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考えすぎて捨てられませんっ! ~グリーンネックレス~
これは運命なのだろうか……?
しおりを挟む黛は、そんなにイケメンというわけではないが、すっきりと清潔感があって、笑顔がいいので、イケメンに見える。
「お嬢さん方、楽しそうなのはいいけど、少し声抑えてー。
隣、会議の準備してるのに、筒抜けだから」
と言われ、あっ、すみませんっ、と敦子が真っ先に謝る。
その感じに、久田さん、黛さんがちょっと気に入ってるのかな、と葉名は思った。
……なのに、違うイケメンも見に行きたいんですね、とは思ったが、まあ、涼子が言うように、単に愛でて癒されたいのかもしれない。
そう思ったとき、黛の後ろに准が見えた。
准も隣の大会議室に行くようだ。
それを見た涼子がお弁当も途中なのに、
「やばい。
もう戻らなくちゃ」
と慌てて片付け、立ち上がる。
じゃあ、失礼しますねっと言って、外に出ると、准たちに頭を下げ、走り去っていった。
それを見ながら、美沙が、
「何処に行きたくないって、秘書には行きたくないわねー」
と呟く。
すると、敦子が、
「えー、でも、社長とお近づきになれるチャンスですよー」
と言い出した。
いや、久田さん。
黛さんと、花屋のイケメンは……?
「久田さん、イケメンなら、誰でもいいんですか?」
と思わず、言って、
「……あんた、ちょっと表に出なさいよ」
と敦子に凄まれ、美沙に笑われた。
いえ、別に久田さんが社長に気がある風だったから、うっかり言ってしまったとかではないんですよ。
ええ、ほんとうに……。
そう思いながら、葉名は残りのサンドイッチを急いで食べた。
花屋のイケメンがどうした。
早く会議室に来すぎたせいで、準備が整うのを廊下で待っていた准は、葉名たちの話を聞いていた。
こいつら、声デカイな。
社外の人も交えての会議でなくてよかった、と思う。
こんなしょうもない話は、よその会社の人間には聞かせられないからだ。
それにしても、葉名め。
そいつら連れて、誠二のところに行くつもりか?
そう思いながら、准は小会議室の扉を睨む。
葉名め。
そいつら引き連れて、誠二のところに行くつもりか?
そう思いながら、准が小会議室の扉を睨んでいると、黛が、
「社長、準備整いましたので、どうぞ」
と言ってくる。
自分が早く来すぎただけだから急がなくていいと言ったのだが。
働き者の社員たちは、急ぐなというと、より急ぐ。
「すまないな、ありがとう。
ところで、黛、秘書に来るつもりはないか?」
今、ひとり欠けて大変だし、浅田室長もそろそろ定年なので、次の人事異動のときには、誰か秘書にと思っていたところだった。
少し早めに異動させても、と思ったのだが、黛は笑顔のまま、
「……いやあ、私など。
私は、自分の出来る分野で、社長をお支えしたいと思っています」
とやんわり断ってくる。
みんな嫌がるな、秘書。
かと言って、やる気満々な奴は、野心満々みたいな奴が多くて、なんか怖いし。
とりあえず、誰か三浦のサポートが必要だが。
そう思ったとき、一瞬、葉名が頭に浮かんだ。
一見、落ち着いて見えるし、品もある。
見た目は秘書にピッタリだが……。
あいつ、仕事は出来るのだろうかな?
入社して一ヶ月。
仕事ぶりを間近に見たことはあまりないが、普段の感じがあれだからな、と思う。
今にもお茶とかひっくり返しそうだ。
そういえば、葉名は最終面接のとき、延々と猫について語っていた変わり種だった。
話は不思議な展開を見せ、上手いところに着地したが。
もうちょっと大手の会社に決まりかけてたのを蹴って、うちに来たと聞いた気がするが。
なんでうちにしたんだろうな。
……運命かな。
真面目に考えているのに、葉名が絡むと、思考が横滑りする。
らしくもなく、そうだな、運命だろう、と結論づけた。
横から葉名たちの抑えた笑い声が響く。
ランチタイムに小会議室は解放しているのだが。
……壁を厚くせねばな、と思いながら、准は会議室に入る。
黛がふたたび、ドアを叩き、
「ごめん、もうちょっと静かにしてー」
と葉名たちに言っていた。
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