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第二話「百点のとれる鏡」
鏡の向こう
しおりを挟む電気をつけたら、先生たちに気づかれそうなので、なづなたちは月の明かりをたよりに、踊り場で輪になって話す。
「これとこれ。
先生が出るって言ってた問題。
それと似たのをネットとかで探してきたよ」
となづなが二人に印刷してきた紙を見せると、助かる~っ、と小声で感謝され、拝まれる。
「俺も一応、出そうな問題を問題集からピックアップしてきた」
「宮本、意外に親切じゃないっ」
と言うスマ子に宮本は、
「お前たちに教えても、俺の順位を抜きそうにないからな」
とそっけなく言う。
「ほんっとうに可愛くないわね、あんた」
そう言ったあとで、スマ子は、でも、待てよ、と手を打った。
「そうよ。
鏡が答えを教えてくれなくても、あんたたちが教えてくれたらいいんじゃない」
「そんな暇ない。
自分の勉強があるのに。
俺はただ、ほんとうにこの鏡が答えを映し出す鏡なのかを確かめたくて来ただけだ」
そう宮本は答えていた。
「この問題は絶対出ると思うんだけど。
高校入試の問題にもなってるし」
となづなが印刷してきた問題のひとつを指差すと、
「うん。
じゃあ、鏡に見せてみようか」
と李都が言う。
李都は、その問題を見せるように、鏡に向かい、両手で突き出す。
だが、なにも起こらない。
「李都、バカみたいよ」
「うるさいな。
霊にだって、考える時間が必要だろ」
と李都はスマ子に言い返している。
「そうだよね。
パソコンだって、あんまりややこしいこと打ち込むと、重くてなかなか動かないもんね」
李都となづなは、そう言い、特に変化のない鏡を見つめていた。
李都は、なんとか問題を解いて欲しくて必死で。
なづなは、零の姿を映したほどの鏡に、なにも起こらないなんてことはないと信じていたから。
「ねえ、もういい加減……」
一番気の短いスマ子がそう言ったとき、鏡に映っている方のプリントに変化があった。
細く、ちょっとクセのある字が書かれていった。
だが、それは途中で止まる。
文字が消えていった。
しばらしくて、またつづきがあらわれる。
「ねえ、これ、誰かが向こうで解いてない?」
「誰かって誰だよ。
っていうか、向こうって、どこだよ?」
とスマ子と李都がもめている。
「パッと答えがあらわれるのかと思ったけど、違うんだね」
そうなづなが言っている間に、解答欄に答えが入った。
「問題は文字が逆になってるのに。
答えはちゃんとこっちに見えるように普通の文字になってる」
そうなづなが言うと、
「そういや、逆の文字って、鏡文字って言うよね。
悪魔が使う文字なんだって」
と李都が言った。
「なにそれ」
と言うスマ子に、
「って、前、子ども向けのオカルト番組に出たとき言ってた」
と李都は言う。
そんな二人のしょうもない会話を無視するように、真剣に鏡をながめていた宮本が、
「うん、だいたい合ってる」
と頷いた。
だいたい……っ? とスマ子たちが振り向いた。
「いや、解き方にまどろっこしいところがあるというだけだ。
ちょっと古い解き方だな」
……呪いの鏡にケンカ売ってる。
「なんでもいいよっ。
合ってそうなら、僕、写して覚えるよっ」
と李都が意外に大人っぽい綺麗な字で、ノートに問題と答えを書きはじめた。
意外に大人っぽい字っていうのも変か、となづなは思う。
李都くん、単に、童顔なだけだもんな。
「じゃあ、次に、ネットで見つけたが、正解がわからないこの問題を」
宮本は、そう言って鏡に自分のノートを見せる。
鏡に映っている方のノートに、またあの字が映りはじめた。
「でも、誰にも正解がわからないのなら、この鏡に映っていることが正解かどうかわからないじゃん」
と李都が言う。
すると、それを聞いていた零が、
「まあ、俺でも答えを探せないこともないこともないんだが。
お前が俺をゲームのキャラと結びつけたから、ネットと深くつながれるから」
と言う。
今は鏡に映っていないので、誰にも彼の声は聞こえていないようだった。
「だが、ネットの答えだから、ときどき間違ってるんだけどな」
じゃあ、やっぱり百点にはならないじゃん、となづなは思う。
まあ、二人は百点とれなくても、赤点でなければいいようなんだが――。
宮本が舌打ちするのが聞こえてきた。
「今、鏡が答えを出すの、俺より早かったな。
俺より賢い誰かが向こうで解いている……認めたくはないが」
何故、あなたは霊と張り合うんですか、と思う。
だが、そうして、みんなといる間も、やっぱり、この学園の下の方から引っ張られる感じがしていた。
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