怪奇迷宮366 ~あやかし探偵と私~

菱沼あゆ

文字の大きさ
9 / 11
第二話「百点のとれる鏡」

鏡の向こう

しおりを挟む
 

 電気をつけたら、先生たちに気づかれそうなので、なづなたちは月の明かりをたよりに、踊り場で輪になって話す。

「これとこれ。
 先生が出るって言ってた問題。
 それと似たのをネットとかで探してきたよ」
となづなが二人に印刷してきた紙を見せると、助かる~っ、と小声で感謝され、拝まれる。

「俺も一応、出そうな問題を問題集からピックアップしてきた」

「宮本、意外に親切じゃないっ」
と言うスマ子に宮本は、

「お前たちに教えても、俺の順位を抜きそうにないからな」
とそっけなく言う。

「ほんっとうに可愛くないわね、あんた」
 そう言ったあとで、スマ子は、でも、待てよ、と手を打った。

「そうよ。
 鏡が答えを教えてくれなくても、あんたたちが教えてくれたらいいんじゃない」

「そんな暇ない。
 自分の勉強があるのに。

 俺はただ、ほんとうにこの鏡が答えを映し出す鏡なのかを確かめたくて来ただけだ」

 そう宮本は答えていた。
 
「この問題は絶対出ると思うんだけど。
 高校入試の問題にもなってるし」
となづなが印刷してきた問題のひとつを指差すと、

「うん。
 じゃあ、鏡に見せてみようか」
と李都が言う。

 李都は、その問題を見せるように、鏡に向かい、両手で突き出す。

 だが、なにも起こらない。

「李都、バカみたいよ」

「うるさいな。
 霊にだって、考える時間が必要だろ」
と李都はスマ子に言い返している。

「そうだよね。
 パソコンだって、あんまりややこしいこと打ち込むと、重くてなかなか動かないもんね」

 李都となづなは、そう言い、特に変化のない鏡を見つめていた。

 李都は、なんとか問題を解いて欲しくて必死で。
 なづなは、零の姿を映したほどの鏡に、なにも起こらないなんてことはないと信じていたから。

「ねえ、もういい加減……」
 一番気の短いスマ子がそう言ったとき、鏡に映っている方のプリントに変化があった。

 細く、ちょっとクセのある字が書かれていった。
 だが、それは途中で止まる。

 文字が消えていった。
 しばらしくて、またつづきがあらわれる。

「ねえ、これ、誰かが向こうで解いてない?」

「誰かって誰だよ。
 っていうか、向こうって、どこだよ?」
とスマ子と李都がもめている。

「パッと答えがあらわれるのかと思ったけど、違うんだね」
 そうなづなが言っている間に、解答欄に答えが入った。

「問題は文字が逆になってるのに。
 答えはちゃんとこっちに見えるように普通の文字になってる」

 そうなづなが言うと、
「そういや、逆の文字って、鏡文字って言うよね。
 悪魔が使う文字なんだって」
と李都が言った。

「なにそれ」
と言うスマ子に、

「って、前、子ども向けのオカルト番組に出たとき言ってた」
と李都は言う。

 そんな二人のしょうもない会話を無視するように、真剣に鏡をながめていた宮本が、
「うん、だいたい合ってる」
と頷いた。

 だいたい……っ? とスマ子たちが振り向いた。

「いや、解き方にまどろっこしいところがあるというだけだ。
 ちょっと古い解き方だな」

 ……呪いの鏡にケンカ売ってる。

「なんでもいいよっ。
 合ってそうなら、僕、写して覚えるよっ」
と李都が意外に大人っぽい綺麗な字で、ノートに問題と答えを書きはじめた。

 意外に大人っぽい字っていうのも変か、となづなは思う。
 李都くん、単に、童顔なだけだもんな。

「じゃあ、次に、ネットで見つけたが、正解がわからないこの問題を」

 宮本は、そう言って鏡に自分のノートを見せる。
 鏡に映っている方のノートに、またあの字が映りはじめた。

「でも、誰にも正解がわからないのなら、この鏡に映っていることが正解かどうかわからないじゃん」
と李都が言う。

 すると、それを聞いていた零が、
「まあ、俺でも答えを探せないこともないこともないんだが。
 お前が俺をゲームのキャラと結びつけたから、ネットと深くつながれるから」
と言う。

 今は鏡に映っていないので、誰にも彼の声は聞こえていないようだった。

「だが、ネットの答えだから、ときどき間違ってるんだけどな」
 じゃあ、やっぱり百点にはならないじゃん、となづなは思う。

 まあ、二人は百点とれなくても、赤点でなければいいようなんだが――。

 宮本が舌打ちするのが聞こえてきた。

「今、鏡が答えを出すの、俺より早かったな。
 俺より賢い誰かが向こうで解いている……認めたくはないが」

 何故、あなたは霊と張り合うんですか、と思う。

 だが、そうして、みんなといる間も、やっぱり、この学園の下の方から引っ張られる感じがしていた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!

山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」 夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

二十年以上無視してきた夫が、今さら文通を申し込んできました

小豆缶
恋愛
「お願いです。文通から始めてもらえませんか?」 二十年以上会話もなかった夫――この国の王が、ある日突然そう言ってきた。 第一王妃マリアは、公爵家出身の正妃。だが夫はかつて、寵愛する第三王妃の話のみを信じ、彼女を殴ったことがある。その事件が原因で、マリアは男性恐怖症が悪化して、夫と二人きりでは会話すらできなくなっていた。 それから二十年。 第三王妃はとある事故で亡くなり、夫は反省したらしい。だからといって――今さら夫婦関係をやり直したいと言われても遅すぎる。 なのに王は諦めない。毎日の手紙。花を一輪。夜食の差し入れ。 不器用すぎる求愛に振り回されるうち、マリアの中で止まっていた感情が少しずつ動き始める。 これは、冷えきった政略夫婦が「文通」からやり直す恋の話。 ※本作は「存在されていないことにされていた管理ギフトの少女王宮で真の家族に出会う」のスピンオフですが、単体で読めます。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

婚約破棄?いいですけど私巨乳ですよ?

無色
恋愛
 子爵令嬢のディーカは、衆目の中で婚約破棄を告げられる。  身分差を理由に見下されながらも、彼女は淡々と受け入れようとするが、その時ドレスが破れ、隠していた自慢のそれが解き放たれてしまう。

処理中です...