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学校VR ~七不思議~
今かっ!
しおりを挟むそんなことをして遊んでいたせいか。
その夜、乃ノ子は夢に見た。
誰もいない深夜の教室のど真ん中。
机の上に、白いVRゴーグルがぽつんと置いてある夢だ。
周りの掲示物がうっすら見えたところで目が覚めた。
「VR?
やったことないけど?」
翌朝、自動販売機のところであった彩也子は、しゃがんで、おむすびを食べながら、そう言ってきた。
昨夜の夢の話をするついでに、VRの話も振ってみたのだ。
「コンビニのおむすびをお弁当屋さんの横で食べるとか喧嘩売ってるみたいね」
乃ノ子は苦笑いして言ったが、彩也子は、
「だって、まだお弁当屋さん開いてないんだもん。
仕方ないじゃん」
と言う。
「っていうか、開いてたって、朝からガッツリ弁当なんて食べられないからね~」
そう言いながらも、おむすびを二個、ぺろっと食べていた。
立ち上がった彩也子は、自動販売機でお茶を買いながら、
「乃ノ子。
なんか飲む?
買ってあげようか。
おねえさんだから」
と笑って言ってくる。
「いやいい。
学校だから……」
登校中飲んでたら怒られる、と言いかけた乃ノ子は、ようやくその違和感に気づいた。
「ああっ。
本体っ!?」
と彩也子を指差し叫ぶ。
「ええっ? 今っ?」
と彩也子も叫び返してきた。
「やだっ。
なんで気づいてないのっ?
制服着てないでしょうがっ。
飲み食いしてるしっ。
今日、先生に用があったから来たのよ。
ついでに此処に寄ってみただけ」
彩也子は大学の空き時間に、フルート教室の先生に会いに来たようだった。
「先生訪ねるのには、まだ早いしさー」
と言う彩也子は、そういえば、クラシカルなベージュのブラウスに細身の黒いパンツを穿いていた。
「いやあ、大学生でも高校生でも、あんまり中身変わんないから気づかなかったー」
ははは、と笑って言う乃ノ子を睨んだあとで、彩也子は周囲を見回し、ふっと溜息をついて言う。
「……久しぶりに此処に来たはずなのに、全然久しぶりな感じがしないわ。
きっと、魂だけでも、此処に来ているからね」
まだなにか引っ掛かりでもあるのかしら、と呟いたあとで、
「まあ……本体が帰れただけでも儲けものかな」
と彩也子は言った。
彼女には、おそらく、この場所になにか強いこだわりがあるのだろう。
本人にもわからないその原因をクリアしない限り、此処からは離れられないに違いない。
「でも……、居なくなっちゃったら、寂しいかな」
乃ノ子がぼそりと呟くと、
「なになにーっ?
えっ?
私、いないと寂しいって?
じゃあ、うちの大学、来るー?」
と後ろから首を絞めるような体勢でのしかかって来ながら、彩也子が言ってくる。
「彩也子の大学って、何処だっけ?」
「サンタマリア音大」
さようなら、と乃ノ子は彩也子の手を払った。
笛のテストに全然合格しないで放課後残されたり、ピアノのレッスンカバンを家で一度も開けたことがない乃ノ子が行けるとこではなかった。
そのとき、
「あれー?
彩也子さん、本体じゃないですかー?」
と紀代の声がした。
歩道橋側の横断歩道を渡ってきながら、紀代は言ってくる。
「いいなー。
大学生って、やっぱりお洒落ですねー」
「ほら見なさいよ。
すぐに気づくじゃないのよ。
あんたもあのくらいのこと言いなさいよ」
そう勝ち誇るように言い、まくし立ててくる彩也子から逃げるように、
「あっ、遅刻だっ。
行くよ、紀代っ」
とまだ遅刻でもないのに、乃ノ子は紀代の手を引き駆け出した。
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