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学校VR ~七不思議~

VRゴーグルに映るモノ

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「そっ、そこっ、扉っ。
 開いてる扉からっ」

 紀代は後ろの扉を指差すが、そっちの扉は閉まっている。

 なにを見ているのか。

 わっ、わっ、と叫びながら、すぐ側にいた乃ノ子の腕をつかんできた。

「白い女がっ。
 扉の向こうからっ。

 なにも見えないなんて、神川の嘘つきっ」
と紀代は神川を罵倒しはじめる。

「俺は見えなかったけど。
 ホラーアプリでも入ってるんじゃね?」

 紀代は、かなり慌てた様子で、外す手ももどかしく、ゴーグルを外し、神川の机に放り投げていた。

 イチがゴーグルを開けてみる。

 中には、あるべきスマホがなかった。

「……PCとかゲーム機用なんじゃない?」
と彩也子は言ったが。

 いやいやいやっ、と紀代が首を振る。

「これ、何処にもつながってないし、本体も見当たらないですよっ」

「まあ、形状的にもスマホ用のようだしな」

 そう言ったあとで、イチは後ろの扉を指差した。

「それに、本当にそこにいるから。
 白い女の姿をした霊」

 ひっ、とみんながイチの腕にしがみつく。

 神川まで。

「これは、もしかして、霊が見えるようになるVRゴーグルなのかもしれないな」

 ゴーグルを上に下にと回転させながら眺めてイチが言う。

「彩也子か風香ちゃんも被ってみる?」
と乃ノ子は言ったが、風香は苦笑いして後ずさりし、彩也子は、

「やだー。
 霊が見えるなんて怖いじゃない~」
と言ってきた。

 いや……お前が言うな、と思いながら、乃ノ子はVRゴーグルを手にとる。

 生きてるのか死んでるのかわからないイチ。

 気を抜くと、生き霊として彷徨さまよってしまう彩也子にすでに囲まれているのに、

 白い女の霊一体に怯えるのも可笑おかしなことのような気がしたからだ。

 乃ノ子はそのままVRゴーグルを被ろうとしたが、
「あ」
と言って、神川が止めかける。

 だが、その瞬間には、もう被ってしまっていた。

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