都市伝説探偵 イチ ~言霊町あやかし通り~

菱沼あゆ

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「ふっかつのじゅもん」

この街、私が作ったんじゃないですよ

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「上からヤクザ、地面からマフィア。
 なんなんだ、この街は、乃ノ子、どうにかしろ」
と乃ノ子はイチに罵られていた。

 いや……私の意思でどうにかなるものではないと思いますね。

 イチさんは、此処、私が作ったと思ってるみたいですけど。
 そんなこともないので、と思いながら、乃ノ子はイチと街を進む。

 ふと気づいて、訊いてみた。

「そういえば、このゲームには『ふっかつのじゅもん』はないんですかね?」

「あるんじゃないか?
 そういうパスワード的なものは。

 でも、それにはまず、セーブしないとな。
 長老とか、なんとかの泉とかないのか?」
とイチは周囲を見回す。

「まあ、死なずに目が覚めたら、コンティニューできるようだから、ないのかもしれないが」

 そうですか、と言った乃ノ子は、
「いや、この世界でイチさんが死んでしまっても、『ふっかつのじゅもん』があったら、死ぬ前の状態からコンティニューできるんじゃないかなと思って」
と言う。

「いや、生きた人間が死んで、それで生き返るか?」

 そう懐疑的にイチは言ってくるのだが。

 いや~、そもそも、生きた人間だったら、この世界で死なないと思うんですよね、と乃ノ子は思う。

 イチさんが生きているのか死んでいるのか、微妙な感じの人だから、どちらが適応されるのかわからないだけで。

「まあ、じゃあ、とりあえず、長老的なのを探してから、先へ進むか」

 そう言いながら、イチは近くのビルに入って行った。

 廃墟のようなビルに赤い甲冑の男。

 なんとも言えずシュールな感じだ、と思いながら、乃ノ子はイチの後に続いていった。

 イチは一部屋ずつドアを開けてみている。

「……なにもないな」

「やっぱり、いないんですかね? 長老」
ともう長老が教えてくれるものと決めつけ、乃ノ子は呟く。

「でも、これ、全部の建物確認して歩くの大変ですよね。
 その間に、今日はもう目が覚めそうですが」
と乃ノ子が言うと、イチは、

「そうだな。
 もう少し探索したら、先に進んでみるか。

 エリアごとにセーブポイントありそうだし。

 とりあえず、此処の最上階まで行こう。

 ラスボスは最上階にいるものだからな」
と階段を上がりながら言ってきた。

 ……長老いつからラスボスになったんですか。

 そして、長老がラスボスなら、長老に会う前にセーブしないと駄目なんじゃないですかね?

 そんなこと言っているうちに最上階に着き、イチはフロアにひとつしかない扉に手をかけた。

 最上階はワンフロアに一部屋しかないようだった。

「うん?
 開かないぞっ。

 さては、鍵がかかっているな。

 やはり、此処がラスボスの部屋かっ」

「いや、建物が古くて、扉も変形してるから、ひっかかってるだけなんじゃないですかね?」
と見るからにガタついている扉を見ながら乃ノ子が言うと、イチは一瞬、黙って、乃ノ子を見、

「なんかお前の方が冷静みたいでムカつくぞ……」
と言ってきた。

 だが、言われた通り、扉の下の方を蹴ってみていた。

 あっさり、バクッと扉が開く。

「長老っ。
 パスワードを教えろっ」

 長老が此処にいるものと決めつけ、イチは言う。

 まあ、夢の世界だから、強固に思い込んだら、そうなるかも、と乃ノ子も思ったのだが。

 ガランとした部屋の中には、引越しの際、忘れたのだろうか、という感じに大きなデスクがひとつだけあって、その後ろから誰かがくぐもった声で叫んでいた。

 なんだ? と思いながら、イチと行くと、デスクの下に縛られた若い男が丸まっていた。

「……誰だ、こいつは」

「助けていいんですかね?
 助けると襲いかかってくるとか?」

 さるぐつわを噛まされて、声が出ない男を見て二人は呟く。

「じゃ、助けるのやめるか」

「でも、もしかしたら、塔の上のお姫様を助けたら、エンディング、みたいなゲームかもしれませんよ、これ」

「いやこれ、廃墟のビルの上のチンピラだろ。
 これでエンディングを迎えたら、今までの努力がなんか報われんだろうが」
と揉めているうちに目が覚めた。


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