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第二話「百点のとれる鏡」
月夜の晩に――
しおりを挟む今日はちょうど満月だった。
月の光の中、見上げる学校はなんだか幻想的だ、となづなは思う。
まだ職員室には灯りがついていたので、防犯装置は動いていなかった。
昇降口からそっと忍び込む。
靴箱で上履きをとろうとしたが、歩くと、きゅっきゅと音がするのでやめておいた。
靴下汚れるな~と思いながら、階段のほうに行く。
月明かりと職員室からもれる明かりで、そんなに暗くなく、ちゃんと零がついて来てくれていることも確認できた。
階段を上がりながら、なづなは下を―― 零がいる方を見て言う。
「そういえば、ここって地下に向かう階段、あるよね。
なにがあるんだろうね」
「倉庫とかじゃないか?」
そんな話をしている間も、なにかが下から自分を引っ張ろうとしているように感じて、身構えてしまう。
あの踊り場に行くと、宮本だけがいた。
腕を持ち上げないまま小さく手を振ってくる。
その仕草が意外で、ちょっと可愛らしく、笑ってしまった。
「あれっ? あとの二人は?」
「あの二人が時間通りに来るわけないだろ?」
それより、潮原、と宮本は、なにもかも見透かすような目で、なづなを見つめ、訊いてくる。
「今、誰かとしゃべってたか?」
しまった。
声って下から上へ響くんだよな。
階段だとまっすぐ上に上がっちゃうか。
そう思いながらも、
「独り言だよ」
となづなは笑った。
「……じゃあ、こいつは誰?」
宮本は、100点をとらせてくれる呪いの(?)鏡を指差す。
そこには、なづなの後ろに立つ零が映っていた。
「零さん……、なんで映っちゃってるんですか」
黒い服に白い肌の男が腕を組み、鏡に映るおのれの姿を眺めている。
「ほう。
これが俺か。
なかなかに美しい」
あなたというより、ゲーム中のモブキャラですけど、と思いはしたが。
あれはただのドット絵から私が妄想を膨らませただけのものだから。
もしかして、この顔自体は、この人自身のものなのかもな、となづなは思った。
そんな零に向かい、宮本が問う。
「誰なんだ、お前は」
さあね、と零は綺麗な形をした唇の端を少し上げて言う。
「それは俺にもわからない。
こいつに見つけられたところから、俺の記憶ははじまっているから」
なづなが見つけるまで、零はただ、あの場をふわふわと漂っていただけだったのだと言う。
鏡に映った零の言葉は、宮本にも聞こえているようだった。
なづなと零から事情を聞いた宮本だったが、今、ここにいる零を見ても、まだ半信半疑のようだった。
そのとき、下から、けたたましい声が響いてきた。
どどどっと争うように、スマ子と李都が現れる。
「あんた、なに遅れてきてんのよっ」
「スマ子こそっ、ぼくのうしろから来たじゃないっ」
あら? とスマ子がこちらを、というか、鏡を見て言った。
「今、三人いなかった?
ここにすごいイケメンが映ってた気がしたんだけどっ」
どうやら、鏡に映った零の姿を見ていたようだ。
スマ子は、チラ、と宮本を見たあとで、眉をひそめる。
「宮本だったのかしら? すごいイケメン……には違いないけど、好みじゃないんだけどなあ」
と言って、
「好みじゃないのは、俺もだよ」
と宮本に言い返されていた。
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