同窓会に行ったら、知らない人がとなりに座っていました

菱沼あゆ

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なんのスランプ!?

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「二人はお知り合いなんですか?」

 知り合いじゃなかったら、同じ車に乗ってないだろうよ、と思いながら、田中は若林とめぐるのあとについて階段を上がっていた。

「ああ、もしかして、あれですか?
 スランプな天才同士、なにか語り合ってたとか?」

 スランプな天才!?

 こいつ、なんの天才なんだっ?

 少なくとも運転技術じゃなさそうだし。

 食堂や和菓子屋のカリスマ店員でもなさそうだが。

 っていうか、いきなり本人たちにそう言って斬り込んでくるとは、相変わらず、すごいな、若林っ。

 悪い意味でっ、と田中は思っていた。

 若林は雑誌の編集だった。

 何度か取材を受けたことがある。

 めぐるが和菓子を買いに来た田中を送ってきただけだと言うと、若林は、

「送迎付きの和菓子屋なんですか?」
とめぐるに訊く。

 いや、そんな莫迦な。

 俺の好みかどうかはともかくとして。

 これだけの美人が送り迎えしてくれると聞いたら、男の客が殺到しそうだ、と田中は思う。

「めぐる先生、和菓子も作るんですか?」
「いや、売ってるだけです」

 和菓子も?
 ということは、こいつは、他の菓子か料理を作る奴なんだろうか?

 料理……

 はないか?

 あの食堂では、まったく料理を作ってる風にはなかったし。

 スランプだからか?

 若林は自分もめぐるの正体を知っていると思っているらしく、どんどん話を進めていくので、

 この人何者なんですかとも聞きづらく、田中は、ひとり、いろいろと推理していた。
 


「いいなあ、俺も田中さんと同じ車に乗りたかったな~。
 っていうか、お前こそついてくって言うかと思った」

 めぐるたちが出発したあと、居間で田中一郎(画面上の)を見ながら雄嵩たちはアイスを食べていた。

「……いや、あの二人は、二人きりにするべきだ」
と雄嵩は主張する。

「考えてみろ、充則。
 姉貴と田中さんが付き合ったりしたら……」

「いいな、それっ」

 田中さんにいろいろ教えてもらえるかもっ、と二人は期待する。

「っていうか、田中さんの弟になったら、すげえよな俺」
と、

「いや、それ、すごい?」
とめぐるが眉をひそめそうなことを雄嵩は言った。

「じゃあ、俺、田中さんの弟の友だちになるのかー。
 すげえな、俺」
と充則が言う。

 類は友を呼んでいた。

「っていうか、お前、そもそも、あのめぐるさんの弟じゃん。
 すごいな、めぐるさんにホットケーキ作ってもらったりしてたんだろ?」

 どんなホットケーキなんだろう、と夢見るような顔で言う充則に雄嵩は言った。

「いや、混ぜるだけのやつだぞ」

「えー?

 でも、めぐるさんって、海外のコンテストで何度も優勝してる天才パティシエなんだよねっ?」

「いや、あいつ、家だとすさまじく手抜きな奴だからな」

「海外にも早くから修行に行ってて――」

「そう報道されてるが。
 母親の海外赴任についてってただけだからな」

「ええーっ?」

「でもまあ、あいつは……」
と言いかけて、雄嵩は口ごもる。

「やっぱり、天才的だった?
 インスタントでも」

 配合が素晴らしいとか、と充則は言う。

「最初から配合してあるだろ、インスタント」

「でも、美森みもりちゃんがホットケーキを小さく焼いて重ねたの持ってきてくれたとき、牛乳入れて混ぜるの大変だったーとか言ってたよ」

「……誰なんだ、美森ちゃん。
 そして、そんな彼女はどうなんだ」

「彼女いねえよ、知ってるだろ?
 中学のときの同級生だよ」

「わざわざ持ってきて、大変だったーとか言ってたんだろ?
 お前に気があるんじゃないの?」

「えっ?
 そうかなあー?」
とかいう話を二人がしているころ、田中はまだ、めぐるが何者かわからずに困っていた。
 


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