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学校VR ~七不思議~
七不思議がいる!
しおりを挟むVRの世界にいる方がよく霊が見えているようだな、と思いながら、イチは廊下を歩いていく乃ノ子を眺めていた。
普段の乃ノ子は霊は見えたり見えなかったり、くらいのようだが。
今は完璧に見えている。
廊下を歩きながら、突然、横にずれ、なにかを避けたりして、ついていっているみんなをビビらせていた。
紀代が、
「乃ノ子~、何処と何処になにがいたとか、あとで教えないでよ」
と言っているが、乃ノ子の動きだけで、大体わかりそうだなと思う。
階段を上がっている途中で月が陰ったらしく、校舎の中が暗くなってきた。
「いてっ」
「あっ、ごめん、神川っ」
と前から揉める声が聞こえてくる。
みんなの視界は悪くなったようだが、VRを見て進んでいる乃ノ子は、スタスタ歩いていた。
向こうの世界は明るいようだ。
妙なものだな、とイチは思う。
乃ノ子はそこにいるのに、今、一緒に此処にいる俺たちとは別のものを見て、違う世界に生きているように感じられる。
そのとき、ふと、初代の……
いや、その乃ノ子が最初だったかはわからないのだが。
自分の中に強烈な記憶を残している、平安時代の乃ノ子が頭の中に蘇った。
巫女装束にも似た白と赤の十二単を纏い、凛とした瞳をしていた。
……ずいぶん緩くなったもんだ、と制服姿の乃ノ子の背を見て思ったとき、誰かが闇の中からこちらを窺っているのに気がついた。
神川だ。
なにかを気にしているようなその様子に、ちょっと思い当たることがあった。
「お前、さっきなにを見た?」
そうイチは神川に訊いた。
「え……」
「あのVRゴーグルをつけて俺を見たとき、お前はビクついた。
……なにを見た?」
そう問うたが答えない。
更に追求しようとしたとき、乃ノ子が、あーっと声を上げた。
「七不思議がっ!」
乃ノ子は音楽室を覗いているようだった。
「七不思議がいるっ!
うちの学校、七不思議ないと思ってたのにっ。
此処に、七不思議がっ」
「なによ。
ベートーベンの目でも動いたの?」
腕組みして、あまり興味なさそうに言う彩也子の横で、風香が苦笑いして言う。
「うち、そもそも音楽室に肖像画ないです」
「そういえば、うちもなかったわ。
あの七不思議って、誰が考えたのかしらね」
と彩也子が言ったとき、乃ノ子が、
いや、それじゃなくてっ、と手を振った。
「『夜、誰もいないのに音楽室からピアノの音がっ』がそこにいるっ!」
乃ノ子は窓際のピアノを指差し言う。
「いや、聞こえないけど、ピアノの音」
そう彩也子が言い、紀代が、
「『いない』がいるの?
どっちなの」
と眉をひそめていた。
「だから、いないがいるのっ。
そこにピアノを弾く白い影が……」
と乃ノ子はピアノではなく、霊の方を指差しかけてやめる。
人を指差してはいけません、と親に言われているからだろうか。
それは霊だが。
まあ、人には違いないか、と思ったとき、乃ノ子が、
「夜遅いと迷惑だから、音出さないで弾いてるのかも」
と言い出した。
「その七不思議、存在してる意味ある……?」
誰にもわかんないじゃん、と彩也子は言うが。
いやいや、お前らに見せるために存在してるわけじゃないだろうが、七不思議。
っていうか、突然、叫び出した乃ノ子にビビって、霊が弾くのをやめてるが……と思いながら、イチは先を促した。
「ほら、校舎回ってみるのなら急げ。
騒ぎを聞きつけて、教員が来るかもしれないぞ」
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