都市伝説探偵 イチ ~言霊町あやかし通り~

菱沼あゆ

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学校VR ~七不思議~

お弁当屋さんの裏

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 なんだかんだ誤魔化しながら書類を作ってもらい、呪いのVRゴーグルを置いて帰った。

 交番が呪われないだろうか……と思いながら。

「おまわりさん、被ってみたりしないですかね?」

「するかもな」

「交番の中、いろいろ霊も立ち寄ってそうですよね」

「そのようだな」
と言って、イチは笑っている。

 可哀想に、おまわりさんたち、余計なことを知ってしまいそうだな、と思いながら、乃ノ子は交番の赤い光を振り返る。

 イチに家まで歩いて送ってもらいながら、乃ノ子は訊いた。

「イチさん、神川には俺と関わらない人生もあると言ってましたけど。
 私も……」

 最後まで言い終わらないうちに、イチは言ってきた。

「お前に俺と関わらない人生はないぞ」

 いや、逆か、と自分には、なにもいないように見える夜道の先を見ながら、イチは呟く。

「俺にお前と関わらない人生はない」

 その横顔を見ながら、ちょっとホッとしている自分がいた。

 ……が、イチはいきなり愚痴り始める。

「……なんでこんなことになったんだろうな。
 もう千年以上だぞ。

 俺はいつまでお前に呪われる?」

 いや、呪った覚え、ないんですけとね……と思いながら、乃ノ子はイチとふたり、住宅街の道を歩いて帰った。



「今日はありがとうございました」
と乃ノ子は風呂上がり、イチにメッセージを入れた。

「いや、新しい都市伝説が見つかりそうでいいんだが。
 しかし、VRゴーグルなんて、一般に出回ったの最近だろ。

 新商品出ると、すぐ呪われるんだな」
とイチが返してきたので、笑ってしまった。

 確かに。
 呪いは新商品を見逃さず、ゲーム機、ガラケー、スマホと出た端から、すかさず狙ってくる。

 いや、単に人間が使う物だからか。

 呪うのも呪われるのも人間だから――。



 可愛いキツネのゲームをやって眠ると、また夜の教室に乃ノ子はいた。

 神川の机の上に、まだあの白いVRゴーグルはあった。

「……神川を呪ってるの?」

 いや、と乃ノ子は笑った。

「楽しかったのかな?
 七不思議を調べる探検が」

 また行こう、と言って、乃ノ子は、つるんとしたゴーグルに、そっと触れてみる。




「なにがまた行こうよっ。
 交番行ってみなさいよ。

 きっとあのゴーグルまた消えてるわよ。

 そんで勝手に学校とかに戻ってるわよっ」

 そう彩也子が朝の自動販売機の前で文句を言ってくる。

「彩也子、まだいたの?」
と実体の彩也子に言うと、彩也子は落ち着きなくウロウロその辺を歩きながら、

「だって気になるじゃないの。
 なんなのよ、神川が見たお弁当屋さんの裏の白骨死体ってっ」
と言ってくる。

「大丈夫だよ、彩也子生きてるじゃん」
と言ったが、彩也子は沈黙する。

 ああ、と乃ノ子は言った。

「もしかして、自分がお弁当屋さんの裏で誰か殺して。
 それで、ずっと此処が気になってて、生き霊になって出てきてるとか思ってる?」

「あんた、ちょっとは包み隠してしゃべるってことを覚えなさいよねーっ」

「大丈夫だよ。
 彩也子はそんなことしないよ」

 そう言ったあとで、乃ノ子は上を向いて、少し考え、

「大丈夫だよ。
 やってても友だちだよ」
と言いかえる。

「あんた、今、やってたときのこと想定したわねーっ」
と慰めたのに怒られた。

 いやいや、大丈夫大丈夫、となにも大丈夫でない感じに言いながら、乃ノ子は、

 おっと、忘れてた、とスマホに打ち込む。

 言霊町の都市伝説がまとめてあるアプリメモの一番下に入れた。

『夜の教室に、夜毎よごと、学校の七不思議を求めて彷徨さまようVRゴーグルが現れる』

「……いや、あのVRゴーグル、ただそこにあっただけじゃん。
 彷徨うVRゴーグルにしたの、あんたでしょうが」

 覗き込んで言う彩也子に、スマホから顔を上げ、乃ノ子は言った。

「よし、じゃあ、行こうか、彩也子」

「ど、何処によ」

 彩也子は身構え、訊いてくる。

「お弁当屋さんの裏に決まってるじゃん」

 いやーっ、と彩也子は踏ん張ったが、乃ノ子は腕をつかんで連れていく。

 生き霊なら逃げられてしまうかもしれないが、本体なので大丈夫だ。

 二人は自動販売機の横を通り、裏の側溝を覗く。

 だが、白い側溝の蓋の上にはなにもない。

「ほら、彩也子。
 なにもないないじゃん」

「あ……当たり前じゃない」
 
 ホッとしたように彩也子は言っていた。

「じゃあ、安心して帰りなよ。
 大学、授業あるんじゃないの?」
と言うと、

「まあね。
 昼からだけど。

 ……まあ、また遊びに来るわ」

 そう言い、手を上げて行ってしまった。

 バス停に向かうその後ろ姿を見ながら、乃ノ子は思う。

 確かになにもなかったけど……。

「夕方、見てみないとわからないけどね」

 そうぼそりと呟いた。

 神川がVRゴーグルで見たのも夕方だったし。

 彩也子のあの言葉。

『夕方5時ごろ、救急車の赤い光を学校近くの交差点で見ると、知らない間に悲鳴を上げちゃうんだって』

 そろそろ確かめる頃なのかな、と思いながら、乃ノ子はひとり、お弁当屋と自動販売機の隙間から行けるお弁当屋の裏を見た。




                                       「学校VR ~七不思議~」完


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