

「まあ……犯人を犯人でなくしようと思うくらいだからな」

 前回の事件のことを言っているのだろう。

「……でも、どうしても、お客様には変に思い入れをしてしまって。
 いろいろと見過ごすことができないんです」

 そう言うと、将生は何故か、じっとこちらを見つめてきた。

「どうしました?」
と訊いてみたのだが、将生は、いや、と言っただけで語らず、帰ってしまった。


 次の日。
 なんかいろんなことがちょっとずつ引っかかるなーと思いながら、琳は最近できた、ちょっと変わったもののあるスーパーに行ってみた。

 そういえば、この近くだったな、安達さんが言ってたアパートって、と思ったとき、ちょうどその刹那がカゴを手に歩いてきた。

「ああ、店長さん」
と刹那も琳に気づいて声をかけてくる。

「て、店長さんはやめてください……。

 その呼ばれ方、慣れていないので。
 雨宮でも、琳でもいいです」

 お好きにお呼びください、と琳が言うと、刹那はちょっとだけ笑ってみせる。

「じゃあ、雨宮さん。
 お買い物ですか?」

「ええ、ちょっと。安達さんも?」

 そう返しながら、琳は思う。

 これつて、スーパーで、よくある会話だけど。
 よく考えたら、妙な会話だよな~。

 スーパーなんだから、お買い物に決まってるよね。

 っていうか、安達さんって、スーパーでお買い物とかするんだ?

 当たり前だけど、意外だな。
 安達さん、生活感ないからな~。

 いや、違うか、と琳は気づいた。

 生活感がないんじゃなくて、生きてる感じがしないんだ……。

 そのとき、見るつもりはなかったのだが、刹那のカゴの中が見えてしまった。

 チーズに炭酸水に、箱入りのアイス。

 やっぱりなんだか生活感がないな、と思いながら、琳は頭を下げ、通り過ぎた。
 

 外に出ると、駐車場にある林の向こうの空が青紫色になっていた。

 ずいぶん日が落ちてきたようだ。
 そろそろ戻らねば、と琳は思った。

 店は今、常連のおばあちゃんたちが見てくれている。

「琳ちゃん、お客さん来たら相手しとくから、今のうちに買い物でも行ってきなよ」
と言われて出て来たのだ。

「でも、あの男前の警察の人は、店に居るのが私たちだけだったら、Uターンして帰っちゃうだろうけどね」

 ひひひ、とおばあちゃんたちは笑っていたのだが。

 ……誰だろうな、男前の警察の人って、と琳は思っていた。

 佐久間さんか?

 警察と聞いたので、まず、刑事の佐久間を先に思い浮かべてしまったのだ。

 佐久間さん、男前かな? と琳は小首を傾げる。

 佐久間はどちらかと言えば、ぬいぐるみ的な可愛さのある男だからだ。

 そのとき、
「雨宮さん」
と呼びかける声がした。

 外の自動販売機の側に刹那が居た。

 白いビニール袋の中から、アイスを一本取り出し、琳に向けてくる。

「アイス、ご一緒にいかがですか?」

 ……この人も唐突な人だな、と思いながらも、
「ありがとうございます」
と言って、ありがたく、いただいた。

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