都市伝説探偵 イチ ~言霊町あやかし通り~

菱沼あゆ

文字の大きさ
74 / 94
学校VR ~七不思議~

VRで学校探検中

しおりを挟む
 
「もしかして、私たちに見えてないだけで、この学園、七不思議があるのかもっ」

 そう嬉しそうに言い、紀代は乃ノ子の真後ろについて歩いている。

 自分にはどうせ見えないと安心しきっているようだ、とイチは思った。

「次はやっぱ、理科室でしょうっ」

 紀代は今にも乃ノ子の首根っこをつかみ、引きずっていきそうだった。

 その勢いに、此処に七不思議を探しに来たんだったかなと、うっかり思ってしまいそうになる。

 そんなことを考えながら、イチは最後尾を歩いていたが。

 何故か神川が自分の真横にいた。

 チラとこちらを見る。

 だが、自分が視線を向けると、パッとそらしてしまった。

 そのとき、乃ノ子が前で叫ぶのが聞こえてきた。

「いや、ないからっ、理科室なんてっ。
 生物室とか化学室ならあるけどっ」

 ベートーベンの肖像画と一緒で、ないからっ、と叫びながらも連れていかれている。

「結局、学校の七不思議って、小学校仕様なのよね~」
と言う彩也子の声を聞きながら、

「神川」
とイチは呼びかけた。

「お前、何故、今日、此処に来た?」

「……福原が俺の机を呪ったからって言いませんでしたっけ?」

 聞こえているのか、いや、呪ってない……という言い出しそうな口許で、先頭を行く乃ノ子が、声を頼りに、こちらを振り返っているのが見えた。

 小さな顔のほとんどを白いVRゴーグルで覆われているが、発する気配でなにを考えているのかわかる。

 今生の乃ノ子は、あまり隠し事をできない性格のようだった。

「神川、お前に霊感はない。
 だから、気になってたんだ。

 なんで、お前の机の上にあのVRゴーグルがあったのか――」



 イチさんが神川を問い詰めているようだ、と思いながら、乃ノ子は紀代に追い立てられ、先頭を歩いていた。

 また月明かりで校舎の中が見えるようになったようだが。

 紀代は、七不思議を探したいというわりには、乃ノ子より前に出ようとはしない。

 乃ノ子がVRゴーグルをつけているからというわけではなく。

 単に先頭を進むのが怖いようだった。

 因縁と怨念で襲いかかってくるような霊は今のところいないんだが……と思いながら、乃ノ子は後ろのイチたちの話に耳をそば立てる。

「……実はVRゴーグルを拾ったんです、道で。
 警察に届けようかと思ったんだけど。

 ちょっとその場で使ってみるくらいいいかって。

 VRゴーグル、買ってみたかったんだけど。
 俺の友だちもまだみんな持ってなかったから、どんな感じかお試しに」

 お試しなら、100均に500円であるんだが……と思いながら、乃ノ子が聞いていると、

「そのVRゴーグルを拾った場所でつけたあとで。
 あ、スマホ入れないとなんにも見えないって思ったんですけど。

 勝手に映像が見えて」
と神川は言う。

「目の前に夕暮れどきの登下校路が広がってました。
 それでそれを拾ったお弁当屋さんの横の細い道を……」

「あ、霊」
という彩也子の声が聞こえてきた。

 ぎゃーっ、と紀代は悲鳴を上げて駆け出す。

 VRゴーグルをつけて無防備に立っていた乃ノ子は紀代に肩にぶつかられ、吹き飛ばされてしまった。

 だが、誰かの手が乃ノ子を後ろから支える。

 イチのようだ。

「なにやってんだ。
 ちゃんと前見て歩け」
と耳許で言われる。

 ……と言われましても、私の視界はVR。

 そう思いながらも、助けてもらったのは確かなので、
「ありがとうございます」
とイチに礼を言ったが、イチはイチで、ん? と言っている。

 駄目だ、気になるっ、と乃ノ子は、ついにVRゴーグルを外した。

 すると、乃ノ子を支えて無理な体勢をとったらしいイチを何故か神川が支えている。

「……なにやってんの? 神川」
と乃ノ子が問うと、神川はイチを支えたまま、

「……わからない」
と呟いた。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

楠ノ木雫
恋愛
 蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……

処理中です...