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学校VR ~七不思議~

呪われたイケメン

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「風香ちゃんー。
 教科書貸してー」
と乃ノ子は隣のクラスに顔を突っ込み、叫んだ。

 二時間目が終わったあと、
「教科書忘れた、教科書貸して」
と紀代に言って、

「……どうやって、あんたに貸すのよ。

 私、同じクラスよ。
 忘れないで。

 隣の風香ちゃん行ってきなさいよ」
と言われて、訪ねてきたのだ。

「あっ、さすらいの乃ノ子さんっ」

 また変な名前が増えている。

 いや、確かに教科書求めてさすらってはいるのだが、と思いながら、教科書を貸してくれと風香に頼もうとした乃ノ子だったが、他のことが気になり、

「あれっ?」
と声を上げた。

「あの掲示物見たことある」

 そう言い、乃ノ子は黒板の左側にあるポスターやクラスのみんなの写真を指差す。

 暗がりの中で、確かに見た……。

 あれはたぶん。

「夢で見た。
 この掲示物」

 えっ? と風香も振り返り見る。

「そりゃきっと、前、このクラス来たとき見たのが記憶に残ってたんじゃないの?」

 背後から、そんな紀代の声がした。

 ちゃんと借りられたか心配して見に来てくれたようだった。

「そうかもしれないけど……。
 なんで、滅多に来ないこの教室の夢なんて見たんだろ」

 あのVRの夢の教室。

 何故、此処である必要があったのか。

 まあ、夢なんて、そんなものかもしれないけど、と思いながら、乃ノ子は、失礼しまーす、と教室に入ってみる。

 急いで宿題をやっているらしい男子生徒の前に立ち、その机を指差し言った。

「夢の中でさ。
 呪われたVRゴーグルがこの机にあったのよね」

 突然、そんなとことを言われて、おのれの机の上を指差された男子生徒は、乃ノ子が指差した場所から逃げようとするように、ひっ、と身を引いていてた。

「……やめたげて」
と紀代が呟き、風香は苦笑いする。



「なに?
 バンコクで呪われたVR?」

 そうイチは訊き返してきた。

 あの夢のVRと実在した教室が気になって、乃ノ子が昼休み、イチにメッセージを送ると、折り返し、電話がかかってきたのだ。

「……なんですか、バンコクで呪われたVRって。
 暗黒の呪われたVRですよ。

 いや、夢の教室に怪しげな感じに出てきただけなんですけどね」

 そう乃ノ子は報告する。

「バンコクの屋台とか、夜景とかいいですよね。
 ものすごいカラフルで。
 日本と全然違う色彩感覚っていうか」
という乃ノ子の話はスルーし、イチは言ってくる。

「しかし掲示物がそのまま夢に出てくるとは興味深い。
 お前、注意散漫だから覚えてなさそうなのに。

 ……ちょっと行ってみるか、今夜」

「え?
 夜、教室にですか?」
と乃ノ子が階段を上がりながら訊き返したとき、

「はいっ。
 私も参加っ」
といきなり背後で声がした。

 乃ノ子はしゃべりながら人気のない屋上方面に向かい歩いていたのだが。

 紀代たちがつけてきていたようだった。

「私も」
と遠慮がちにだが、風香も小さく手を上げる。

 その背後から更に、
「俺も」
と手を上げた長身の男がいた。

 ぱっと見、体育会系で、濃いめの整った顔をしている。

「……誰?」
とスマホを耳に当てたまま、乃ノ子は訊き返して、

「今、いきなりお前に机を呪われた男だろうがよっ」
と怒鳴り返された。

神川かみかわ、参加すんの?
 やったーっ」
と言う紀代に、

「参加はいいんだけど。
 なんで、やったーっなの?」
と乃ノ子が訊くと、

「だって、神川、イケメンじゃん」
と本人を前に平然と紀代は言う。

 話が聞こえていたらしいイチは、
「よし、その呪われたイケメンも連れてこい」
と言う。

 呪われたイケメンと言うと、私はイチさんのイメージなんですけどね、と思いながら、乃ノ子は、
「わかりました」
と言って電話を切った。


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