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学校VR ~七不思議~

いや、それは呪いではない……

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「あ、それ、私も参加」

 放課後、紀代たちと話しながらお弁当屋さんの前を通っていると、自動販売機のものではない紙パックのフルーツジュースを飲みながら、彩也子がいきなり手を上げてきた。

 実体だ。

「……なんで霊みたいに此処にいるのよ」
と乃ノ子は言った。

 小洒落た服を着て、薄化粧をしているので、実体のようだ。

「いやいや、今、来たのよ。
 結局、先生とご飯食べに行ったりしてさ。

 なんとなくこの時間までいたから。

 私もそれ、参加したいわ。
 今日はもう実家泊まるから」

「実家遠いんでしょ。
 うち泊まってもいいよ」
と乃ノ子は言ったが、彩也子は、

「いやいや、遠慮するわ」
と手を振ってくる。

「だって、あんたと一緒に寝たりしたら、夜中に妙なものとか現れそうじゃない」

 この間まで、此処に巣食う霊だった奴に言われてしまった……。



 結局、彩也子は乃ノ子の家に来て、一緒に晩ご飯を食べ、慎司と呪われたゲームをやったりしていた。

「まあ、上品なお嬢さんねえ」
と絵美は彩也子を見て言う。

 うん、まあ、ぱっと見は……、と思いながら、乃ノ子は絵美とともにダイニングテーブルから、ゲームをしている二人を眺めていた。



 時計を見て、乃ノ子が、
「そろそろ時間だよ、彩也子」
と言ったが、呪われているゲームをやっている彩也子は、

「待ってーっ。
 何故だかやめられないっ。

 呪いーっ?」
と叫んでいたが。

 いや、呪われてなくても、ゲームってそういうもんだよね……と乃ノ子は思いながら立ち上がった。



 なんとかゲームを中断した彩也子とともに、乃ノ子たちは学校に行った。

「まだ先生いるかな?
 誰もいなかったら、入れないよね。

 最近の校舎、セキュリティしっかりしてるし」
と言ったが、まだ職員室にも玄関にも明かりがついていた。

 そっと忍び込むと、紀代たちが教室の前にいた。

「なんで、中に入らないの?」

 そう乃ノ子は訊いたが、紀代と風香は、
「美しいから」
とよくわからないことを言う。

 ひょいと開いている扉から中を覗くと、イチが窓のところに立ち、外を見ていた。

 月光に照らし出されたイチの白く端正な顔を見て、乃ノ子は、

 ……なるほど、と思う。

 なんとなく、あの赤い甲冑のイチを思い出していた。

 紀代は、
「相変わらず素敵ね、イチさんっ!
 神川なんてかすむわねっ」
と小声で叫んで、背後にやって来ていた神川に、

「おい……」
と言われていた。



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